現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ミニキャブMiEVが3月で生産終了! 苦戦も商用EVとして築いたその功績

ここから本文です

ミニキャブMiEVが3月で生産終了! 苦戦も商用EVとして築いたその功績

掲載 更新 15
ミニキャブMiEVが3月で生産終了! 苦戦も商用EVとして築いたその功績

 日本車にはハイブリッドは豊富に用意されるが、電気自動車は少ない。日産では『リーフ』は2代目になったが、商用車の『e-NV200』は生産を終えた。

 三菱も2021年3月に、『i-MiEV』と『ミニキャブMiEV』を終了させている。そこで軽商用車の電気自動車を成立させた『ミニキャブMiEV』について、改めて考えてみたい。

ボルボがEVにリチャージタイヤを標準装備! 他メーカーのこの流れに乗るのか!?

文/渡辺陽一郎
写真/MITSUBISHI 

【画像ギャラリー】影の「功労車」! 三菱『ミニキャブMiEV/トラック』を詳しくチェック!

■新車ではもう買えないミニキャブMiEV

 ミニキャブMiEVの届け出台数は、2019年が521台(1カ月平均では43台)、2020年は1185台(同99台)であった。売れ行きが下がった末の生産終了と見られるが、今後の展開はどうなるのか。

 三菱の販売店に尋ねると「ミニキャブMiEVはすでに生産を終えて在庫車もなく、新車では購入できない。今後マイナーチェンジやフルモデルチェンジを行い、復活する予定もない」とのことだ。

 しかし軽商用車の電気自動車は、複数のメリットを備える。最も注目されるのは、電気自動車には地域内の移動に適した特性があり、軽商用車の用途とも親和性が高いことだ。

写真は『ミニキャブMiEV』。ちなみに「MiEV」の中にある「i」は元々、「インホイールモーター」の意味だったという。コストの関係でワンモーターに変更された。そのため「i」の意味も「イノベーティブ」に変更された

 具体的にいえば、電気自動車は走行段階では二酸化炭素を含めた排出ガスを発生させない。その代わり1回の充電で走行できる距離も短い。仮に長く走ろうとすれば、大容量のリチウムイオン電池が必要になり、製造段階で排出される二酸化炭素も増える。ボディも大きく重くなるから、電力消費量が増えて、エコロジーに逆行する。

 つまり電気自動車は長距離の移動ではなく、街中を中心にした短距離移動に適したパワーユニットだ。そうなると車両のカテゴリーとしても、ボディが小さくて小回り性能の優れた軽自動車が適している。

 特にミニキャブMiEVのような軽商用車は、配達などのために、静かな住宅街に乗り入れることも多い。エンジンノイズを発生させない電気自動車であれば、気兼ねなく走行できる。

 動力性能にもメリットがある。モーターはアクセル操作に対して機敏に反応するから、重い荷物を積む商用車でもパワー不足を感じにくい。登り坂に差し掛かった時など、電気自動車であれば、常に滑らかな運転を行える。

 また商用車では、閉鎖された倉庫の中などを移動することも多い。エンジンを搭載した一般的な車両は、排出ガスを発生させるから屋内での走行は控えたいが、電気自動車であれば不満なく行える。

 そして仕事のツールとして使われる商用車では、電気自動車だから可能な電力供給機能も大きなメリットをもたらす。ミニキャブMiEVでも、ディーラーオプションの「MiEVパワーボックス」を利用すると電力供給が行える。1500Wだから、電子レンジなどの使用も可能だ。

写真は「MiEVパワーボックス」。最近の電動車は外部給電可能なことを魅力として持つ車種が幾つかあるが、ミニキャブMiEVもそれを備えていた

 そしてミニキャブMiEVをフルに充電しておけば(リチウムイオン電池の総電力量は16kWh)、一般家庭のほぼ1日分の電力を供給できる。例えば屋外で照明を使って作業をする時なども重宝する。

 キッチンカーとしても便利に使える。ガソリンエンジンを搭載した発電機では、使用中にノイズや排出ガスを発生させるが、電気自動車から電力を取り出す方法ならば周囲の負担も生じない。

 ちなみにエンジンを搭載するトラックには、以前からPTO(パワーテイクオフ)の機能があり、例えばエンジンの力でコンクリートミキサーのドラムを回転させたりする。エンジンの動力を、車両を走らせること以外にも活用するわけだが、電気自動車であれば、充電された電力をいろいろな用途に使える。

 キャンピングカーとしても、充電された電気の利用価値は高い。車内の空調、照明、調理器具など、リチウムイオン電池からの電力供給は、幅広い用途に利用できる。実際にミニキャブMiEVやミニキャブMiEVトラックをベースにしたキャンピングカーも作られているようだ。

■今後、ミニキャブMiEVは復活する?

 ミニキャブMiEVは、バン、トラックともに生産を終えたが、それは今後の発展を前提にした一時的な中断と考えるべきだろう。ミニキャブMiEVとミニキャブMiEVトラックは、軽商用車と電気自動車の相性が良いことを具体的な機能で示したからだ。

 従来のミニキャブMiEVのリチウムイオン電池容量は、前述のとおり16kWhに留まり、1回の充電で走行できる距離もJC08モードで150kmと短かった。今後は電池容量をもう少し拡大させると、外出先での電力消費量も増やすことが可能になる。

世界に先駆けて2011年にEV商用車を展開した三菱。その苦労が報われる日が来てほしい

 三菱の「2020-2022年度中期経営計画」によると、2022年度以降には、軽自動車サイズの電気自動車が計画されている。三菱と日産が共同開発する乗用車だが、ミニキャブMiEVの再来となるような車内の広い派生車種が登場する可能性もある。

 特にこれからは厳しい燃費規制が実施され、軽自動車もフルハイブリッドや電気自動車を豊富に設定する可能性が高い。そうなると今のガソリンエンジンを搭載するミニキャブは、トラックを含めてスズキ製のOEM車だが、将来は日産やダイハツまで含めて共通の電気自動車プラットフォームを開発するかも知れない。今はスズキとトヨタも提携を結んでいるから、ホンダを除く7メーカーは、すでに繋がりを持っている。

 ミニキャブMiEVの生産台数は多くないが、量産型の軽商用電気自動車という点で、貴重な先駆けとなった。その功績を改めて実感する時が、必ず訪れるだろう。

【画像ギャラリー】影の「功労車」! 三菱『ミニキャブMiEV/トラック』を詳しくチェック!

こんな記事も読まれています

街で見かけるダイハツ車たちがサーキットを攻める!「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup 2024」に密着してみた
街で見かけるダイハツ車たちがサーキットを攻める!「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup 2024」に密着してみた
くるまのニュース
[新型ランドクルーザー250内装解説]12.3インチの巨大モニターもいいけど8インチで十分じゃね??  スイッチとかめっちゃ使いやすいやん絶対
[新型ランドクルーザー250内装解説]12.3インチの巨大モニターもいいけど8インチで十分じゃね??  スイッチとかめっちゃ使いやすいやん絶対
ベストカーWeb
「メーカー公認」で丸目換装!! ランクル250の激推しオプションを見逃すな なぜか不遇の「GX」も泣けるぞ
「メーカー公認」で丸目換装!! ランクル250の激推しオプションを見逃すな なぜか不遇の「GX」も泣けるぞ
ベストカーWeb
ホンダ新型「オシャレ軽商用バン」発売! エレガントな進化に早くも反響!? 130万円台で買える改良「N-VAN」が登場
ホンダ新型「オシャレ軽商用バン」発売! エレガントな進化に早くも反響!? 130万円台で買える改良「N-VAN」が登場
くるまのニュース
ヤマハの電アシ「PAS Brace」 日常使いしやすいスポーティコミューターの2024年モデルを発売
ヤマハの電アシ「PAS Brace」 日常使いしやすいスポーティコミューターの2024年モデルを発売
バイクのニュース
JSR、産業革新投資機構によるTOBが成立 2024年夏にも上場廃止
JSR、産業革新投資機構によるTOBが成立 2024年夏にも上場廃止
日刊自動車新聞
ゲレヴァー好きですか?レストアされたレアなオフローダー「メルセデス 300 GD」で冒険の旅へ、150万キロ感動の物語
ゲレヴァー好きですか?レストアされたレアなオフローダー「メルセデス 300 GD」で冒険の旅へ、150万キロ感動の物語
AutoBild Japan
アルピーヌF1、中国GPで新"軽量版"シャシー投入&フロアアップデートも実施……最下位脱出に向け奮闘中
アルピーヌF1、中国GPで新"軽量版"シャシー投入&フロアアップデートも実施……最下位脱出に向け奮闘中
motorsport.com 日本版
【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能
【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能
カー・アンド・ドライバー
渋滞へトラックが「ノーブレーキ突入」衝撃の映像!? NEXCO緊急の注意喚起が話題に「運転の上手い人はこんなことしません!」
渋滞へトラックが「ノーブレーキ突入」衝撃の映像!? NEXCO緊急の注意喚起が話題に「運転の上手い人はこんなことしません!」
くるまのニュース
ついにランクル250正式発表520万円から!! 争奪戦必至もやっぱり欲しいーー今日ランクルに新たな歴史が始まる
ついにランクル250正式発表520万円から!! 争奪戦必至もやっぱり欲しいーー今日ランクルに新たな歴史が始まる
ベストカーWeb
MINIの小型電動クロスオーバー『エースマン』がデビューへ…北京モーターショー2024
MINIの小型電動クロスオーバー『エースマン』がデビューへ…北京モーターショー2024
レスポンス
バイク「満タン航続距離ランキングトップ10 2024】10位でも500kmは余裕、1位は600kmオーバー!125から大型車までの大混戦に
バイク「満タン航続距離ランキングトップ10 2024】10位でも500kmは余裕、1位は600kmオーバー!125から大型車までの大混戦に
モーサイ
レクサスが「1泊10万円」のキャンプを発表! レクサス新型「GX」の展示&試乗もある非日常体験!? 6月に開催へ
レクサスが「1泊10万円」のキャンプを発表! レクサス新型「GX」の展示&試乗もある非日常体験!? 6月に開催へ
VAGUE
新車もセルフレジ的な販売にするしかない? トヨタのディーラー従業員に「一律1万円支給」に見る新車販売現場の深刻な現状
新車もセルフレジ的な販売にするしかない? トヨタのディーラー従業員に「一律1万円支給」に見る新車販売現場の深刻な現状
WEB CARTOP
レクサスが「LC500」「RC F」を販売終了!? ひっそり姿消していた…? 自然吸気V8・2ドアクーペに何が? 英国から欧州、日本に広がるか
レクサスが「LC500」「RC F」を販売終了!? ひっそり姿消していた…? 自然吸気V8・2ドアクーペに何が? 英国から欧州、日本に広がるか
くるまのニュース
小さくても手抜きなし! 全面進化した小排気量モトクロッサーKTM「65 SX」発売
小さくても手抜きなし! 全面進化した小排気量モトクロッサーKTM「65 SX」発売
バイクのニュース
[カーオーディオ 逸品探究]アルパインの自信作、「Xプレミアムサウンドスピーカー」の実力は…
[カーオーディオ 逸品探究]アルパインの自信作、「Xプレミアムサウンドスピーカー」の実力は…
レスポンス

みんなのコメント

15件
  • 軽バンはエブリィ 系に統一されるだろう。電気自動車に変わるのは間違いないだろうけど。
  • 先にフェードアウトした ミニキャブMiEV トラック は良い車なんだよ
    農家の人の軽トラ、ほとんど乗らないからガソリンが腐る
    だから腐らない電気充電

    ただ、詰めが甘すぎて
    畔道走行時の為の4WDが無かった
    コストの問題だと思うけど
    これさえ上手くやれば売れたのにと思う
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

243.1245.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.8185.0万円

中古車を検索
ミニキャブ・ミーブの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

243.1245.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.8185.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村