「お待たせしすぎた・・・」そんな声すら聞こえてきそうなのが、日産エルグランドの16年ぶりのフルモデルチェンジである。2025年のジャパンモビリティショーで公開されて以来、心待ちにしていた人も多いだろう。新型が掲げるコンセプトは「遠出を楽しめるプレミアムグランドツーリングミニバン」。その言葉どおり、今回の試乗で強く印象に残ったのは、「ラグジュアリー」と「ロングツーリング性能」そしてドライバーズカーとしてのポテンシャルが高次元で両立されていたことだった。
初代は1997年登場。2026年夏に4代目がついに発売
初代エルグランドが登場したのは1997年。当時としては異例とも言える高級ミニバンとしてのパッケージが大ヒットを記録し、一時代を築いた存在である。当時トヨタにもグランビアというミニバンが用意されていたが、販売では苦戦。1999年の改良ではエルグランドを意識してか押し出しの強いフロントマスクへ変更。その兄弟車としてグランドハイエースまで登場して対抗した。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
この戦いはその後も続き、2002年5月に2代目エルグランドが登場すると、トヨタはエスティマをベースとしたFFのLサイズミニバン、アルファードを投入することになる。対するエルグランドは2010年の3代目でFFベースとなり、改良重ねて現在まで16年にわたり生産されてきたが、その間にトヨタアルファードは2代目、3代目とモデルチェンジごとに商品力を高め、現在ではアルファード/ヴェルファイアが高級ミニバン市場の主役となったことは周知のとおりだ。
そんな中で満を持して登場した新型エルグランドに対しては、日産としても相当な力の入れてきている。日本初採用となる第3世代「e−POWER」をはじめ、V37型スカイラインから熟成を重ねてきた「インテリジェントダイナミックサスペンション」、エクストレイルやセレナでもお馴染みの電動四輪制御技術「e-4ORCE」など、最新技術が惜しみなく投入されている。
実際にクローズドコースでハンドルを握ると、その走りの完成度の高さに驚かされた。
試乗コースはアップダウンやタイトコーナーが連続する、比較的走りの違いが分かりやすいレイアウト。しかし、最近試乗した日産車の中でも最大級と言えるボディサイズでありながら、ノーズが驚くほど自然に向きを変えていく。四輪による姿勢制御が巧みで、不安感がまったくない。狙ったラインをなぞるように走る感覚が、とにかく気持ちいいのだ。
パワーユニットの第3世代e−POWERも強力だ。詳細スペックはまだ明かされていないが、前後モーターの最大トルクは500Nm以上にもなるといい、事実アクセルペダルを強く踏み込んだ際の瞬発力は、決して軽くないこの大柄なボディを意図も容易く加速させる。
それと同時に、直線で100km/hまで一気に加速したときのなめらかさと静粛性が印象的だった。吸音材や遮音材を効果的に配置した高遮音ボディに加え、風切り音も抑える遮音ガラスを採用するなど徹底した対策が施されているというが、その効果は絶大。さらにエンジン音とロードノイズを打ち消す「新世代アクティブノイズコントロール」も相まって、高速巡航時の静けさはライバル勢の中でもトップレベルと言っていい。
この足まわりはライバルに対して強力な武器になる
なかでも特筆すべきは、やはり前述した電子制御ショックアブソーバー「インテリジェントダイナミックサスペンション」である。開発責任者自ら「とにかく乗り心地を良くしたかった」と語るだけあって、その快適性へのこだわりは相当なものだ。
スタンダードモードでも十分に快適だが、コンフォートモードへ切り替えた瞬間、このクルマの真価が見えてくる。1/100秒単位で路面状況を検知し、ダンパー減衰力を緻密に制御することで、振動も上下動も抑え、大柄なミニバンとは思えないほどフラットな乗り味を実現しているのだ。
これはドライバーだけでなく、後席に乗る家族やゲストにとっても大きな恩恵となる。高級ミニバンとして、同乗者の快適性をここまで高めてきた点は、大きな武器と言っていいだろう。
さらに興味深いのは、スポーツモードに切り替えた際のキャラクター変化だ。一転して足まわりは引き締まり(と言ってもガチガチなわけではない)、タイトコーナーでも驚くほど軽快に向きを変えてくれる。e-4ORCEによる四輪駆動制御も自然で、路面をしっかり掴みながら曲がっていく感覚は、もはやスポーツモデル的ですらある。
しっかりと手応えのある操舵感、そして操作に対する応答性、狙ったラインを正確にトレースする感覚は、高級ミニバンの枠を超えている。快適性重視にも、ドライバーズカー的な楽しさにも振れる。この幅広いキャラクターこそ、新型エルグランド最大の魅力かもしれない。
もちろん、後席の快適性も抜かりなし
もちろん後席の快適性も抜かりない。日産初のスムースストップ機能による自然な減速制御に加え、2列目には大型キャプテンシートを採用。アームレストやオットマンはもちろん、前後スライド以外の主要機能は電動調整式で、メモリー機能まで備わる。
さらに2脚の間にはテーブルとドリンクホルダーを配置し、各席にはシートヒーターとベンチレーション、USBポートも用意。後席モニターやBOSEサウンドシステムなども含め、まさに至れり尽くせりの空間だ。ラグジュアリーミニバンとして求められる装備は、ほぼすべて揃っていると言っていい。
当然ながら価格も相応のものになるだろう。しかし、それに見合う価値と完成度を備えていることは間違いない。なにより印象的だったのは、しっかり「運転して楽しい」ことだ。
個人的に初代エルグランドを所有していた身としては、運転席でハンドルを握ったその感覚にどこか懐かしさを覚えた。快適性だけではなく、ドライバーの高揚感まで大切にする・・・その思想は、確かに初代から受け継がれている。元祖高級ミニバンの意地、王座奪還なるか。(撮影:平野 陽)
新型エルグランドのより詳しい試乗レポートは、もうまもなく発売の「Motor Magazine 2026年7月号 国産車大特集」に掲載。
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みんなのコメント
e-Power、レンタカーで初めて当たって。期待薄でしたが… 良くてビックリ!
乗れる機会を与えてくれてありがとう。やっぱり構造が違うものは試すべきだね。
よく言われる高速燃費も18kmで優秀でしょう。下道25km以上。
あと、パワーモードがシートに背中が強く押し付けられる加速で感心した。
しかし、あんなに遠慮せず踏んで 軽より燃費がイイんだな…