スマートフォンなどを使用しながらクルマを走行させる「ながら運転」を厳罰化した改正道交法が、12月1日施行される。
2016年にはトラックの運転手が、運転中にスマホで「ポケモンGO」をプレイして、小学生をはねて死亡させるという事件も発生しており、ながら運転による交通事故を防止するため、罰則の強化が検討されてきた。
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警視庁の資料によると、ながら運転による事故件数は大幅に増加しており、10年前に1299件だった事故件数は、2018年には2790件と約2倍になっている。また、携帯電話使用時の死亡事故率は、未使用時の約2.1倍に増加するというデータも出されている。
今回は「ながら運転」での罰則がどのように厳しくなるのかから、普段の運転で気を付けるべき違反になる運転を取り上げていきたい。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock、編集部
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■12月1日から「ながら運転」で一発免停、反則金は3倍に!
一瞬見るくらい大丈夫だろうという過信が、大きな代償を払う事故につながる「ながら運転」
運転中の携帯電話を耳に当てての通話やスマホの操作、画面を注視などの「ながら運転」は、シートベルト非装着などと同時に路上で取り締まりをされている、運転中の禁止行為だ。
この「ながら運転」、正確には「携帯電話使用等(交通の危険)」が、2019年12月1日から厳罰化される。これまでは6000円だった反則金が3倍の1万8000円へと引き上げられるのだ。
たとえ業務中であっても、交通違反の反則金や罰金を会社で負担してくれるような職業はほとんどない。つまり、交通違反で検挙されれば、自分の財布が傷む人ばかりであるから、この罰則強化は痛いハズだ。さらに違反点数も従来の2点から6点に引き上げられ、免許停止の前歴がなくても、いきなり30日の免許停止処分を受けることになる。
衝突被害軽減ブレーキが装備されるようになったとはいえ、わき見運転で追突してしまう可能性はゼロではないし、もし交通事故を起こした際に「ながら運転」をしていたことが判明すれば、交通事故に対する責任は重くなることになる。そうなれば反則金どころでは済まないし、違反点数もさらに跳ね上がることになるから、免許停止の期間が長くなることも考えられる。
ついうっかり「ながら運転」をしまうドライバーは、悪習慣を改めて運転に集中する習慣を身に付ける努力をしなければ、免停処分を受けるリスクは大きく高まり、免許取り消しになる可能性すら迫ってくることになる。
2019年12月1日から厳罰化される、携帯電話使用等に関する罰則
■あおり運転も、来年には免許取り消しの厳罰化へ
最近は、ドライブレコーダーの映像が証拠となり検挙数が増えている「あおり運転」
さらに社会問題となった「あおり運転」も現在、厳罰化へ向けて法整備が進められている。来年の通常国会で改正案が可決されれば、再来年には悪質な「あおり運転」で検挙されれば免許の取り消し処分が科せられるようになりそうだ。
すでに2017年12月から「あおり運転」でも悪質なケースについては、薬物使用者などと同様に危険性帯有者として180日の免停処分に罰せられるよう、警察庁から全国の警察に指示が伝えられている。それが、さらに強化されることになるのだ。
あおり運転の取り締まり自体も強化されている。2018年の車間距離保持義務違反で摘発された件数(警察庁)を見ると、1万3025件で前年から1.8倍となっている。こうした動きは2019年に入っても変わらず、様々な方法で車間距離の保持が不適切なドライバーが取り締まられている。
今後は車間距離を縮めて、前走車を追い立てるような行為だけで「あおり運転」と認定されて検挙されてしまう危険性があることを認識しておくべきだろう。つい「急いでいるから」、「前のクルマが遅いから」、「一定の速度で皆が巡航しているから、この程度の車間距離で十分」などと自分勝手に判断して、車間距離を十分に取らずに走行してしまう運転も、すべてNGなのである。
しかし、クルマを使っての暴力である悪質な「あおり運転」をするようなドライバーは、果たして免許取り消しになったことで大人しくクルマの運転を諦めるだろうか。時折、免許取り消し処分を受けた者が無免許状態で運転し、交通事故を起こしたり、パトカーに遭遇して逃走して逮捕されるような事件が報道されている。そんな無法ドライバーが増えてしまう可能性もある。
現時点で無免許運転に関する罰則だが、行政処分は違反点数25点以上となり、最低でも2年間は運転免許が取得できないことになる。刑事罰では3年以下の懲役、または50万円以下の罰金という重い処分だ。
また交通事故を起こせば、無免許だけにその責任はさらに重くなるから、過失割合は大幅に増えることになる。想像しただけで、無免許運転が破滅へと向かうだけの愚かな行為だと理解できないだろうか。
だが、これらはすべて常識ある人間であることが前提となっている処分に過ぎない。無免許状態で運転している人間が、再び検挙されたことで免許取得の欠格期間が延びたことで、どれだけ反省し、罪の意識を持つかに少々疑問を感じてしまう。
あおり運転の厳罰化は歓迎するが、それだけでなく無免許運転、それも免許取り消しの前歴のある場合には、禁固刑なども含む刑事罰を課すようにするなどの抑止力が必要ではないだろうか。それと同時に、こうした危険な運転が厳罰化されたことを、あらゆるドライバーに正しく周知させるための活動も必要だ。
法律を理解しないまま、運転しているドライバーが多過ぎるのも、交通事故が減らない、交通マナーがよくならない原因だからである。我々報道側にも、新しい運転の規則について正しく伝える責任はないだろうか。
■ヘッドライトのハイローについても誤解が多い状態
街中でハイビームで走行することは、ほかのドライバーを幻惑し危険だ
その一例が夜間走行のヘッドライトの使い方だ。
「ハイビームが基本で、ロービームはすれ違い灯」という警察庁をはじめとするハイビーム推奨運動だけを杓子定規で受け止めて、ロービームでの走行を違反行為と知らせるような報道やコラムをいまだに見かける。ペーパードライバーが書いているのかと思えるような記事で、ドライバーに誤解を与えかねない内容もある。
そう、残念なことに「ヘッドライトはハイビームでなければ違反」という記事をいまだに見かけるのだが、ロービーム状態での走行で、交通違反の取り締まりを受けることはまずない。なぜなら理由は2つある。
1つはハイビームで走行しなければならないのは、前走車や対向車が存在しない時、つまりパトカーなどの取り締まり車両が存在する状態ではロービームで走行している状態は違反行為ではないからだ。
もう1つは、仮に路上で待機して取り締まりをするとしても、ハイビームで走行しなければならないような、クルマが通過するかわからないような交通量の少ない道路環境で取り締まりをするほど、警察はヒマではないからだ。
では、ハイビームにしていなかったことで問題になる場合はどんなケースなのか。それは交通事故を起こした際に、前方不注意や安全運転義務違反に問われる、ということになる。
例えば郊外の一般道で前方の視界が不十分であれば、ヘッドライトやフォグランプなどを調整すると同時に、走行中の速度を落として安全確認をしながら走行することが求められるのだが、燃費向上のために走行抵抗を軽減して、快適性向上のために静粛性も向上させた最近のクルマは、速度感が希薄でドライバーはついつい走行速度に鈍感になり、速度を下げることを怠りがちだ。
危ないと思ったら速度を落とし、注意しなければいけないのだが、クルマの性能が上がった現代では、制限速度以下で走行することが悪いこと、無駄なことだと思われているような印象がある。これが前述の「あおり運転」が発生する原因でもあること。
■ハイビームでの走行が違反行為になることも報じるべき
実はハイビームのまま走行し続けることも違反行為なのだが、それを伝える報道やコラムはほとんど存在しないのも問題だ。
前走車や対向車がいる場合は、すれ違い灯に切り替えることや減光することが義務付けられており、そうしない場合には「減光等義務違反」に問われることになる。これは違反点数1点、反則金6000円(普通車の場合)だ。
ハイビームのまま走行し、パトカーに遭遇でもしなければ検挙されることはないだろうが、ハイビームのまま走行したことで対向車のドライバーを幻惑したことがドライブレコーダーなどで立証されれば、自分は直接事故を起こしていなくても、交通事故への責任を追及される可能性は大いにある。
■どちらもあるまじき行為だが、中身は異なる2つの「飲酒運転」
自分は大丈夫と考えている、甘いドライバーがいまだに多い「飲酒運転」
飲酒運転についても、酒気帯び運転と酒酔い運転、飲酒運転の違いすら理解しないまま、記事化されているものも見かけることがある。
道路交通法の第65条第1項に「何人も酒気を帯びて、車両等を運転してはならない」という原則があるが、実際には運転に支障があるほどの飲酒の基準が曖昧であった時代には、真っすぐ歩行できないほど酩酊している「酒酔い運転」だけが処罰の対象であった。しかしそこまで酔っていなくても、交通事故を起こすようなケースが続出したため、「酒気帯び運転」という罰則が設けられたのだ。
ただし基準が曖昧なまま厳格化しては、1滴でもお酒を飲んだら24時間は運転できない、というような状態に陥ってしまうことも考えられ、実生活に支障を来すケースもあることから、基準を明確化した「酒気帯び運転」という罰則を設けたのである。
したがって、もし検問で飲酒運転の検査を受けたとしても、呼気1リットルあたり0.15mg以下のアルコールを帯びた状態での運転では、現実には検挙されない。(だからといって筆者は飲酒運転のドライバーを擁護している訳ではない)。
しかし、酒気帯びで規定されている濃度以下のアルコールであっても、もし交通事故を起こせば、ドライバーの責任は大幅に重くなる。だから飲酒運転は絶対にするべきではないのだ。
※編集部注:規定濃度以下であっても、アルコールを摂取した時点で、摂取していない時よりも判断能力は低下する。年末年始は忘年会&新年会シーズンだが、「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」が免許を持つ者としての義務だ。
「クルマを運転すると性格が変わる」と言われるようなドライバーは、今回の罰則強化をきっかけに考え方を改めて欲しい。
あおり運転を起こしてしまうのは、心理学で言われる「ドレス効果」と、免許取得によりクルマを運転する権利を得ているという誤解が大きくしている。ドレス効果とは、人間は着ている衣装により、その振る舞い方が変わるというもので、普段着での振る舞いと比べ、ドレスを着た状態では態度が変わってしまうのである。
クルマに乗っていると気が大きくなる、周囲のドライバーにクルマの動きで意思を伝えようとするようなドライバーは、意識せずにクルマで暴力を振るってしまう可能性がある。
今や1億総監視社会、自分の運転は常に監視されていると意識して、用心した運転をしなければならない時代だ。旧来の悪習慣として「あおり運転」は根絶されるべき問題。運転免許は運転する権利ではなく、運転を許可されただけの状態と心得ておくべきなのだ。
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