鳴り物入りで送り込まれた先進装備の数々。メーカーの持つ技術が惜しみなく投入され、今でも採用されているメカがあれば、残念ながら消滅してしまった機能もある。そんな、良くも悪くも自動車業界を賑わせた先進装備を紹介しよう。
文:木内一行/写真:トヨタ、日産、ホンダ、CarsWp.com
【画像ギャラリー】4WS、オートスポイラー…未来を変えるはずが…消えた先進装備(13枚)
「前後操舵で優れた高速安定性と取り回し性を両立」 4WS(ホンダ)
1980年代には技術が発達し、数々の新装備やメカニズムが投入された。そのなかでも、大きな注目を集めたのが4WS機構だ。
前輪を動かす一般的な操舵システムに、後輪の操舵を加えたのが4WS(4 Wheel Steering=4輪操舵)で、R31スカイラインに初めて採用されたハイキャスもそのひとつ。
しかし、なんといっても衝撃的だったのは3代目プレリュードに搭載された「ホンダ4WS」だ。
このシステムは、舵角応動型4WSとして世界初の機構。高速では小さなハンドル角の使用頻度が多いため、後輪は前輪と同じ方向に操舵(同位相)。低速では大きなハンドル角となることが多いため、後輪を前輪と逆の方向に操舵(逆位相)する。こうすることで、低速では小回り性能が向上し、高速では優れた走行安定性を実現したのだ。
ただし、あくまでもハンドルの舵角で後輪を制御する舵角応動型のため、メカニズムも前後のステアリングギアボックスをセンターシャフトでつなぐといったアナログなものだった。
また、開発のきっかけは予防安全の向上だったが、実際には異次元のコーナリング感覚や優れた取り回し性も手に入れ、ブランドイメージの強化にも貢献した。
ちなみに、プレリュードから1カ月遅れで登場した5代目カペラでは電子制御式の車速感応型4WSを採用し、その後もソアラやセンティアに搭載。現在もメルセデス・ベンツなどの欧州車に用いられている。
「まったく違う構造で大トルクに対応する革新的CVT」 エクストロイドCVT(日産)
今や大小さまざまなクルマに採用され、トランスミッションの主流となっているCVT。
日本ではスバルが「ECVT」としてジャスティに搭載したのが初めてで、その後各メーカーが追随。効率の良いエンジン回転数を使うため燃費性能に優れ、無段変速ならではのシームレスな加速を得意としつつも、人間の感性にマッチしない加速など不評となる要因もあった。
また構造上、大トルクに耐えられなかったことも弱点だった。
しかし、1990年代も半ばになると開発が進み、進化系CVTも登場。そのなかでも画期的だったのが、1999年にY34セドリック/グロリアに搭載されたエクストロイドCVTだ。
これは一般的なCVTのようなベルトを使わず、ディスクとパワーローラーの組み合わせで駆動力を伝達する世界初の機構。
エンジンの動力を入力ディスクから出力ディスクへ伝えるとともに、その間にあるパワーローラーの傾きを連続的に変えることで入出力ディスクそれぞれの回転速度を変化させ、滑らかな無断変速を実現。さらに、ディスクとパワーローラーのセットを2個備えるダブルキャビティ方式とし、大トルクにも対応した。
ちなみに、Y34に続きV35スカイラインにも搭載。こちらは8速マニュアルモードを備えてよりスポーティな走りも楽しめた。
ただ、Y34の新車価格は4AT車よりも50~61万円高かったし、故障が多いうえに修理費も高額。そんなこともあって浸透せず、Y34とV35のみで消滅。今では過去のものになってしまった。
「能動的に自動制御する先進のサスペンション」 アクティブサス(トヨタ)
受動的に衝撃を吸収する一般的なサスペンションと異なり、路面の凹凸や姿勢変化に合わせて能動的に油圧などで車高や減衰力を自動制御するアクティブサスペンション。
1980年代後半からF1で採用されたことは有名な話だが、それほど大きく変わらない時期に量産車にも搭載されるようになった。
その先駆けとなったのが1989年に登場した5代目セリカだ。
搭載された「トヨタアクティブコントロールサスペンション」は、各種センサーの情報をもとに4輪それぞれに備えられたハイドロニューマチックシリンダー内の油圧や油量を各輪独立で制御し、減衰力やばね定数の他、車両姿勢を瞬時かつ自ら(アクティブに)自動調整。これにより車体の姿勢変化が抑えられ、乗り心地も向上。操縦性や走行安定性を高めることができた。
セリカが登場した約1カ月後には日産がインフィニティQ45に採用。セリカが補助的に金属ばねを併用していたのに対し、こちらは油圧だけで制御するフルアクティブサスペンションで、よりフラットな乗り心地を実現したのである。
ただし、ともにコストの高さがネックで、300台限定だったセリカ・アクティブスポーツの新車価格は320万円。ベースのGT-Rが188万円だったから、その差は132万円にもなる。Q45はもう少し差が狭まり、ベース車の70万円増だった。
「可変ギアレシオで新感覚のハンドリングを実現」 VGS(ホンダ)
一般的には、ステアリングの切れ角と前輪の切れ角は常に一定。速度が速かろうが遅かろうが、舵角が大きかろうが小さかろうが変わりはない。そこで、走る楽しさやスポーティなステアフィールを高めるべく開発されたのがVGS(Variable Gear ratio Steering)だ。
このVGSは世界初の車速応動可変ギアレシオステアリングで、車速と舵角に応じてステアリングのギアレシオを無段階に変化させ、あらゆる状況下で理想的なハンドリングを実現する。
例えば、ワインディングなどの低中速域ではクイックレシオになるため、ステアリングを切る量が少なくレスポンスよくクルマの向きを変えることができる。
その一方、高速走行など車速が高い領域では敏感すぎないスローレシオとなるため、安心感・安定感のある走りが可能。また、低速時のステアリング操作量が軽減されるため、車庫入れなどでの取り回し性も向上するのだ。
VGSが搭載されたのはS2000・タイプV。専用のダンパーやスタビライザー、LSDなどを採用して標準車比18万円増。フィーリングに少々クセはあるものの、最先端メカニズムと考えれば、この差額はむしろ安いのではないだろうか。
また、S2000以降も可変ギアレシオステアリングは他メーカーで開発され、国産車だけでなく欧州車にも採用されている。
「速度によって自動制御し空気を味方につける」 オートスポイラー(日産)
空気の力を利用し、走行性能を高めるエアロパーツ。その種類や効果はさまざまだが、レーシングカーも含めれば歴史は古く、1960年代まで遡る。
その後、量産車に落とし込まれて多くのクルマに採用されるようになったが、1980年代に入ると多様化。そして、1986年には世界初の画期的なスポイラーが登場。それがGTオートスポイラーだ。
採用されたのは、R31スカイラインの2ドアクーペ。フロントバンパー下に電子制御式スポイラーを設置し、通常はバンパー内に格納。空気の抵抗が走りに影響しはじめる70km/h以上になると自動で突出し、50km/h以下になると自動格納するというもの。
その効果は大きく、未装着車(格納時)の空気抵抗係数は0.32だが、装着車(突出時)は0.31に向上するとともにフロントタイヤの揚力も大幅に抑制。ルックスの良さもあり、後にR31のアイコンとなったのだ。
そして、マイナーチェンジで4ドアHT車にも拡大され、続くR32でも採用された。ちなみに、R33(前期のみ)にも設定されていたことはあまり知られておらず、その後は消滅。
ただし、現在もポルシェなどの欧州スポーツカーに装備され、その効果とともにリアビューのアイキャッチにもなっている。
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みんなのコメント
私は当時5代目セリカGT-Rに乗っていましたけど、電子制御式4WSがありましたよ。