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インディ500初のハイブリッドシステムレースは攻める側も守る側も互角の状態

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インディ500初のハイブリッドシステムレースは攻める側も守る側も互角の状態

 アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)の初制覇で幕を閉じた第109回インディアナポリス500マイルレース。このレースは、ハイブリッドパワーユニットを使った初めてのインディ500だった。ハイブリッドシステムは予定されていた2024年シーズンの開幕に間に合わず、5月末のインディ500より後となる7月のミド・オハイオ戦から導入されたからだ。

 ハイブリッドシステムの登場でインディカーは800馬力以上のパワーを持つに至った。

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 ストリート及びロードコースでは、モーターとスーパーキャパシターによる新パワーだけでなく、以前からあるターボのブースト圧アップによるプッシュ・トゥ・パスも使える。しかも、その両方を同時に使用することも可能とされているから、一気に120馬力ほど上乗せ、ということになる。

 しかし、オーバルコースではプッシュ・トゥ・パスの使用は禁止されており、ハイブリッドパワーのみのプラス。そのシステム自体には、もっと大きなパワーを発生させる能力があるが、とりあえず2024年の導入、そしてフルシーズンで使うのが初となる2025年は70馬力程度に設定されている。

 近頃のインディカー・シリーズにはショートオーバルでのレースは多いが、スーパースピードウェイはインディ500だけ。今回が高速オーバルでのハイブリッド初使用となったわけだが、予選のポールポジションスピードはノンハイブリッドの昨シーズンを下回った。

 システム搭載による重量増、それへのセッティングでの対応、より負担がかかる状況下でのタイヤのパフォーマンス低下なども影響してのことだ。

 レースでのハイブリッドパワーは、エントラントによってどこまで使用方法が違っていたのか、あるいは同じだったのか、オーバーテイクで効果を発揮していたのか、情報はほとんど出ていない。

 超・超高速を保ったまま争われるインディ500のようなレースでは、慣性を保って走り続けることの重要性が、70馬力のプラスよりも大きい、ということでもあったようだ。

「まったくないのとは大違い」とドライバーたちは言っていたが、相手を一気に抜き去る、ということには繋がっていなかったということだ。

 予選でほぼ全チームが使っていたハイブリッドパワー利用法は“トゥリクル”と呼ばれるもので、1ラップ毎に投入が許されているパワーを少しずつ長い時間に渡って投下する。その一方で、ドライバーがボタンを押している間だけ一気に大パワーを放出する方法も選べた。

 レースでもその状況は同じで、ハイブリッドパワーはトゥリクルで使うか、任意のタイミングで大パワーとして使うか、最大パワーより少し抑えたものを最大パワー投下時よりも少し長く使うかが選択できた。

 これらはレース中に変更、調整することも許されていた。使用法はドライバーがカスタムメイド可能ということ。もちろんチームが無線で使用法を指示することもできた。

 佐藤琢磨はレースを前に、「メインストレートの立ち上がりからスタートフィニッシュラインぐらいまでの間でハイブリッドパワーを使うかも」と話していた。


■ハイブリッド使用時の見せ方にも課題

 トゥリクル的な使い方をメインに、勝負どころになったらパワーを貯めて“ここぞ!”というタイミングで使うパターンにスイッチする。これが大半のドライバーたちの使用法になっていたと見られる。

 インディカーを今年から放送することになったアメリカのテレビ局=フォックスは、各ドライバーのハイブリッド使用を我々視聴者に上手に見せることができていなかった。

 メディアセンターやピットにいても、インディカーのモニターにハイブリッド情報は一切出ない。頼りはNTTが提供するインディカー公式アプリで、それでならリアルタイムで全エントラントのハイブリッドパワー使用状況を見ることができる。

 しかし、実際にはスマートフォンの小さな画面上のごくごく小さな表示なので、詳細を把握するのは至難の技だ。テレビ観戦の場合は、放送が数秒遅れで画像に流れてくるので、アプリを持っていてもさらに状況把握は難しい。

 フォックスは、ロールバー上のカメラが映し出すオンボードカメラの映像で、HALO部に乾電池の形をしたハイブリッドパワーの表示を出していた。優勝争いをしているふたりのドライバーのオンボード映像を二画面で見せ続けてくれたら、ハイブリッドをどのように使って戦っているのかが見えてエキサイティングだったと思う。

 まだ未知数のツールなので、ライバル勢に使用テクニックを知られたくない、とエントラントたちが考え、秘密にすることをシリーズが許しているのかもしれない。しかし、大金を投入して自ら開発した最新テクノロジーなのだから、ファンにもメディアにもその使用のされ方を知らせないなんてナンセンスだ。


■アレックス・パロウ「ハイブリッドパワーを活かして戦うことができた」

 インディ500ウイナーとなったアレックス・パロウは、少しだけハイブリッドパワー使用法を教えてくれた。

「ハイブリッドパワーは攻撃と防御の両方に使える。レースではまさにそれが繰り返し行われていた。僕の場合、ハイブリッドパワーは最後のバトルの中で、(マーカス・)エリクソンからの攻撃を退ける方で有効となっていた」

「確かに、マーカスをパスした時に僕はハイブリッドパワーを使っていたよ。でも、彼もそのタイミングではハイブリッドパワーのボタンを押していたと思う。結局は、攻める側も守る側も互角の状態」

「ただ、トップに立ってからは、コーナー出口までハイブリッドパワーを使わないことがポイントとなっていた。そうすれば相手にパスをさせずに済むからね。最終ラップにはかなり接近されていた。特にターン3進入で。ハイブリッドパワーを活かして戦うことができて良かった」

 インディ500初のハイブリッドシステムを使用したレースは、ハイブリッドパワーを最高のタイミングで、最も効果的に使ったドライバーが勝ったという話ではなかったようだ。

(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)

[オートスポーツweb 2025年05月29日]

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