2019年のジュネーブ国際自動車ショーでブガッティが初公開したのは税抜き1100万ユーロ、日本円で約13億8600万円のスーパースポーツ「ラ・ボワチュール・ノワール」だ。伝説的な戦前のモデル名を復活させた理由はいかに……デザインディレクターのアヒム・アッシャイム氏にインタビューした。
氏は、2019年はブガッティにとって記念すべき年という。なぜなら、創業110周年を迎えるからだ。そこでブガッティは、ジュネーブショーに「Chiron Sport 110 ans Bugatti(シロン・スポーツ110アン・ブガッティ)」なる20台限定モデルも持ち込んだ。
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フランス語で110年を意味する「110 ans」をサブネームに持つスペシャルは、フランス・アルザス地方のモルスハイムをクルマづくりの本拠にしてきた歴史を記念し、フランス国旗の3色をカーボンファイバー製のボディやインテリアの各所に配している。
話を、スペシャルモデル「La Voiture Noire(ラ・ボワチュール・ノワール)」に戻そう。今回お披露目されたのはモックアップモデルで、このさき2年以上かけて実車を仕上げるという。つまり、市販化前提のコンセプトカーであるのだ。
アヒム・アンシャイト氏は、フォルクスワーゲン傘下として、1998年に再スタートした現在のブガッティ・オートモビルSASに2003年に入社した。「ラ・ボワチュール・ノワールはずっとあたためていたプロジェクトです。(ステファン)ヴィンケルマンが(2017年秋にブガッティ・オートモビルSASの)プレジデントになって、私たちのプロジェクトにゴーサインを出してくれました」。
ブガッティのブースで嬉しそうに話すアンシャイト氏は、ポルシェのスタイリングセンターを振り出しに、スペイン・シッチャス(バルセロナ近郊)とドイツ・ポツダムにあるフォルクスワーゲンのアドバンスデザインスタジオで働いてきた経歴を持つ。また、個人的に1981年型のポルシェ 911SCを所有するだけあって、クルマに深い愛情を抱いている。
今回展示されたラ・ボワチュール・ノワールは、創設者のエットーレ・ブガッティの息子・ジャン・ブガッティ(1909ー39年)が乗っていた黒色の「タイプ57SCアトランティク」の愛称だった。
ジャン・ブガッティはクルマの設計者として、またレースドライバーとしても優れた才能を発揮した。そんな彼が愛したクルマが、唯一無二の存在をあらわす定冠詞つきの「ラ・ボワチュール・ノワール」というタイプ57SCアトランティクだったのだ。実車は戦前に行方不明になっており、まぼろしのクルマと言われている。
「(ラ・ボワチュール・ノワールの)スケッチをはじめたとき、57SCアトランティクを現代的な解釈で作ってみたいと思いました」
アンシャイト氏らのチームは(2019年3月の)半年前に、スケッチに着手し、それからわずか3カ月で顧客向けのバーチャルプレゼンテーションにまでこぎつけたという。
「このひとなら、と私たちが考えた顧客に見てもらいました。もしそのひとが買わないと言ったら、第2の候補と考えていました。幸い、即決だったので、今、プロジェクトは着々と進んでいます」
ラ・ボワチュール・ノワールは1台のみ生産されるワンオフモデルだ。次々と同じようなモデルを企画するのは厳しいようであるが、次回にも期待がもてる。
1100万ユーロのラ・ボワチュール・ノワールの購入を決めたひとは、今回のショーに展示された実物大のリアルなモデルを見ていなかったというのが興味ぶかい。なお、購入者に納車されるのは2年半後を予定する。
「(創業者である)エットーレ・ブガッティ(1881~1947年)の生き方や価値観をブランド全体に活かしたいと私たちは考えています。これにより、現在のブガッティは独自のセグメントを切り拓けたと思います。今のブガッティは路上を走るレースカーではなく、究極のグランツーリスモだからこそ、愛されているのです」
アンシャイト氏は続けて、「『ラ・ボワチュール・ノワール』のデザインは、『タイプ57SCアトランティク』以外にも、向かうところ敵なしだったレーシングカーの『タイプ35T』(1926年)と、超豪華リムジンの『タイプ41ロワイヤル』(1927年)の特徴も盛り込んでいます」と、言う。
「ブガッティはご存じのように特別なクルマです。だから、デザイナーに求められる要素もいろいろあると思っています。なかでも重要なのは、プロダクトエンジニアリングとデザインが“Win-Win”になるよう意識することですね」
この話を聞いて思い出したのは、2017年に「シロン」が静止状態から400km/hまでわずか32.6秒で到達したニュースだ。高性能なエンジンを搭載するシロンは、エクステリアも空力性能などを考えデザインされている。
「シロンを例にすると、ダウンフォースをはじめ、エンジンやブレーキの冷却性能や、空気の流れなども考えてデザインしなくてはなりません。デザイナーはこれら複雑な問題に対処しつつ、ブガッティらしいクルマに仕上げなくてはなりません。ブガッティのデザイナーは、スタイルの良さを求めるだけでなく、あらゆる要素を高次元で両立しなくてはならないのです」
なるほど、ラ・ボワチュール・ノワールのデザインも奥が深いのである。
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