モビリティリゾートもてぎで行なわれたスーパーGT最終戦は、GT500クラスのふたつのメーカーが笑顔でシーズンを締めくくりました。ホンダ陣営は、100号車STANLEY NSX-GTの山本尚貴、牧野任祐組がレースを完勝し、日産陣営は2位に入った12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴、ベルトラン・バゲット組が陣営に久々のシリーズタイトルをもたらしました。
一方、過去2シーズンはGRスープラでGT500のベンチマーク的存在であったトヨタ陣営は、今季は一転して上記2メーカーに後れをとる苦しいシーズンになりました。
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2020年のスープラ導入以降、トヨタ勢が勝利を挙げたサーキットは岡山と富士のふたつ。彼らはこれらのサーキットを得意としています。しかし今年の岡山戦では、100号車NSXが優勝した14号車ENEOS X PRIME GR Supraを最後まで追い詰めましたし、富士での2レースでも日産Zが競争力の高さを見せてスープラ勢と渡り合うなど、ライバルが確実にその差を縮めていました。
そして最終戦もてぎでは、6台中5台のGRスープラが予選Q1で敗退。決勝では11番手スタートの14号車スープラが好調なレースペースを見せて3位に入りましたが、序盤に複数のマシンが接触やトラブルに見舞われたことや、セーフティカーが出されたことはやはり考慮する必要があるでしょう。こういったことからも、スープラはNSX-GTやZに比べて性能面で後れをとっていることは否めないでしょう。
37号車KeePer TOM'S GR Supraのサッシャ・フェネストラズと宮田莉朋も、最終戦に向けてわずかながら逆転王座の可能性を残していた1組ですが、もてぎでの事前テストの段階で、最終戦を制してタイトルを獲得するのは厳しいと考えていたと言います。
GRスープラは今季から導入された新たな空力パッケージによって、フロントのダウンフォースを改善することができました。ただ鈴鹿での2レース、特に8月の第5戦での結果を振り返ると、ダウンフォースという面では改善の余地が大きいことが伺えます。
直線でのパフォーマンスとダウンフォースを併せ持つZが登場したことにより、空気抵抗の少ないコンセプトのスープラが持つ弱点がより顕著になった印象を受けます。また“スペック2”のエンジンを投入した後半戦からは、ドライバーからパワー不足を訴えるような声も聞こえてきていました。そういった点からも、山下健太がスープラの長所が失われてしまったという旨の発言をしたことも理解できます。
14号車の山下、大嶋和也組のランキング5位が最上位となった今季のトヨタ陣営。これほどまでに苦戦を強いられたのは、立川祐路、平手晃平組(38号車ZENT CERUMO SC430)のランキング6位が最上位となった2011年シーズン以来と言えます。ただそれ以上に心配されるのが、開発の制限により来季も同じような結果になりかねないという点です。
2024年の新型車両導入に先立ち、2023年シーズンは空力スペックが凍結されます。つまり、GRスープラはタイヤ開発とエンジン開発という点で改善を進めていくしかないということになります。
もうひとつ、ドライバーラインアップという点も気がかりです。ここ最近はニック・キャシディ、平川亮というトップドライバーが相次いでGT500から離れましたが、来季は日産からフォーミュラEに参戦するサッシャ・フェネストラズも陣営から離れる見込みであり、またしても才能あるドライバーがラインアップから外れることになります。フェネストラズの後任は阪口晴南が合理的な選択だと思いますが、もっと多くのフレッシュな才能が加わることが望まれるでしょう。
今はコロナ禍による入国制限もなくなったため、外国から大物ドライバーを獲得することも可能でしょう。ただ過去を振り返ってみると、ジュリアーノ・アレジ、フェネストラズ、キャシディ、フェリックス・ローゼンクヴィストなどトヨタのGT500で活躍した外国人ドライバーは皆、まず全日本F3(現スーパーフォーミュラ・ライツ)に参戦し、そこで実績やコネクションを作ったことでチャンスを掴んだ者が多かったように思います。
トップレベルのドライバーを海外から見つけることはできるかもしれませんが、そうなるとWECやIMSAのパドックで提供されるサラリーに対抗する必要があるため、それなりの金銭を使ってアプローチする必要があるでしょう。
とはいえ、宮田や山下、坪井翔といったトップドライバーを擁するトヨタは、彼らのパフォーマンスを最大限引き出せるドライバーラインアップを組むことができれば、タイトルに挑むことができると思います。今季は前年王者の坪井とコンビを組んだアレジがペース面で後れをとり、苦戦するような格好となったので、来季はそうならないような工夫が必要に思います。また同時に、陣営全体の底上げも必要になってくるでしょう。
このような厳しいシーズンを送ったトヨタにとっては、車両の変わる2024年のチャンスを心待ちにしているかもしれませんが、今季のような悔しさを繰り返さないために、彼らもあらゆる策を講じる必要があります。
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