いま50代以上のクルマ好きおじさんが行ってきたクルマの操作は、令和の時代に通用するのだろうか? Z世代に語り継ぎたいものを紹介していこう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock(トビラ画像:naka@Adobe Stcok)
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まずは使われなくなった死語から
「昔はなあ、チョーク引いて回転上げて暖気した。当時は夏になると、ボンネットから水蒸気が上がるエンコするクルマも多かったよ。まだマニュアル車全盛の頃、オートマ車が少ない頃はノークラ(ノークラッチ)とかトルコン車(トルクコンバーターの略)って言ったもんだ。ベンコラ(ベンチシート&コラムシフト)も見なくなったなあ」と、70代のクルマ好きおじさんが呟いているのを聞いたことがある。
さすがにスーパーカーブームの時、小学生だった還暦間近の筆者には馴染みが薄い。それよりもあれだけ流行したのにあっという間になくなった流行りのクルマ関連装備やグッズが懐かしい。
今ではエアバッグの影響ですっかり付け替えなくなった後付けのステアリング交換(ナルディやイタルボランテ)やCDチェンジャー(6連奏、10連奏とか)。さらにダッシュボードにヤシの木やフラワーレイをぶら下げたり、フロントグリルの正月飾りもすっかり見かけなくなった。 いきなりエンジンを切るのではなく、設定された時間内にアフターアイドルを行い、その後エンジンを自動的に切る、ターボタイマーも懐かしい。
最近、懐かしく感じるのは、手引きのサイドブレーキや足踏み式ブレーキやシガーライター(灰皿も)。シガーライターがなくなるのは当然とのことといえるが、手引きのサイドブレーキは残してほしいものだ。
あ~、電動パーキングブレーキのスイッチを押すのか上に上げるのか毎回迷ってしまう自分がもどかしい。サイドブレーキレバーのボタンを親指で押してロックを解除する操作がなくなってしまうのは寂しいゾ。そのほか、プッシュスタートが主流となっている今、イグニションキーを回すこともなくなりそうだ。
腕を助手席に手を回して後ろを見てバックする「腕回しバック駐車」
そんななか、風前の灯になりそうなのがバック駐車する際に助手席に手を回す、いわゆる「腕回しバック駐車」。今はシフトをRに入れるとバックモニターに後方の映像が映るクルマばかりなので、こんなことをする人は少ないだろう。
だが、バック時にルームミラーやサイドミラーを使う、もしくは運転席ウィンドウを開けて身をのり出しつつ後方確認をしてバックしていた世代からすると、助手席に腕を回して体を固定しつつ体をよじって“後方を直に見ながらバックできるこの方法”は、安全で安心のバック時ポジションだった。
ここにおもしろいデータがある。損害保険ジャパンが全国の20代~60代男女各400名に対して2022年に行った「ドライブデートに関する意識調査」(引用)のアンケート結果を見ると、昭和世代と平成・令和世代の「ドライブデート」に関する意識の違いが明確に出ている。
「車庫入れやバック駐車の方法として、キュンとくる仕草は?(単一回答)」と尋ねたところ、昭和世代では「助手席に手を回してバック駐車する(腕回しバック駐車)」が52.5%で1位、平成・令和世代では「バックモニター駐車」が66.9%で1位だった。
まだ令和の時代になっても昭和世代の7割弱が、腕回しバック駐車にキュンと来ていると回答。そもそも車内のバックモニターが搭載されているのが当たり前の現在では、助手席に腕を回すことなんてしていないだろうなあ。みなさん、してますか?
昔は重ステのため内掛けハンドルが多かったが……
これもあまり見なくなった内掛けハンドル。ハンドルを内側から持って回すハンドル操作方法で年配のタクシー運転手が細い路地を曲がる際に「カチカチ……」と言わせながら内掛けハンドルで曲がっていたのを見た記憶がある。
内掛けハンドルをするのはベテランドライバーが多いと言われる。これは、昔のクルマにはパワーステアリング機構がついていなかった(“重ステ”と呼ばれた)ため、引っぱることで力を入れやすい内掛けハンドルを使う人が多かったのだ。
しかし、この内掛けハンドルは……
・素早いハンドルの切り返しができない
・エアバッグ作動時に腕を骨折する可能性がある
・どれだけハンドルを回したかがわかりにくい
上記のようなデメリットも多く、「嫌われる」というより現代では「やってはいけないハンドル操作法」ともいわれている。この内掛けハンドルを無意識にやってしまう人は、自身の運転姿勢に問題があるのかもしれない。
日本の教習所では、「クロスハンドル」で教えてくれることが多いそうだが、普段の運転シーンでは、送りハンドルがベターではないだろうか。
ただし、ジムカーナでは、送りハンドルでは間に合わず、クロスハンドルを使うことになるが、普段は送りハンドルを行い、やむをえない場合にはクロスハンドルも使う、というのが適切だろう。
自然にやるとカッコよかったダブルクラッチ
シフトチェンジ時のショックを減らす操作として、ダブルクラッチとブリッピングがある。ダブルクラッチは、トランスミッション内部の入力軸と出力軸」の回転を合わせるのが最大の目的で、内部のギア同士がスムーズに噛み合うように助ける操作。マニュアル車でギアを変える際、一度クラッチを切ってギアをニュートラルにし、エンジン回転数を合わせてからもう一度クラッチをつなぐ。
一方、ブリッピング(後述する)は、エンジン本体とタイヤ側の回転差をなくすために行うこと。これをしないと、クラッチを繋いだ瞬間にクルマが前のめりになるような強いショックが出てしまう。
ダブルクラッチは、50代以上のおじさんが若い頃のクルマにはごく普通に使われていたテクニックだ。かつてのMTは、ギアを変えるときにギア同士の回転速度を同調させる「シンクロメッシュ機構」がなかったり、その性能が不十分だったりしたため、回転数を自分で合わせてあげないと、ギアがスムーズにつながらなかったのだ。
現代のMT車にはギアの回転数を自動で合わせる「シンクロメッシュ機構」が備わっているため、普通にシフトチェンジしてもギアが痛むことはない。しかし、スポーツ走行時や急なシフトダウンの際、シンクロメッシュには大きな摩擦負荷がかかる。
では現代のクルマには絶対必要ないかといえばそうでもない。現代のスポーツカーや乗用車であっても、サーキット走行や峠道、日常の減速時にダブルクラッチを使用することは、愛車のコンディションを最高の状態に保つために非常に有効な手段といえる。
ブリッピングをやってるとおじさん確定!?
街中を歩いていて、走っているクルマが停止する直前で「ブォンブォン」と空ぶかしのような音が聞こえることがある。おじさん世代のMT乗りはほぼやっていたと思うこのブリッピング。低いギアへシフトダウンするとき、クラッチを切った状態でアクセルペダルを瞬間的に踏み込んでエンジン回転数を高め、低速ギアとスムーズにつなげるドラテクだ。
MT車でシフトダウンする時にガクッというショックが出ないばかりか、ヒールアンドトゥと合わせて強いエンジンブレーキを効かせ、次のシフトアップのために使われているのだ。
最近ではドライバーがシフトダウンしただけで適切なエンジン回転数を算出し、自動制御でブリッピングするMT車もある。フェアレディZのシンクロレブコントロールやGRカローラの6速iMT、シビックタイプRのレブマッチシステムがそれだ。
例えばGRカローラの6速iMTは、シフト前方にあるiMTスイッチを押すと、6速iMTがスタンバイ状態に。この状態で変速動作(クラッチ操作、シフト操作)を検出すると、変速後のエンジン回転数を合わせるように制御し、スムーズな変速をアシストする。アクセルをあおらずにシフトダウンしても、自動でエンジンの回転が上がるので、ショックを感じることはほとんどない。
ちなみにオートブリッピングは普段の街乗りだけでなく、ワインディングでも有効。高いアベレージで飛ばした時でも「フォン、フォン」と軽快なエンジンサウンドとともに回転を合わせてくれる。
ヒールアンドトゥでブリッピングを行うには初心者には練習が必要だが、この自動ブリッピングがあれば華麗なテクニックを勝手に行ってくれるのだからいい時代になったものだ。
ちなみにクルマ好きのおじさん世代が知っているヒールアンドトゥは、スポーツ走行で素早いコーナリングを行うための運転テクニック。右足のつま先(トゥ)でブレーキを踏みながら、右足のかかと(ヒール)でアクセルを吹かし(ブリッピング)、シフトしたギヤに適切なエンジン回転数を合わせることで、コーナーの立ち上がり時に鋭い加速を得るドライビングテクニックだ。
もっと細かくいうと、右足のつま先(トゥ)でブレーキを踏んで、シフトダウンの瞬間につま先の踏力を維持したまま。右足のかかと(ヒール)でアクセルを「ちょん」とあおり、エンジンの回転数を上げて低いギヤにつなぐことでスムーズな挙動につながるのだ。
もちろん、街中ではする必要もないが、ワインディングやサーキットでのスポーツ走行には必須なので、まだできていない人は練習して習得したい。
もはや過去の遺物か? ポンピングブレーキ
スピードの出ているクルマを急停車させたい場合に目いっぱいブレーキを踏むと、タイヤがロックしてしまい、そのままの状態で滑走することになる。
これでは意図した制動が行えないので、ロック状態を一時解除してタイヤを再び回し、もう一度ブレーキを踏んで制動距離を縮めるという動作を繰り返すのが「ポンピングブレーキ」。
かつては急制動の必須テクニックだったポンピングブレーキだが、技術が進んでこのブレーキ操作を電子&機械的に行えるようになった。そう、これがABS(アンチロック・ブレーキ・システム)だ。
ABSの制動能力が人間の操作を上回るとともに、ABSを装備するクルマも増えたことから、ポンピングブレーキを行うドライバーは減っていった。
ABSを装備しないクルマに乗っている人は身につけておきたいポンピングブレーキだが、現在における必要性はそこまで高くはない。
逆ハンって逆ハン愚連隊???
逆ハンと聞いて、作家五木寛之さんの痛快カーアクション小説『疾れ!逆ハンぐれん隊』を思い出した人はおじさん確定! 実はこの作品、昭和60年7月26日号から、ベストカーに連載されていた小説だった。
話が逸れました。逆ハンの本来の意味とは、右に曲がりたければハンドルも右に切る。当然のことのように思えるが、高速でコーナーに進入する場合、遠心力に後輪の摩擦力が負けてしまい、リアが旋回円の外側に流れ(オーバーステア)、スピンしてしまう危険性がある。
逆ハンとは、このオーバーステアを防ぐために通常のコーナリングとは逆の方向にハンドルを切りながら曲がることを指す。別名、カウンターステア。
頭文字Dの世界では当然のワードではあるが、峠族なども死語となりつつある現在においては、滅多に耳にしない言葉となってしまっている。ただし、雪道といった路面の摩擦力が低下している状況で後輪が流れ始めた際にも使えるテクニックでもある。
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