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1980年代にヒットした懐かしの“ハイソカー”5選

掲載 更新 13
1980年代にヒットした懐かしの“ハイソカー”5選

1980年代に話題を集めた国産高級車、通称“ハイソカー(High Society Car)”のなかから、印象的な5台を小川フミオがセレクトした。

クルマがひとを語ることがある。どんなクルマに乗るかは、たいせつな”自己表現”。とりわけ、スポーツカーやSUVを選ぶひとなら、そんなことを意識しているかもしれない。1980年代に大きなブームを巻き起こした”ハイソカー”に求められた役割は、まさにそれ。

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女性にとってのシャネル・スーツやエルメスのバッグと似ている、というと語弊がありそう。でも、ファッションとクルマは似ているところがある。「ファッションほど自分を表現するのに強い道具はない」。英『GQ』への寄稿でも知られるデザイン史家スティーブン・ベイリーは著書『Taste』(1991年)で書いている。おなじような考えがクルマに適用できる場合だってあるのだ。

“ハイソサエティ”(高所得者ぐらいの意味)を略して、ちょっと揶揄(やゆ)したようなひびきがウケたのが、1980年代から1990年代初頭にかけての“ハイソ”カーだ。たとえばトヨタ「マークII」(上級車種で200万円超)に乗っていれば、年収的には「カローラII」(100万円前後)でも、マークIIに乗る男に変身できたのである。

このクルマのどこが”ハイソ”なのか。定義するのは、とてもむずかしい。ただし、ひとつ言えるのは、当時の”高級”の概念を、ちょっと無理すれば手の届く価格で実現した商品性が、おおきな魅力だったのだ。

当時の自動車ファンがクルマに求めるぜいたくさは、わかりやすかった。いまのように”植物由来の素材を使った内装のほうがレザーより考えかたが上質”なんて、ちょっとむずかしいことは誰も言わない。内装だけとっても、米国や英国のアッパーミドルクラスセダンのような、キラキラしていたりふかふかしていたり、そんな雰囲気が“ハイソ”だったのである。人気のあった車体色は白。保守性もハイソカーのもうひとつの特徴だ。

いまの眼からみても、惹きつけられる点がある。それはいってみれば、情熱だ。自社のプロダクトアイデンティティを守りつつ、いかにおおぜいの消費者にウケる世界観を作りだすか……どのメーカーも一所懸命だった。当時のクルマがいまも強い存在感を持つのは、売れるクルマを作りたい、という熱い思いのせいであると思う。

(1)トヨタ・マークII(4代目)

トヨタのラインナップで個人ユーザー向けとしては頂点に位置づけられてきた「クラウン」。それと遜色ないレベルに”成長”したのが1980年発表の4代目「(コロナ)マークII」だ。

マークIIは、そもそも1968年に「コロナ・マークII」として登場。当時のトヨタのラインナップでは、コロナがあって、そのうえがクラウン。消費者に購買力がついてきた時代にあって、選択肢が多いほうがいいという判断の下、上記2車のあいだのギャップを埋める商品として開発された。

私がおもしろいなぁ、と、ずっと思ってきたのは、そもそもオリジナルの車名のコロナ・マークIIというのが、ちょっと消極的な印象である点だ。ここでとりあげる4代目まではコロナ・マークIIが正式車名であったものの、市場ではマークIIとだけ呼ばれるようになっていた。この後、1984年の5代目から、車名はマークIIになり、この名で1990年代までモデルチェンジを繰り返した。なんのマークIIだか、もはやわからなくなっていたのだが。

はなしを4代目に戻そう。このクルマがトヨタにとって、最初のハイソカーである。もちろん外部からの定義なのだけれど。全長4.6mという伸びやかな全長に、エレガンスさと同時に、クラウンには乏しい若々しさを感じさせる雰囲気がおおきな魅力だ。4ドア・ハードトップのキャビンがパーソナルさうまく演出。いっきに広い層の人気を獲得した。

内装は米国車の影響を強く感じさせる。1970年代の日本の”高級”車のテイストをひっぱったもので、シートは、いかにも”アンコ”をたくさん詰めましたとでもいわんばかりの、ソフトなクッションが売りもののぶ厚いものだった。

カラーも米国人が好むバーガンディ(ブルゴーニュワインのレッド)などだった。

(2)トヨタ・クレスタ(初代)

1980年に初代が登場したトヨタ「クレスタ」。(コロナ)マークII3兄弟として、チェイサーとともに開発されており、クレスタは、おなじ1980年に作られたトヨタのあたらしい販売チャネル「ビスタ店」のために作られたブランドである。

ハイソカーの条件としてパーソナル性を重視するなら、マークIIよりクレスタのほうがふさわしい。なぜなら、マークIIには、フツウの4ドア・ボディも存在したいっぽうで、クレスタは4ドア・ハードトップのみだったから。

日産「スカイライン」対策ともいわれたクレスタ。エンジンは1.8リッター4気筒と、2.0リッター直列6気筒が用意され、パワフルであることもアピール。のちにターボ車も追加設定されている。

クレスタとスカイラインがちがうのは、スカイライン(1977年発表の通称「ジャパン」)ではルーフの前後長を思いきり短くしたクーペがあったのに対して、トヨタはあくまで後席の居住性も重視していたことだ。

今回じっくりクレスタの写真を眺めていて当時の自分がこのクルマに抱いていた感想を思い出した。結局、ハイソカーってオジサンくさい、というものだ。ただしあのころハイソカーに憧れた(若い)世代にとって、セダンの落ち着きもまた、ひとつの魅力だったのは事実。若年層といえばスポーティなモデルを求めるのが相場だという”常識”を覆すような、ユニークな価値観がハイソカー人気を支えていたのだ。

(3)日産・ローレル(4代目)

日産「ローレル」は、コロナ・マークII同様、車種間のギャップを埋めるために作られたモデルだった。1968年に登場したときは、セドリックとブルーバードのあいだに、まだニッチ(すきま)があるだろうという経営陣の読みに応えてのものだった。

1980年に4代目が発表されたとき、ローレルの位置づけはもっと明確である。使命は、スカイラインを買う人よりもうすこし年配の人の層へのアピールをはかること。基本コンポーネンツはスカイラインと共用だったため、このクルマを開発したエンジニア、桜井真一郎氏がローレルも担当したのが話題になっていたものだ。

製品の位置づけはアッパーミドルクラスなので、後席を重視した4ドア版が、4ドアハードトップと並行して作られた。嫌みのないクリーンなスタイリングが特徴だったので、4ドア版もなかなかパーソナル性が強く魅力があった。

でも圧倒的に存在感があったのは、センターピラーをもたない日産ならではの4ドア・ハードトップだ。

エンジン・ラインナップは豊富で、「L型」エンジンの4気筒と6気筒が中心。のちにターボ仕様も設定され、2.8リッターと入れ替わった。パワフルなエンジンだったのに対し、サスペンションの設定はソフトで、バランスがよくないと当時は感じたものだ。

でも4ドア・ハードトップの神通力は偉大で、ハイソカーとして人気が高かった。

(4)日産・レパード(初代)

“グラスキャビン”とも言われたほど、ガラス面積の大きなキャビンをもつ4ドアと、太いリアクオーターピラーが印象的な2ドアというスタイリングコンセプトで、いまでも忘れられない個性を発揮したのが、1980年発表の初代「レパード」だ。

ブルーバード(910型)の上級車種という位置づけだったものの、方向性はまったく異なってみえ、なににも似ていないことをパーソナル性ととらえた、欧州メーカーのような考えかたで開発されたと思えたのが印象的だ。

ボディは全長4.6mと余裕あるサイズで、室内には大きくてぶ厚いシート。

ダッシュボードなどは、従来の米国車的な、明るい色調の直線基調のデザインで、これはデビュー時のレパードの印象に反してあたらしさに乏しかった。これは残念だった点。

4ドアにしても2ドアにしても、デザインが大胆すぎて、市場で評価されるのだろうかと思ったものの、ふたを開けてみれば、300万円になんなんとする価格にもかかわらずそれなりにヒットした。

同じ時期に登場したソアラにこそ敵わなかったものの、白いボディのレパードを路上で見かける機会は多かった。

(5)ホンダ・レジェンド(初代)

1985年に初代「レジェンド」が発表されたとき、ホンダ初のプレスティッジセダンとして大いに話題になったものだ。ユニークだったのは、ホイールベースが国内では最長クラスの2760mmもありながら、前輪駆動だったこと。前輪駆動かミドシップというホンダのこだわりが感じられたものだ。

乗り心地はすこし硬かったような記憶があるものの、2.5リッターV6エンジンはトルクもたっぷりでよく走った。しかもよくまわる。1985年はウィリアムズ・ホンダがF1選手権において、第6戦のデトロイトGPで勝利したのち、第14戦(ヨーロッパGP)、15戦(南アGP)、16戦(豪州GP)で3連勝をかざった年。その印象とレジェンドとが重なり、まさに注目のセダンであった。

当時ホンダが提携関係にあった英ローバー・グループとの共同開発車ということもあってか(デザインは2社が独立して行った)、欧州的にクリーン。欧州車好きは高く評価したものの、トヨタや日産のセダン好きには物足りなく思えたのも事実だ。

エンジンは1987年に2.7リッターに換装。このときサスペンションも変更されるという大きなマイナーチェンジを受けている。ホンダ車のユニークなところは、フラッグシップのレジェンドであっても、前輪駆動、コンパクトなエンジン(による操縦性の追求)、ダブルウィッシュボーン式サスペンション(によるノーズ高の低さ)など、他のモデルと同様のコンセプトを守っている点にある。

ちょっと難解なハイソカーであった。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

13件
  • クレスタ、かっちょええ〜
  • 懐かしい
    うちの車、GX61マークⅡだった。
    その後81になったけど61が圧倒的にカッコ良かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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