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3戦連続で優勝逃した”チャンピオン候補”ランド・ノリス。自己批判の姿勢で、扱いにくいMCL39を手なづけられるか?

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3戦連続で優勝逃した”チャンピオン候補”ランド・ノリス。自己批判の姿勢で、扱いにくいMCL39を手なづけられるか?

「時々、言い訳できることもある。でも、その言い訳を使って誇らしく感じたことは一度もない。そして95%のケースで、『もっと上手くやれたはずだ』と思うんだ」

 これはランド・ノリス(マクラーレン)の言葉……今年の日本GP前に行なわれたインタビューの時のモノである。彼がこれを語ってから約1ヵ月。その間に数々の出来事があり、この言葉は一層の重みを持つようになった。日本GPからの3連戦で、いずれも優勝を逃してしまうことになったのだ。

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 ノリスが常に自己反省のループの中で生きているというのは、むしろ当然のことかもしれない。多くの批判する声を押しのけ、自ら進んで自分の欠点を分析しようとするその姿勢は、エリートアスリートにとって「何が自分にとって機能するか」が最も重要だという事実を裏付けている。

 20歳未満でF1に到達したドライバーは、その成長の大半を人前で晒されながら経験する。注目、プレッシャー、周囲の干渉に晒されながらだ。ジェンソン・バトンはF1デビューから7年後にようやく初勝利を挙げたが、それからの2年半もまた勝利とは無縁だった。

 2000年、20歳のバトンは当時最年少のイギリス人F1ドライバーとしてデビューし、異常なほどの期待を集めた。彼は「ニュー・ラッド(若者文化)」時代の象徴でもあり、ファッション誌やスポーツ紙の表紙を飾った。だが名声を楽しんだ末に、期待を裏切れば一転して非難の対象になるという現実を痛感することとなった。

 ノリスはそれとは異なる道を歩んだ。初期は競争力の乏しいマクラーレンのマシンに悩まされつつも、「国家の希望」を一身に背負うようなことはなかった。しかしNetflixの影響によってF1がよりグローバルでパーソナルなスポーツへと変化したことで、ノリスに対する期待も変わった。

 昨年のマイアミGPで、友人でもあるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の長期支配に、ファンが半ば飽き始めていた中、ノリスはF1初優勝を飾った。そしてそのことが、新たな「タイトル挑戦者」という役割を彼に与えた。

 今やマクラーレンはグリッド最速のマシンを手にしている。だがそのマシンには癖もあり、常に最高のパフォーマンスを発揮できるとは限らない。レースペースではチームメイトのオスカー・ピアストリに対して優位に立つことも多いノリスだが、予選では完璧な1周をまとめるのに苦しんでいる。上位勢の差がごく僅かな2025年シーズンでは、それが命取りになる。

 ノリスの目立つミスと、それに続く自己批判的な態度は、感情表現を「男らしくない」と感じる一部の批判者にとって格好の攻撃材料となっている。

■誰でもミスはする

 興味深いのは、17歳でF1デビューしたマックス・フェルスタッペンもまた、ミスを繰り返しながら頂点へ登り詰めた。時間とともに、そしてタイトルを4度も獲得した今では、そうしたミスも「過去の小さな出来事」として忘れ去られている。

 今では信じられないかもしれないが、2017年のハンガリーGPでは、フェルスタッペンがチームメイトのダニエル・リカルドを1周目にリタイアさせたことで謝罪している。翌年のバクーではふたりが接触し揃ってリタイアしたが、その責任の所在はさらに曖昧だった。

 2017年のアメリカGPでは、予選後に自身のパフォーマンスを「今季最悪」と語り、2018年のモナコではスイミングプール出口でクラッシュして予選に出られず、涙を流したと伝えられている(ヘルムート・マルコ談)。他にも2018年序盤には、前出のバクーでの接触、バーレーンや中国でのベッテルやハミルトンとの接触、オーストラリアでのスピンなど、数多くのミスを犯している。

 ノリスはF1公式のインタビューでこう語る。

「僕はいつも自分に厳しいんだ」

 そうノリスは言う。

「他の誰か……チームやメカニック、マシンやセットアップなどを責めることはまずない。その代わりに、自分を追い込んでいる。僕はそういう人間なんだ」

「もちろんその考え方には良し悪しがある。自分を見つめ直すことは良い面もあるし、自己を理解したり改善する力にもなる。でも、時にネガティブなスパイラルに入ってしまうこともある。それが悪い面だ」

 フェルスタッペンとノリスは同じような課題を抱えていると言える。しかし、それに対するアプローチは異なっている。

 フェルスタッペンにとっての課題はマシンだ。レッドブルはRB21の開発で、シミュレーションツールと実際のマシンとの間にデータの齟齬があると認めており、その影響で挙動に不確実性が生じている。だからこそ、彼の立場も理解できる。

 一方、ノリスのMCL39はサーキットごとの挙動は比較的一貫しているが、限界域での扱いにくさがあり、それに自身のドライビングを適応させようとする中で操作の反応が遅れてしまうような傾向が見られる。

■問題の本質を掴む

 サウジアラビアGP後、Q3でクラッシュし10番グリッドスタートとなったノリスについて、チーム代表アンドレア・ステラは次のように述べている。

「Q3では、ランドがあとわずか数ミリ秒を絞り出そうとした時、我々のデータからも分かるように、クルマが彼の期待通りに反応しなかった。その挙動は彼にとって予想外だった。これまでの開発の中で速さを手に入れた一方で、予測可能性という点では何かを失ってしまったのかもしれない」

 MCL39は高いグリップを持つものの、その限界を越えた瞬間に急激に失われるという特性があり、それが問題の根源となっている。

「グリップがあると思ったら、1km/h速く走っただけで突然消えるんだ。その移行が非常に鋭く、ドライバーが限界を読み取るためのフィードバックも弱い。そのため、感覚ではなく“推測”で走らざるを得ないんだ」

 ピアストリの方がこの「推測」に長けているのか、それとも単に無理をしていないのか……それについてはステラ代表も公には語らない。しかし、2025年シーズンの現状を踏まえれば、ノリスが自らのミスを減らすためには、このマシン特性を受け入れ、理解することが必要だ。

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