現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 新型フェラーリ296GTBはココがスゴい! 前編:パワーユニット

ここから本文です

新型フェラーリ296GTBはココがスゴい! 前編:パワーユニット

掲載 更新 6
新型フェラーリ296GTBはココがスゴい! 前編:パワーユニット

日本に上陸したPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)の新型フェラーリ「296GTB」の注目すべきポイントについて世良耕太が解説する。前編ではパワーユニットに迫る!

かつてのF1マシンとの共通点が多いエンジン

5年目でも魅力は健在──トヨタC-HR ハイブリッドG試乗記

フェラーリ・296GTBは、跳ね馬のバッジを付けたロードカーとして初めて6気筒エンジンを搭載した。“跳ね馬”と、断ったのにはワケがあって、「ディーノ」のバッジを付けたロードカーには先例があり、1960年代後半のディーノ206/246が該当する。この2シータースポーツカーは、V型6気筒自然吸気エンジンをミドシップに搭載していた。

“ロードカーとして初めて”と、断っているところにもワケがあって、F1にも先例がある。1981年にジル・ビルヌーブとディディエ・ピローニがドライブした「126CK」は、1.5リッターV型6気筒ガソリンターボをミドシップに搭載していた。もっと言えば、2014年以降のフェラーリのF1は1.6リッターV型6気筒ガソリンターボを搭載している。こうした背景もあり、296GTBは“跳ね馬”のバッジを付けた“ロードカー”として初めて6気筒エンジンを搭載していると断っているのだ。

エンジンの構造面でいえば、296GTBが搭載するV型6気筒エンジンは、ディーノや現代のF1よりも1981年のF1マシンが積んだタイプ「021」との共通点が多い。その共通点について説明する前に、「296」の解き明かしといこう。「512」や「348」がそうだったように、296もエンジンの排気量とシリンダー数の組み合わせだ。

その場合、2.9リッターの6気筒と決めつけたいところだが、ときどき不可解なロジックを持ち出して押し通すのがフェラーリである。排気量は2992ccなので、素直に受け止めれば3.0リッターで、車名は306になったはずだ。しかし、どうしたわけか、フェラーリは4桁の数字の最初のふたつをピックアップしてモデル名に採用した。

40年前のF1マシン、126CKが積んでいたタイプ021と296GTBのF163で共通するのはVバンク角で、両エンジンとも120度だ。さらに、排気をVバンクの内側に配置する“ホットV”としたところも共通しており、2基のターボチャージャーをVバンクの中に配置した点もおなじである。

V型エンジンは等間隔で燃焼させると性能や振動面で都合がいい。V型12気筒なら60度にすると、クランクシャフト上でコンロッドを支えるクランクピンの位相が60度になり、等間隔で燃焼できるようになる。V型10気筒の場合は72度、V型8気筒は90度、V型6気筒なら120度になる。

フロントにエンジンを搭載する場合は左右のタイヤがスペース上の制約になるため、せいぜい90度までしか選択できない。120度では幅広になりすぎてパッケージングが成立しなくなってしまう。だから、フロントにV型6気筒エンジンを縦置き搭載する場合は、バンク角を60度か90度にして、エンジンが長く、重くなってしまうのを承知で、等間隔燃焼を実現するためにクランクピンにオフセットを設けるのが一般的だ。

ところが、エンジンをミドシップに搭載するならば話は別だ。タイヤが邪魔をするフロントに搭載するよりスペース面の自由度が高いため、120度のバンク角が選択できるようになる。見方を変えれば、バンク角120度のV型6気筒エンジンは、ミドシップ専用に割り切って企画し、開発する必要があり、それだけ価値が高いのだ。そんな思い切ったエンジンを296GTBは搭載しているのである。

バンク角が広く幅広なので、さらに横に広がりがちな排気系をVバンクの内側に押し込み、ホットVにした。このホットVはパッケージング面でメリットがあるだけではない。高温の排気が左右に分かれず、エンジンコンパートメントの上部にまとまるので熱のマネジメントがしやすくなる。従来のように排気系がVバンクの外側にあると熱を逃がすために床下に開口部を設けなければならないが、ホットVにして上方に熱を逃がす構造にすれば床下はフラットにすることができ、空力面で好都合だ。

リッターあたりの出力は221ps!

ターボチャージャーは日本のIHI製で、広いバンク間を生かして2基を横に並べて搭載。バランスをとるため左右で逆回転とし、最高回転数は180,000rpmに達する。吸気を加圧するコンプレッサーホイールの直径は、「F8トリブート」が搭載する3.9リッターV型8気筒ガソリンターボ・エンジン比で5%、排気を受けて回転するタービンホイールの直径は11%低減したという。その効果で回転要素のイナーシャは11%低減しており、回転上昇に要する時間は短縮されて「瞬時のパワーデリバリーを保証する」と、フェラーリは述べる。エキゾーストマニフォールドの材料は、F1のエンジンで使用するのと同じ、耐熱性の高さと軽さを両立したインコネルだ。

296GTBが搭載する新開発の2992ccV型6気筒ガソリンツインターボ・エンジンが発生する最高出力は、エンジン単体で663psに達する。リッターあたりの出力は221psで、ふたたびフェラーリの言葉を借りれば、「プロダクションカーの新記録」ということになる。

わざわざ“単体”と記したのには理由があり、モーターのパワーを上乗せ出来るからだ。すなわちハイブリッドであり(より正確に記せば、外部電源からの充電が可能なプラグ・イン・ハイブリッド)、ミドシップに搭載するエンジンとその後方にある8速DCTとの間に最高出力167psのモーターを搭載する。F1で使用するモーターから派生したユニットのため、F1での呼称と同様、フェラーリは「MGU-K」と呼ぶ。システム総出力は830ps(610kW)に達する。

近年のスーパースポーツカーの例に漏れず、296GTBはモーターのみの動力で走行出来る。容量7.45kWhのバッテリーがフル充電の状態で最長25kmまでモーターのみで走れる。モーター走行の最高速度は135km/hだ。住宅街では静かに走り、郊外に出たらエンジンに息を吹き込んで官能的なサウンドを楽しむ……という電動化時代にふさわしいスマートな使い分けが可能だ。V型6気筒ながら、独自のチューニングにより自然吸気V型12気筒エンジンが奏でる高周波音を実現したと主張している点にも注目したい。

次回は空力性能の向上について解説する。

文・世良耕太

こんな記事も読まれています

「メーカー公認」で丸目換装!! ランクル250の激推しオプションを見逃すな なぜか不遇の「GX」も泣けるぞ
「メーカー公認」で丸目換装!! ランクル250の激推しオプションを見逃すな なぜか不遇の「GX」も泣けるぞ
ベストカーWeb
ヤマハの電アシ「PAS Brace」 日常使いしやすいスポーティコミューターの2024年モデルを発売
ヤマハの電アシ「PAS Brace」 日常使いしやすいスポーティコミューターの2024年モデルを発売
バイクのニュース
ホンダ新型「オシャレ軽商用バン」発売! エレガントな進化に早くも反響!? 130万円台で買える改良「N-VAN」が登場
ホンダ新型「オシャレ軽商用バン」発売! エレガントな進化に早くも反響!? 130万円台で買える改良「N-VAN」が登場
くるまのニュース
JSR、産業革新投資機構によるTOBが成立 2024年夏にも上場廃止
JSR、産業革新投資機構によるTOBが成立 2024年夏にも上場廃止
日刊自動車新聞
ゲレヴァー好きですか?レストアされたレアなオフローダー「メルセデス 300 GD」で冒険の旅へ、150万キロ感動の物語
ゲレヴァー好きですか?レストアされたレアなオフローダー「メルセデス 300 GD」で冒険の旅へ、150万キロ感動の物語
AutoBild Japan
アルピーヌF1、中国GPで新"軽量版"シャシー投入&フロアアップデートも実施……最下位脱出に向け奮闘中
アルピーヌF1、中国GPで新"軽量版"シャシー投入&フロアアップデートも実施……最下位脱出に向け奮闘中
motorsport.com 日本版
【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能
【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能
カー・アンド・ドライバー
渋滞へトラックが「ノーブレーキ突入」衝撃の映像!? NEXCO緊急の注意喚起が話題に「運転の上手い人はこんなことしません!」
渋滞へトラックが「ノーブレーキ突入」衝撃の映像!? NEXCO緊急の注意喚起が話題に「運転の上手い人はこんなことしません!」
くるまのニュース
ついにランクル250正式発表520万円から!! 争奪戦必至もやっぱり欲しいーー今日ランクルに新たな歴史が始まる
ついにランクル250正式発表520万円から!! 争奪戦必至もやっぱり欲しいーー今日ランクルに新たな歴史が始まる
ベストカーWeb
MINIの小型電動クロスオーバー『エースマン』がデビューへ…北京モーターショー2024
MINIの小型電動クロスオーバー『エースマン』がデビューへ…北京モーターショー2024
レスポンス
バイク「満タン航続距離ランキングトップ10 2024】10位でも500kmは余裕、1位は600kmオーバー!125から大型車までの大混戦に
バイク「満タン航続距離ランキングトップ10 2024】10位でも500kmは余裕、1位は600kmオーバー!125から大型車までの大混戦に
モーサイ
レクサスが「1泊10万円」のキャンプを発表! レクサス新型「GX」の展示&試乗もある非日常体験!? 6月に開催へ
レクサスが「1泊10万円」のキャンプを発表! レクサス新型「GX」の展示&試乗もある非日常体験!? 6月に開催へ
VAGUE
新車もセルフレジ的な販売にするしかない? トヨタのディーラー従業員に「一律1万円支給」に見る新車販売現場の深刻な現状
新車もセルフレジ的な販売にするしかない? トヨタのディーラー従業員に「一律1万円支給」に見る新車販売現場の深刻な現状
WEB CARTOP
レクサスが「LC500」「RC F」を販売終了!? ひっそり姿消していた…? 自然吸気V8・2ドアクーペに何が? 英国から欧州、日本に広がるか
レクサスが「LC500」「RC F」を販売終了!? ひっそり姿消していた…? 自然吸気V8・2ドアクーペに何が? 英国から欧州、日本に広がるか
くるまのニュース
小さくても手抜きなし! 全面進化した小排気量モトクロッサーKTM「65 SX」発売
小さくても手抜きなし! 全面進化した小排気量モトクロッサーKTM「65 SX」発売
バイクのニュース
[カーオーディオ 逸品探究]アルパインの自信作、「Xプレミアムサウンドスピーカー」の実力は…
[カーオーディオ 逸品探究]アルパインの自信作、「Xプレミアムサウンドスピーカー」の実力は…
レスポンス
ジープ グランドチェロキー SRT8は 圧倒的なオーラを放っていた【10年ひと昔の新車】
ジープ グランドチェロキー SRT8は 圧倒的なオーラを放っていた【10年ひと昔の新車】
Webモーターマガジン
スズキ「新型スイフト“セダン”」!? 精悍顔「コンパクトセダン」は意外と現実的! 次期型「ディザイア」なCGがスゴイ
スズキ「新型スイフト“セダン”」!? 精悍顔「コンパクトセダン」は意外と現実的! 次期型「ディザイア」なCGがスゴイ
くるまのニュース

みんなのコメント

6件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村