■最新型は、電子デバイスが搭載し一気に電脳化を進めた
ヨーロッパを中心に絶大な人気を誇るヤマハのビッグスクーターが「TMAX530」です。数々の電子デバイスが搭載され、スポーツバイクさながらの俊敏性とツアラー並の快適性を併せ持つ、TMAX530のマルチな性能を紹介していきましょう。
TMAX(ティー・マックス)の初代モデルは2000年秋に登場し、ビッグスクーターの本場とも言えるイタリアやスペイン、フランスといった国々で大きなシェアを築いてきました。当初のエンジンは並列2気筒の500ccでしたが、2013年に排気量を530ccに拡大。直近では2017年春にモデルチェンジが行われ、一気に電脳化が進められて現在に至ります。
そのひとつが電子制御スロットルの採用で、これによってエンジン内部へ取り込む空気量やスロットルバルブ開度の調整を臨機応変に行えるようになりました。言い方を変えると、走行環境や好みに応じてエンジンのキャラクターを自在に変化させられるようになったのです。
具体的には、「D-MODE(ディー・モード)」と呼ばれる走行モードがそれに当たります。ハンドル右側に備えられたスイッチを押せば、市街地での扱いやすさを優先した「Tモード」か、スポーティな走りに対応する「Sモード」か。そのどちらかを簡単に切り換えられるようになりました。
2つのモードの変化は明確です。特にスロットルを大きく開けた際の加速感が異なり、「Tモード」は徐々にパワーが上乗せされていく一方、「Sモード」なら間髪入れずに回転が上昇。「ズォォォ」という野太い排気音とともに車速がグングン押し上げられていくさまは、ビッグバイクのフィーリングそのものです。
もちろんセーフティ機能も併せ持ち、もしもの時はトラクションコントロール(ONとOFFが選択可能)がライダーのスキルをサポート。さらにはラジアルマウントされたABS機能付の対向4ピストンブレーキキャリパーが高い制動力に貢献しています。
見た目で印象的なのは、コックピット周りの質感の高さでしょう。ジェット機の排気口をモチーフにした大型2連メーターと3.5インチのTFTモニターが備わり、見やすいグラフィックでさまざまな情報を表示。ハンドル左右には各種スイッチが機能的に配置され、ほぼ直感的に操作できるようになっています。
そんなTMAX530には「TMAX530SX ABS」と「TMAX530DX ABS」の2種類が用意されており、今回試乗したのは上位グレードのDXです。これはスタンダードのSXに対してクルーズコントロールや電動調整式スクリーン、ヒーター(グリップ/フロントシート)などが追加されたプレミアム仕様で、それらの設定や選択スイッチもハンドルに備えられています。
■スクーター独特のスカスカ感がないTMAX
エンジンを取り囲むようにアルミフレームが車体中央を貫いているため、乗車時は一般的なスポーツバイクと同様、足を後方に上げてまたぎながらシートに座ります。座面やフットボードが幅広のぶん、足つき性に関しては一定の体格があった方がよく、スポーツ性を重視したモデルとしてある程度の割り切りが必要な部分です。
事実、それが功を奏してハンドリングにはダイレクト感が溢れています。車体をリーンさせる時はほとんど抵抗なくスパッと倒し込むことができ、それでいてバンク角も充分。218kgという車重をまったく意識させず、クルリと旋回してみせる軽やかさはライトウェイトスポーツのようでもあります。
そうやってスポーティなライディングを楽しんでも、足もとにスクーター独特のスカスカ感がないところもポイントです。なんなら腰をズラすようなフォームをとっても足首や内ももで車体をホールドしやすく、積極的に旋回力を引き出すことができるはずです。
コーナリング中もリンク式のリヤショックとアルミスイングアームのおかげもあってタイヤの接地感は分かりやすく、高い路面追従性を発揮。DXにはスプリングプリロードと伸側減衰力の調整機能も備えられているため、好みに応じてセットアップすればさらに一体感や安定感が高まるでしょう。
既述の通り、電動調整式のスクリーンを備えるDXならツーリング時の快適性にも抜かりはありません。上下に135mmスライドするこのスクリーンはもちろん走行中でも操作が可能。体格やスピードに合ったポジションに合わせることによって優れた静粛性や防風性が得られることはもちろん、クルーズコントロールを併用すれば高速巡航がさらに安楽になるのは間違いありません。
というわけで、TMAXは単なるコミューターではありません。ライダーの使い方によってスポーツバイクにもグランドツアラーにもなり、もちろんビジネスエクスプレスとして日常的に活用するのもアリ。オールラウンダーとしての資質が磨かれたマルチツールが、TMAXの実態と言えます。
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