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【時代を魅了したクルマたち】みんな「パイクカー」が大好きだった

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【時代を魅了したクルマたち】みんな「パイクカー」が大好きだった

クルマの進化と共に移り変わるデザインのトレンドだが、今も登場時から変わらず愛され続け、定期的に復活を望む声が上がるシリーズが日産にあった。それは特別な存在として「パイクカー」と呼ばれた一連のクルマたちだ。新しいのにどこか懐かしい。そんな心に響くデザインのクルマが今、あるだろうか。以下、当時を振り返りつつ紹介したい。

文:大音安弘

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■遊び心から生まれた大ヒット

1980年代の自動車シーンでは、技術的にもハイテク化が進められるなど新たなものどんどん生み出そうとする気質に溢れていた。

そんななか、敢えてシンプルかつクラシック路線のクルマが送り出された。それが日産自動車のパイクカーシリーズ第一弾となる「Be-1」だった。

 

初代マーチをベースにシンプルだけど愛らしさ満点のスタイルが与えられたBe-1は、1985年の東京モーターショーで初公開され、大きな話題に。当初から市販化を目指していたものではなく、変わった車名もモデルがデザイン案BのNo.1だったことに由来する。

元々はマーチのデザインスタディのひとつであった。Be-1の商品化は、製造の手間がかかるため少量生産を前提とし、限定1万台とした。が、発表直後に予約が殺到。急遽抽選販売されることになる。それでも、どうしても手に入れたいというユーザーの多さから、一時はとんでもないプレミアム価格が付けられた。これが大量生産を前提とせず、遊び心優先した、とんがったクルマづくりである日産の「パイクカー」シリーズのスタートとなった。

日産は、1987年の東京モーターショーではPAOを発表。パイクカー第2弾として、1989年に発売。PAOは台数制限をせず3か月の期間限定受注としたが、その受注数は5万1657台にも上り、納期は最長1年半まで伸びた。そして、トリとなる第3弾のフィガロは、1991年に限定2万台で発売。今回は、抽選方式がとられた。

■軽レトロブームを呼ぶ

バブル崩壊を受け、手間の暇の掛かる日産のパイクカーシリーズは終了を迎えるが、この流れはレトロ調デザインを取り入れた軽自動車ブームに繋がっていく。

そのブームきっかけとなったのが、1995年11月にスバル ヴィヴィオの派生モデル「ビストロ」シリーズの追加だ。

ノーマルとは異なる丸目ライトとクラシカルなグリルとバンパーのレトロスタイルは、女性に受け、瞬く間にヴィヴィオの人気仕様となる。これを他社もこれに追従。オプティクラシック、アルトC、セルボC、ミニカタウンビーなどを続々と投入。スバルも、プレオ・ネスタ、サンバー・ディアス・クラシックと設定を拡大する。

その中でも、ヒット作となったのは、ダイハツのミラジーノ。元々プレーンなデザインのミラはレトロデザインと相性が良く、クラシックミニを彷彿させるスタイルが人気を呼ぶ。この流れは、小型車にも派生するが、こちらはあまり成功にはつながらず。結果的にレトロデザインが溢れたことが、パイクカーブーム終焉へと繋がってしまう。

■今こそ、パイクカーを!

すっかり下火となったパイクカーだが、今なおパイクカーを作りづづけているメーカーがある。それが10番目の国産自働車メーカーの光岡自動車だ。

国産車をベースに専用の前後マスクと内装の装飾を施したオリジナルカーを作りづづけており、NC型ロードスターベースのヒミコ、カローラベースのリュウウギ、ティアナベースのガリュー、そして最大のヒットであるマーチベースのビュートがある。

小規模メーカーだけに、かつての日産のパイクカーのような作り込みまでは叶わないが、その独自のスタイルと個性を支持するファンは一定数いて、同社のクルマ作りを支える原動力ともなっている。生産技術の進歩とデザインのトレンドにより、クールな表情のクルマが溢れるようになった今。長く過ごせる愛嬌たっぷりのパイクカーの恋しくなっている人も多いはず。流行りだけを追わない普遍的な価値のあるクルマが各社から送りだれることが期待される。

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