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ランエボのハンドリングを支えた「スーパーAYC」は今、新型エクリプスクロスで生きている

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ランエボのハンドリングを支えた「スーパーAYC」は今、新型エクリプスクロスで生きている

クルマ好きを魅了した自動車には、評価の高い技術が搭載されているものだ。かつて三菱 ランサーエボリューションのハンドリングを支えた「スーパーAYC」は、現在ではどのように発展しているのか、紹介しよう。

4WDとAYCでゼロカウンターを生み出したランエボIV
ランサーエボリューション(以下、ランエボ)にスーパーAYC(アクティブ ヨー コントロール)が初搭載されたのは、2003年1月に発売されたランエボVIIIからだ。ただし、初搭載といえども従来型のランエボに採用されていたAYCの発展型であり、まったくの新開発ではない。ランエボにAYCが初採用されたのは、1996年8月のランエボIVからだ。

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コーナリング時のコーナー内側のタイヤを旋回内輪、コーナー外側のタイヤを旋回外輪という。AYCの要点は、コーナリング時に旋回外輪へのトルク分配を増大させ、ヨー(回転運動)を発生させるというもの。つまり、左右輪でのトルクベクタリングだ。AYCが作動すると旋回外輪のトルクが増え、タイヤの回転数とトラクション性能が向上する。しかもトルク調整が行われない旋回内輪ではトラクション性能が維持されるため、車体には旋回内輪を中心としたヨー(回転運動)が発生し、コーナーをスムーズかつ機敏に駆け抜けることができるのだ。

ランエボIVが発売された1996年当時、4WDでのトルク分配は前後輪に対して行うのが一般的で、後輪のみとはいえ左右輪でのトルク分配は世界広しと言えど、AYCだけではなかっただろうか。それほどにAYCは先進的な機構だった。

ランエボの進化はパワートレーンの進化でもあった
ランエボはベース車体により4つの世代に分けられ、フルタイム4WDという括りは同じであるが、使われた技術に変遷が見られる。1世代目のランエボI~IIIまでは、1987年に登場したギャランVR-4譲りのVCU方式で、センターデフにビスカスカップリングが使用された。2世代目のランエボIV~VIではVCU方式はそのままにリアデフにAYCを内蔵。「ゼロカウンター」でコーナーを駆け抜けた。

3世代目のランエボVII~IXでは、ドライブトレーンの技術進化が目覚しい。まずランエボVIIではセンターデフをVCUから電子制御油圧式多板クラッチを使用するACD(アクティブ センター デフ)に変更した。ACDとAYCを統合制御することで、コーナリング中とコーナリング後の加速に必要な駆動力をシームレスに得られ、素早いコーナリングとコーナリング後の加速を両立させた。

ランエボVIIIでは、AYCは内部構造を改良しトルクの移動量を約2倍と高め、スーパーAYCに進化した。旋回外輪がより高回転になることでヨー(回転運動)が発生しやすくなり、旋回速度が増した。

スーパーAYCの発展型である、S-AWCの現在は
スーパーAYCはランエボIXを最後に、ランエボXでは名称が消えてしまう。4世代目のランエボXのドライブトレーンシステムは、AYCを含んだS-AWC(スーパー アクティブ ホイール コントロール)に進化したからだ。

S-AWCとは、四輪の駆動力と制動力の制御を中心とした車両運動統合制御技術のこと。従来のランエボに搭載されていたACD(アクティブ センター ディファレンシャル)、AYC、スポーツABSに加えてASC(アクティブ スタビリティ コントロール)を追加装備していた。従来型のランエボではACDとスーパーAYCのみを統合制御していたが、S-AWCではスポーツABSと新たに採用されたASCも制御内容に加え、高い安全性と走行性能を両立。

スーパーAYCの発展型であるS-AWCのその後が気になるところだ。ランエボX生産終了後、S-AWCはアウトランダー/アウトランダーPHEVと、エクリプス クロスに搭載された。ガソリン車のS-AWCはリアデフで左右後輪にトルク配分するタイプでランエボXと同様だが、PHEVではオールホイール コントロール思想は変わらないものの、メカニズムの違いによりAYCと同様の効果の出し方がガソリン車のS-AWCと異なる。

2020年に発売されたエクリプス クロス PHEVもまたS-AWC搭載車だが、現行型アウトランダーPHEVと同様、4WDシステムは前後車軸上に各1基モーターを設置したツインモーター式で、AYCもリアデフ内蔵型から前後旋回内輪のブレーキ制御と前後旋回外輪へモーターによる駆動力供給を行うタイプになっている。これはASCやABSを統合制御するS-AWCを採用し、瞬時にトルクが立ち上がるモーターを緻密にコントロールできるからこそなせる制御だ。(文:猪俣義久)

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