万博発の定着インフラ
2025年4月13日から約半年間にわたり、「大阪・関西万博」が開催されている。
【画像】「なんとぉぉぉぉ!」 これが40年前「夢洲」です! 画像で見る(10枚)
今回の万博では、大阪メトロ中央線に宇宙船をイメージした新型車両「400系」が導入された。路線は会場近くに新設された夢洲駅まで延伸されている。
このように、博覧会をきっかけに誕生した、あるいは日本で初めて登場した交通手段は少なくない。
本稿は、そのなかでも今では当たり前のように使われているが、実は「博覧会がきっかけ」で登場したとはあまり知られていない、意外な乗り物たちを紹介する。
電車・モノレールも「博覧会が日本初上陸」
最初に述べたとおり、大阪・関西万博に合わせて、大阪メトロ中央線は延伸され、新型車両も導入された。博覧会には、こうした交通網の整備がつきものだ。
実は、日本初の一般営業電車も、博覧会へのアクセスを目的に生まれたものだった。
その電車とは、京都市内を走っていた路面電車「京都電気鉄道(京電)」である。京電が設立されたのは1894(明治27)年。翌1895年に京都・岡崎で、平安遷都1100年を記念した「第4回内国勧業博覧会」が開かれることを受けた動きだった。
京電の運行に必要な電力は、琵琶湖疎水を活用した日本初の営業用水力発電所「蹴上発電所」(1891年運転開始)から引かれた。博覧会の開幕にあわせ、伏見から官営鉄道の京都駅南側、そして京都駅北側から博覧会場のある岡崎までの路線が開通した。さらに同年末までに、府庁を経由して堀川方面へ至る路線も次々と整備された。
当時は、大阪方面から船で伏見に到着し、そこから電車に乗り換えて京都市内へ向かう人も多かったという。
入場者113万人の経済波及
第4回内国勧業博覧会の入場者数は約113万人にのぼった。博覧会をきっかけに開業した京電は、1918(大正7)年に京都市電と合併。路線網の再編を経て、1970年代まで京都市民の足として活躍し続けた。
また、博覧会の目玉として建てられた平安神宮は、平安京大内裏の正庁・朝堂院を模したものだった。現在も京都を代表する神社のひとつである。ただし、本殿部分は1976(昭和51)年に活動家の爆破で全焼し、再建された建物は一部の規模や形が異なっている。博覧会の会場跡地は現在・岡崎公園となり、当時の門柱がモニュメントとして残されている。
ところで、日本初の一般営業電車は京都だったが、日本初の電車が走ったのは京都ではなかった。その登場もやはり博覧会がきっかけだった。
京電の開通から5年前、1890(明治23)年に東京・上野公園で開かれた第3回内国勧業博覧会。この博覧会のアトラクションのひとつとして、東京電燈(現在の東京電力)の手で電車が運行された。
ちなみに、このとき使われた日本初の電車車両は長らく保存されていたが、残念ながら東京大空襲によって焼失してしまった。
AGTとリニモの定着路線
博覧会がきっかけで日本に初登場した鉄道は、電車(路面電車)だけではない。
例えば、日本初のモノレールは1928(昭和3)年に登場した。昭和天皇の即位礼を記念し、大阪・天王寺公園などで開かれた大礼奉祝交通電気博覧会のアトラクションとして設置されたものだった。当時は空中飛行電車と呼ばれていた。
一般営業用のモノレールが国内で誕生したのはそれから約30年後、1957年に開通した上野モノレール(2023年に廃止)である。
また、ゆりかもめのようにゴムタイヤで走る案内軌条式鉄道(AGT = オートガイドウェイトランジット)も、博覧会をきっかけに登場している。
日本初の一般営業新交通システムであるポートライナー(神戸新交通)は、1981年の神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81)に合わせて開業した。
さらに、日本初の一般営業リニアモーターカーであるリニモ(愛知高速交通東部丘陵線)は、2005(平成17)年の愛知万博(愛・地球博)の会場アクセス路線として登場した。
これら2路線はいずれも現在も営業を続けており、通勤・通学などに欠かせない地域の交通手段となっている。
生活に欠かせないあのモビリティも「博覧会が日本初上陸」
博覧会がきっかけで日本に初上陸したモビリティは、電車やモノレールといった鉄道だけにとどまらない。
いまや生活に欠かせない電動式エレベーターが日本で初めて登場したのは、1890年に開業した日本初の高層展望塔「浅草凌雲閣」だった。この日本初の電動エレベーターが設置された凌雲閣は、パビリオンではなかったが、先に紹介した第3回内国勧業博覧会からの来場者を見込んで建設された。
さらに、日本初のエスカレーターと動く歩道(ムービングウォーク)も博覧会で初登場している。
日本初のエスカレーターが設置されたのは、1914(大正3)年に開催された東京大正博覧会の会場だった。会場内と、第一会場と第二会場をつなぐルートの2か所に設置されていた。そのうち、ふたつの会場を結ぶ屋外エスカレーターの途中には、平面状の動く歩道が設けられていたという。
この博覧会の終了後、同年10月には日本橋三越本店にもエスカレーターが設置された。商業施設内のフロアを結ぶ、現在と同じようなかたちでの導入だった。
「観光客に人気の乗り物」も博覧会が発祥だった
ここまでは、博覧会がきっかけで日本に初上陸し、その後、生活に欠かせない存在となったモビリティを紹介してきた。しかし、博覧会から生まれた乗り物のなかには、それらとは異なる少し風変わりなものもある。例えば、はとバスなどに代表される「女性バスガイド付き観光バス」も、その誕生は博覧会がきっかけだった。
女性バスガイドによる観光バスが登場したのは1928(昭和3)年のこと。大分県別府市で旅館・亀の井旅館(現・亀の井ホテル)を営んでいた油屋熊八が、別府公園で開かれた中外産業博覧会に合わせ、バス事業・亀の井自動車(現・亀の井バス)を立ち上げた。博覧会への来場者向けに、少女車掌付き遊覧バスとして定期運行を開始したのがはじまりだった。
女性バスガイドは大きな人気を集め、同年には東京乗合自動車(のちに東京市営バスに合併、現・都営バス)も導入。その後、全国に広まっていった。亀の井バスの定期観光バスは、博覧会から約100年が経った現在も運行を続けている。地獄めぐりにちなみ、鬼をかたどった専用車両は、関連グッズが販売されるほどの人気となっている。
博覧会をきっかけに地域のシンボルとなった観光列車は、首都圏にも存在する。埼玉県の秩父鉄道を走るSL観光列車・SLパレオエクスプレスだ。この列車は、1988(昭和63)年に熊谷市で開催されたさいたま博の目玉のひとつとして運行が始まった。博覧会の跡地には、現在熊谷ラグビー場などを備えた熊谷スポーツ文化公園が整備されている。
けん引するSLは1944年製の「C58 363」。かつて埼玉県吹上町(現・鴻巣市)で静態保存されていたものを、JR東日本大宮工場(現・大宮車両センター)などで整備した。当初は博覧会会期中の期間限定運行の予定だったが、好評だったため運行が継続された。パレオエクスプレスという名称は、秩父地方に生息していたとされる海獣・パレオパラドキシアに由来する。かつて埼玉に海があったことを伝える名前でもある。
さいたま博から約40年が経った今も、SLパレオエクスプレスは秩父観光の象徴として親しまれている。牽引機の「C58 363」は、復活後の歴史のほうが長くなった。
博覧会は、最先端や次世代技術が集まる場である。そして、ここまで紹介してきたとおり、モビリティの発展とも密接な関係にある。大阪・関西万博では、実際に来場者が乗ることはできなかったものの、日本製の乗用ドローン(空飛ぶクルマ)「eVTOL」が初めて披露された。また、次世代モビリティをテーマとするパビリオン「ロボット&モビリティステーション」も設けられている。
近い将来、大阪・関西万博で紹介されたこれらの技術が、生活に欠かせない存在として街に根づく時代が来るかもしれない。
●参考文献
・大分県別府市 編(2025):「別府市誌」大分県別府市
・沖中忠順・福田静二(2000):「京都市電が走った街 今昔-古都の路面電車定点対比」 JTB
・橋爪紳也・乃村工藝社(2021):「博覧会の世紀」(展示図録)青幻社
・万博記念公園(大阪府吹田市)「EXPO’70 パビリオン」展示(若杉優貴(商業地理学者))
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1990年の鶴見緑地での花博に合わせ京橋⇔鶴見緑地間で開業。
日本初の鉄輪式リニアモーター方式(車体は通常の鉄の線路に鉄の車輪で支え動力はリニアモーター)
そして日本の営業車両では初の「く」の字、シングルアームパンタグラフを採用。