以前、CB1300スーパーボルドールを所有していた伊藤真一さん。その「SP」バージョンはかねてから気になるモデルで、念願かなってロングランチェック。想像以上の走りに「SP」の魅力を実感!
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり
伊藤真一 氏
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1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。写真のCBR1000RR-Rの開発ライダーも務めた。2020年から監督として「ケーヒン ホンダ ドリーム エス・アイ レーシング」を率いてJSB1000などに参戦!
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP」試乗インプレ(伊藤真一)
CB1300限定で作り上げられたオーリンズの威力! スポーツ性と乗り心地を高次元で両立させています
以前、CB1300SFを試乗したのは2018年でした。そのときに感じたのは、操縦安定性とパワーデリバリーが非常に洗練されていたことです。かつて、2006年モデルの限定赤フレームのスーパーボルドールを所有していた時期があるのですが、そのころのCB1300系とは別物と言えるくらい変わったな、と思いました。1300系初の「SP」モデルであるCB1300SF SPは、知人からとても出来が良いという話を聞いていたので、試乗できる日を楽しみにしていました。
CB1300SF SPの最大の特徴はブレンボ製フロントブレーキと、前後サスペンションに専用設計のオーリンズ製品を採用するところです。当然一番気になったのは、足まわりの違いでスタンダードのCB1300SFと走りがどう変わっているのか…でした。
今回のテストでは、市街地から始まり、高速道路、そして峠道と様々な道で走りをチェックしましたが、ビックリ仰天だったのは路面にギャップがないのでは? と思うくらい、CB1300SF SPの乗り心地が良いことでした。
魔法の絨毯みたい…というと、フワフワしてコシのない、昔の四輪サルーンみたいな乗り心地をイメージしてしまう方もいると思いますが、さすがにホンダがそんな感触の乗り物に「SP」と名前をつけることはないですよ(笑)。
よく言うオーリンズの乗り味ですが、ダンパーの「初期の動き」がとても良いです。オーリンズのサスが付いていてカッコイイ、というルックス面での価値もありますが、見た目の価値以上の本質的な価値の高さがありますね。
自分のような古い世代(笑)の人は、昔の絶版車に社外部品として購入したオーリンズのサスを付けた…いわゆるカスタムバイク好きの発想でSPを見てしまうかもしれませんが、このSPはメーカーが完成車として作ったバイクなので、カスタムバイクとは全く違う乗り物です。
SPのオーリンズ製サスペンションの中身や、設定の仕様を決めているのはホンダ側です。開発の経験が豊富なホンダの人たちは非常に腕が高くて、そういう開発者たちが減衰の設定など緻密な内容をオーリンズ側のスタッフと話し合って、素晴らしい仕上がりにまとめあげているわけです。
CB1300SF SPは、メーカーであるホンダと一流のサプライヤーであるオーリンズとブレンボが、時間とコストをかけて作ったバイクなので、スポーティかつ乗り心地の良い、完成度の高い足まわりになっています。
カスタムバイク好きの人は、このSPにぜひ試乗してそのまとまりの良さを味わって欲しいとも思いました。カスタムバイクを作るときの、ひとつの指標になるくらいのまとまりの良さが、このバイクにはあると思います。
2018年にCB1300SFのスタンダードに試乗したときも感じたことですが、自分が所有していたころのCB1300と今のCB1300のエンジンは別物ですね。2006年当時のCB1300はスロットル操作に対するレスポンスが開ければコッと飛び出し、閉じればガクっと止まる感じでしたが、現在のエンジンは「燃やし方」が非常に良く、スロットル操作でギクシャクするようなことは皆無です。
ただエンブレに対する自分の好みではありますが、もうちょっとエンブレが効く方が自分には合っています。前回の試乗でも感じましたが、今回はそのときよりはエンブレが効いている感じもしました。
でもまだ若干エンブレが弱く、スロットルを戻したときに「走りすぎる」感じがあります。あと、マフラーの音が以前試乗した1300より静かになった気もしました。前に乗った1300はバックファイアが多めでしたが、今回試乗した1300SF SPではなかったので、改善されているのでしょう。
ビッグネイキッドというカテゴリーを忘れ、走り込むうち、想定ライバルはCBR1000RR‐Rに!
CB1300系はアシストクラッチを採用していますが、少し初期が柔らかく、離れるときの反力がない印象で乗り初めは発進が上手くできませんでした。
アシストクラッチは操作の軽さに定評ありますが、もう少しどこで繋がるかが明確にわかるようにチューニングしてもらえると嬉しいです。エンブレとクラッチ以外はエンジンに関する不満は全くありません。燃費も良く、どの回転域でもディーゼルみたいにトルクがあり、ギアも6速あるので巡航がとても楽です。
車体について気になったことでは、峠を走ったときにブルブレーキをかけたら、ネックが捻れるような感じがしました。高速道路を走ったときも、わざと左右にハンドルを振るように切ると、ちょっとだけですが操舵に遅れを感じることがありました。
ハンドルまわりを観察すると、CB1300系はハンドルバーを固定するホルダーにラバーを介しているのですね。1300のスタンダードに乗ったときは感じなかったのですが、サスペンションとブレーキが良くなった分、CB1300SF SPでは、ラバーを介していることが感じられて、操作のダイレクト感が薄れて伝わっているのかもしれません。
ハンドルのホルダー部にラバーを介してトップブリッジに固定するのはオフロード車などにも多い手法で、衝撃や細かな振動を乗り手に伝えないメリットがあります。SPも同じ理由で採用しているのだと思いますが、テーパーバーをダイレクトマウントにして、ステアリングダンパーを付けたりして、ダイレクト感を増すようにしてみたらどうなんだろうか、と思ってしまいました。
もっともこれは、今回の試乗でのハイペースすぎる(笑)自分のような走り方で、CBR1000RR‐Rのようなリッタースーパースポーツを比較対象に思い描いた場合に限ってのインプレッションだと思います。
一般のライダーの方が、気になるようなことではないでしょう。高級な足まわり、そして特別なカラーリングとフィニッシュが与えられたCB1300SF SPはとても品質がよく、ホンダ製ネイキッドのフラッグシップにふさわしい仕上がりになっていると思います。所有欲を満足させる1台ですね。
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP」のサスペンションは何がすごい?
スタンダードでも優秀な操縦安定性なのに、SPでは“別物”と感じさせる!
前回スタンダードに試乗したときは、操安性の良さに大変関心しました。全く不満がないので、前後サスペンションの設定を変えることなく乗ってましたね。
今回のSPでは、ハイスピードコーナーの多いワインディングも走りましたが、その際はリア側をちょっと硬くして、フロント側がもうちょっと入るようなセッティングを試したりしました。
SP用のオーリンズ製サスペンションは前後ともに調整範囲がスタンダードに比べて広く、セッティングを変えることで走りが結構変わります。セッティングをいじる楽しさがあるので、その辺にこだわりたいタイプのライダーにはとても向いているモデルかな、と思いました。
スタンダードのCB1300SFも非常に良いモデルですが、やはりSPは"別物"ですね。
SPに採用された専用のオーリンズ製フロントフォークは倒立式ではなくて正立式ですが、走らせているときにフォークを倒立式にしていたら、ハンドリングはどうなっていたのだろう、とか思ったりしました。
車両全体のスタイリング的なまとまりのことや、フロントまわりの剛性をガチガチにしちゃうと走行フィーリングがあまり良くないとか、いろんな意味があってこのインナーチューブ径43mmの専用設計の正立式フォークを採用したのでしょうね。
スタンダードとSPの価格差は37万4000円ですが、専用のオーリンズ製前後サスペンションとフロント側ブレンボ製キャリパーが付いていてこの価格差ですから、ホンダの大型ネイキッドの中では一番高価となりますが、お買い得なモデルだと思います。
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP」の特別なブレーキのフィーリングは?
高級感あるタッチやハイスピード対応に優れるSP専用のブレンボ製キャリパー
スタンダードのフロントブレーキとSP用のブレンボを比べてみると、やはりブレンボの方がタッチが良くて、感触にも高級感があります。以前スタンダードに乗ったとき、ABSの効き方や制御、そして制動力やコントロール性が良いなと思いましたが、ハイペースで走ってブレーキを酷使すると、パッドの離れが悪くなり、ABS介入が早くなるフィーリングがありました。
今回は、そのときよりもハイペースでブレーキングを試しましたが、ブレンボではそのような現象はなかったです。これはかなり酷使した場合での話で、一般の方ならスタンダードでも何ら不満はないでしょう。それでもブレンボのブレーキは、魅力的な装備に違いありませんね
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP」各部装備・ディテール解説
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP」足つき性・ライディングポジション
CB1300 SUPER FOUR SPのシート高:790mm
ライダーの身長:179cm/パッセンジャーの身長:173cm
スタンダードのCB1300SFに対し、SPは足まわりの変更に伴い、全高、シート高、最低地上高がそれぞれ10mmアップ。「ライディングポジションはとても自然で、足着き性もとても良いですね。街乗りでもツーリングでも、疲労度は非常に少ないです」と伊藤さん。
タンデムシートの座り心地については、ステップ位置、グラブレール位置ともに快適な設定であるとは大関さおりさんの評価。SPはソロではもちろん、タンデム走行を楽しみたい人にも適した1台と言えるでしょう。
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり
ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP」主なスペックと価格
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みんなのコメント
今乗ってるBMW、今年新車で買ったが日本のメーカーの原チャでも起こらない事が起こるw
本当に日本の4大メーカーは素晴らしいわ
短く薄いテールに、かっこ悪く後ろに伸びたリアフェンダーは、流行なんだろうけど。