■2.4リッターへ排気量アップした新型「BRZ」
2020年11月18日に、2代目となるスバル「BRZ」が世界初公開されました。新型は現行モデルと同じくトヨタ/スバルの共同開発によって生まれたモデルですが、2度目のタッグということで、現行モデル以上に一体感のあるワンチームで進められたと聞いています。そんな新型はどのようなクルマなのでしょうか。
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プレスリリースには「さらなる付加価値を融合」、「さらに磨きの掛かった…」などと記載されています。つまり、新型BRZは「正常進化」、「継承」の道を選んだわけですが、逆をいえば、初代のコンセプトは正しかったという証明です。
つまり、「走りの愉しさ」、「カーライフに新たな価値を提供」、「誰でも愉しめるスポーツカー」というコンセプトは変わらず、全方位に大きな進化を遂げているのです。
エクステリアは現行モデルと比べて、「似ているようで似ていない?」、「似ていないようで似ている?」といった印象です。
細かく見ていくと、フロントはより強調されたヘキサゴングリルと先進的な形状のヘッドライト、サイドは「WRX STI」を彷彿とさせるフロントフェンダー後方のエアアウトレットとそこから繋がるサイドシルスポイラー、そしてリアはフェンダーから絞り込まれた造形やランプ周りの処理が特徴です。
その一方で、Aピラーからトランクまでのラインやドア周りに初代モデルの面影が残る部分もありますが、個人的にはサイズ的に伸びやかに見えた初代モデルに対し、新型モデルはスポーツカーらしい凝縮感がプラスされたように感じました。
タイヤは18インチにサイズアップ(ベースモデルは17インチ)、細身のスポーク形状のアルミホイールはトヨタ「GRヤリス」とよく似たデザインですが、この辺りはトヨタ側の意向(GRとしての共通デザイン!?)だと予測しています。
インテリアも、エクステリア同様の印象です。水平基調のインパネデザインと低く設置されたメーターバイザーは意匠面よりも運転に集中するための機能が重要視されています。
一番の特徴は、7インチTFT液晶パネルとセグメント液晶パネルを組み合わせたデジタルメーターでしょう。じつはこれ、水平対向エンジンをイメージしたデザインです。ちなみにメーター表示は2タイプが用意されています。
北米仕様では、インパネの中央には8インチSUBARU STARLINK(スバル・スターリンク)マルチメディアインフォメーションシステムが採用されますが、日本仕様はどうなるのでしょうか。
さらに初代モデルで課題となっていたシートも刷新。リリースには「高いホールド性とフィット感をもたらす」とありますが、写真を見ても骨太な印象なのがよくわかります。
居住性は初代モデルとほぼ同じだと思いますが、リア周りのデザインが大きく変わったことで、初代モデルがこだわった、後席を前方へ倒すとタイヤ4本搭載可能なラゲッジスペースがどうなったのかは気になるところです。
パワートレインは初代モデルと同じくNA(自然吸気)を採用していますが、排気量は2リッターから2.4リッターへとアップ。そもそもBRZは数値を追うスポーツカーではありませんが、「もう少し力が欲しい」というユーザーの本音を反映したのでしょうか。
筆者(山本シンヤ)は、より厳しさを増す環境規制対応の側面もあると考えます。
2.4リッターという排気量からわかるように、北米専売の3列シートSUV「アセント」用のFA24型がベース(ボア94.0×ストローク86.0mm)ですが、吸排気系やフリクション低減など、中身はほぼBRZ専用と考えていいでしょう。
初代モデルと同じく直接噴射+ポート燃料噴射装置(トヨタD-4S)が採用され、スペックは最高出力228hp・最大トルク249Nm。嬉しいのは、排気量がアップしていますがレッドゾーンは2リッターと同じ7500rpmと不変なところです。
トランスミッションは6速MT/6速ATを採用。6速ATはスポーツモードが大きく進化しておりドライバーの意志に反応するアダプティブ制御を採用。
6速MTの改良のアナウンスは記載されていませんが、シフトフィール向上やチューニングやモータースポーツユースで課題となる部分にメスが入っていることを期待します。
■排気量アップに合わせてボディや足まわりもアップデート
プラットフォームは初代モデルの進化版ですが、インナーフレーム構造や構造用接着剤などSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の知見が盛り込まれています。
リリースには「フロント曲げ剛性約60%アップ、ねじり剛性約50%アップ」とありますが、それ以外の部分にも手が入っているのは間違いないでしょう。
ボディ直付けスタビライザーやステアリング取り付け剛性アップなどがおこなわれていたら、“ほぼ”SGPといっていいかもしれません。
初代モデルは軽量、低重心に徹底してこだわっていましたが、新型はその辺りも抜かりなし。
エンジン出力アップや、より厳しくなる安全性能向上による重量増を抑えるべく、ルーフ/エンジンフード/フロントフェンダーはアルミを採用。これらにより前後重量配分のさらなる適正化はもちろん、低重心化にも寄与しているようです。
ちなみにトヨタ「GRスープラ」登場時に、「86(BRZの姉妹車)よりも低重心」とアピールされていましたが、新型86とスープラではどちらが低重心になるのかも興味深い点です。
体幹が強化された車体に組み合わせてサスペンションもアップデート。現行モデルはノーマルがショーワ、STIスポーツはZF(ザックス)でしたが、新型はどうでしょうか。
タイヤサイズは現行の16/17インチに対して17/18インチと1サイズアップ。18インチは215/40R18サイズのミシュラン・パイロットスポーツ4が奢られています。
絶対的なパフォーマンスは確実に上がっていると思いますが、初代モデルで高く評価されているコントロール性の高さや懐の深い乗り味とどのようバランスさせたのか気になるところです。
ただ、新型「レヴォーグ」をはじめとする最近のスバル車の走りから推測すると、その心配は単なる“取り越し苦労”かもしれません。
初代モデルでは対応していなかった安全支援デバイスですが、新型はATモデルに待望のアイサイトを標準装備。プリクラッシュブレーキや全車車速追従機能付クルーズコントロール(ACC)などが採用されています。
MTモデルにアイサイトの設定がないのは残念ですが、今回はあくまでも北米仕様の話です。すでに国交省は「2021年11月以降にデビューする国産新型モデルに対して衝突被害軽減ブレーキの装備を義務づける」方針を発表しているので、日本向けはどうなるのか。こちらも気になるところです。
このように初代モデルに対して新型の性能アップはいうまでもありませんが、BRZの本当の魅力は数値では表せない「官能性能」にあります。
この辺りは初代モデルの進化・熟成で証明していますし、今まで以上に「安心と愉しさ」にこだわるスバルと、今まで以上に「味づくり」にこだわるトヨタとのコラボレーションなら心配は無用です。
今回は新型BRZが発表されましたが、気になるのは姉妹車のトヨタ 86がいつ発表されるのかだと思います。
筆者はBRZと同時期に発表されると予想していましたが、新型コロナ禍の影響で二転三転、2021年1月の東京オートサロンが濃厚だと思います。初代モデルでは走りの「味」の違いが大きく話題となりましたが、その辺りの進化も気になる所です。
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