アストンマーチンのフェルナンド・アロンソは、F1モナコGPの決勝で2位に入り、今季最高となる結果を手にした。しかしレース終盤、雨が降り始めた際にアロンソは他車とは異なり、インターミディエイトではなくドライのミディアムタイヤを装着……結果的にはこれは間違った判断であり、再びピットインすることを強いられ、優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)との差が開き、勝利の可能性が遠のくことになった。
この判断についてアストンマーチンのマイク・クラック代表は、「この判断によって勝利が失われたわけではない」と語った。
■アロンソ、攻撃的なタイヤ戦略に不満なし「オール・オア・ナッシングでいこうと決めていた」
アロンソはフロントロウ2番手からモナコGPの決勝レースをスタート。序盤は、フェルスタッペンと一騎打ちのレースを繰り広げた。しかし、アロンソに有利な点もあった。アロンソはスタートでハードタイヤを履いたのに対し、フェルスタッペンはミディアム……レース後半に雨が降るとの予報もあり、そのタイミング次第では、アロンソが首位を奪う可能性もあるように見えた。
そしてレース終盤、雨が降り始めた絶妙なタイミングでアロンソがピットイン。既にフェルスタッペンはピットに入らず走行を続けたため、アロンソが逆転するチャンスがあるようにも見えた。
しかしここでアロンソが履いたのは、ドライ用のミディアムタイヤ。アロンソがコースに復帰した後、雨脚が強まったため、アロンソは再びピットインし、インターミディエイトタイヤを履き直すことを強いられた。一方でフェルスタッペンは、アロンソの最初のピットストップの1周後にピットに入り、インターミディエイトタイヤを装着。アロンソとの差を広げることになった。
雨が降る中、ドライからドライへのタイヤ交換によって勝利の可能性を失ったのではないか? そう尋ねられたアストンマーチンのクラック代表は「そうは思わない」と語った。
「勝利のチャンスが失われたとは思わない。もし我々がインターミディエイトタイヤを装着したら、マックスも同じようにインターミディエイトを履いただろう。彼はギャップを築いていた。だから、結局はあまり変わらなかったと思うよ」
当時は混乱した状況だったため、アロンソは先にインターミディエイトを履くことで、フェルスタッペンにプレッシャーをかけることもできたかもしれない。しかしクラック代表は「貪欲になりすぎてはいけない」と自制する。
「そういう状況になることもある。特に今回のようなコンディションだとね。自分たちにそんなことは起きてほしくはないモノだがね。マックスのようなワールドクラスのドライバーと対峙している時、そういうことを期待すべきじゃない」
「でも結局のところ、今回のような決断は、非常に短い時間の中で下される。そしておそらく、全チームが同じ情報を持っているわけじゃない。しかもドライバーがコース上のどこにいるか、ガレージがどこにあるかによっても違う」
「基本的に、あまり貪欲になるべきじゃない。過去を振り返り、我々の目標が何だったのかを確認する必要がある。我々は、これまでよりも良い仕事をするために、ここにやってきた。それは、なんとかこなすことができたと思う。レッドブルは、我々にとって少し速すぎた」
■今後に向け、検証を約束
とはいえクラック代表は、実際に何が起きたのか、しっかり検証しておく必要があると語る。
「(判断ミスだったかどうかを確認するためには)正直に言って、もっと多くの情報が必要だ。まだレース直後だからね。でも全てを見返して、何か違うことをすべきだったか、確認してみようと思う」
そうクラック代表は言う。
「繰り返しになるが、非常に短い時間で決定を下さなければいけない。そしてそれを決めたら、受け入れて実行しなければならない。そうしなければ、マシンにウエットタイヤ2本とスリックタイヤ2本を取り付けてしまうということに繋がりかねない」
「一旦決断を下して指示をしたら、それを実行する必要がある。その時点で指示を変えたら、完全に間違ったことを行なうだろう。ただ今回のことを調べ、そこから学び、次回はより良い結果を出せるように努める」
「フェルナンドも、チームに正しい情報をくれた。彼は雨は強いけど一部だけであり、コースの他の部分では雨は降っていないと言った。彼は、ル・マンで難しいコンディションを走った経験もある。彼は常に、自分がやっていることをコントロールしていた」
「ただ、レースは他のチームとの戦いであるため、我々は違うことをしなければいけないと思った。だからスリックタイヤで走り切れると思ったが、最終的にはそれが不可能なのは間違いなかった」
そしてクラック代表は、アストンマーチンとしては雨が強く降ることはないと考えていたことを明かした。
「当時は本当にたくさんのことが起きていた。当時の無線を、全て聞き返す必要がある」
クラック代表は当時のことをそう説明する。
「ドライバーとチームの間では、かなりしっかりとした意思疎通ができていた。ドライバーが使うタイヤを指示することもあるが、今回の場合はそれでスリックタイヤを使うことにした。フェルナンドはその決定に満足していた。そしてその後、インターに履き替えたことにも満足していた」
「混乱やコミュニケーションの齟齬があったとは思っていない。足りなかったのは、天候に関する情報だったと思う。我々はそれが足りなかった。レース中長い間、雨が降ることはないだろうと思っていたんだ。しかし、実際に雨の激しさを見て、我々は驚いたんだ」
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