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【人気だけが理由ではない】日産ノート/キックス eパワー専用車になったワケ

掲載 更新 16
【人気だけが理由ではない】日産ノート/キックス eパワー専用車になったワケ

売れ筋ノート/キックスはeパワーのみ

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

【画像】日産支えるノート/キックス【どんなクルマ?】 全180枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

今の日産の売れ筋車種は、小型/普通車のノート+セレナ+キックスと、軽自動車のデイズ+ルークスになる。

2021年1~3月において、上記5車種の販売台数を合計すると、この時期に国内で新車として売られた日産車の73%に達する。

つまり今の日産の国内販売は、上記5車種が支えている。エクストレイル、エルグランド、スカイラインなどは、すべて残りの27%に含まれてしまうのだ。

そして売れ筋になる小型/普通車のノート+セレナ+キックスは、すべてハイブリッドのeパワーを用意する。

とくにノートとキックスは、eパワーのみになるから、ノーマルエンジンは選べない。

プリウスやアクアのようなハイブリッド専用車だ。

合理化のためにノーマルエンジンを廃止

なぜノートはeパワーだけでノーマルエンジンを用意しないのか。

この点を開発者に尋ねると、以下のように返答された。

「現行型のノートは国内専用車だ。海外ではマイクラやジュークを扱うため、ノートは国内のみの販売とした。そこで開発費用を集中させて効率化を図るため、ノートはeパワーに絞った」

「先代ノートのeパワーで販売比率が75%に達した事情もある。また現行ノートは、内装の質を大幅に高めた。このつくり込みは、価格が200万円を超えるeパワー専用車だから可能になったものだ」

「仮に160万円前後のノーマルエンジン車を用意したら、コストを抑えるために別のインパネを用意する必要が生じた」

キックスをeパワーのみにした理由は以下のとおりだ。

「キックスは以前から海外でノーマルエンジン搭載車を販売していたが、eパワーは実質的に日本仕様が最初になる。ノーマルエンジン車に比べるとボディ剛性が高く、走行性能から乗り心地まで幅広く向上させた。従来のキックスとは違うクルマで、それはeパワーの搭載によって可能になった」

キックスでは、タイで生産される輸入車であることも、eパワーに特化した理由に含まれる。

輸入車はバリエーションを増やしにくく、キックスはeパワーのみにして、グレード構成もシンプルに抑えた。

以上のようにノートやキックスがeパワーのみにした背景には、ハイブリッドの高人気と、開発や生産の合理化があった。

ほかの車種をみても、新型になったヴェゼルはハイブリッドのe:HEVが中心で、ノーマルエンジンは1グレードしか用意されない。

またヤリスのハイブリッド比率は46%だが、ヤリス・クロスは61%と高い。ヤリスは価格の安い1Lエンジンも用意するので、ノーマルエンジンの需要が増えたが、ヤリス・クロスではハイブリッドの売れ行きが上まわる。

eパワーには優れた動力性能や運転の楽しさも

価格が高いのにハイブリッド比率が増えた背景には、合理化以外にも複数の理由がある。

1番に挙げられるのは、環境/燃費性能が優れていることだ。購入後の燃料代が抑えられるだけでなく、購入時の税額も安くなるから、ハイブリッドの割高感もある程度は解消される。

そして走行性能の向上も大切な魅力だ。

とくにeパワーの場合、エンジンは発電、モーターは駆動を担当するから、運転感覚は電気自動車に近い。モーターはアクセル操作に対して動力性能を機敏に増減させ、加速は滑らかになって静粛性も優れている。

またエコやSモードを選ぶと、アクセルペダルを戻すと同時に、減速エネルギーを使った発電が活発におこなわれる。そのためにアクセル操作により、速度を幅広く調節できる。

このブレーキペダルをほとんど使わない運転感覚は、ユーザーによって好みが分かれるが、eパワーの個性として注目されている。

以前はハイブリッドの魅力といえば、モーター駆動を併用することで燃料消費量を節約できることだった。

それが最近は、動力性能、静粛性などの快適性、さらに運転の楽しさにまで多様化してきた。

その結果、1年間の走行距離が少ない(つまり燃費節約の効果が乏しい)ユーザーもハイブリッドを選ぶようになり、ノートやキックスはeパワー専用車になった。

ノートが予算オーバーのユーザーには?

先代ノートのeパワー比率は、前述のとおり75%であった。

したがって残りの25%は、ノーマルエンジンが販売されていた。eパワーが人気のメカニズムになったことは理解できるが、ノーマルエンジンを廃止した弊害は生じていないのか。

2021年1~3月のノートの登録台数は、1か月平均で9377台だから、ヤリス(ヤリス・クロスとGRヤリスを除く)の1万820台を下まわった。

仮にノートに160万円前後のノーマルエンジン車があれば、ヤリスの登録台数を上まわったのではないか。

そして先代ノートでは、法人ユーザーを含めて、ノーマルエンジン車が多量に保有されている。

この乗り替え需要に、どのように対応するかも課題だ。

先代ノートのノーマルエンジン車は150~160万円だったから、200万円を超えるeパワーの現行型に乗り替えるとすれば、大幅な値上げになってしまう。

日産のコンパクトカーにはマーチも用意され、この売れ筋グレードは130~150万円だ。先代ノートのノーマルエンジン車からの乗り替え候補に適するが、マーチは発売から10年以上を経過して、内外装の質感や乗り心地に不満が伴う。

売れ行きも落ち込み、2021年1~3月の1か月平均登録台数は1036台だ。ノートのわずか11%にとどまった。

そこで販売店にノートのノーマルエンジン車の廃止について尋ねた。

「先代ノートのノーマルエンジン車を使うお客さまは、法人も含めて、eパワーの新型では予算をオーバーする。そこで軽自動車のデイズやルークスを推奨している」

「デイズの標準ボディであれば、価格は130~140万円だから、先代ノートのノーマルエンジン車よりも少し安くマーチと同程度だ。安全装備はマーチよりもデイズが先進的で、160万円少々の上級グレードになれば、エアロパーツと運転支援機能を備えるハイウェイスターXプロパイロットエディションも選べる」

「今はコンパクトカーから軽自動車に乗り替える抵抗感も薄れたから、デイズやデイズ・ルークスを推奨している」

このような事情もあり、2021年1~3月に日本国内で販売された日産車の内、40%以上を軽自動車が占めた。

コンパクトモデルにはノーマルエンジンも必要?

ノートやキックスがeパワー専用車になって価格を高く設定したら、本来であればマーチが売れ行きを伸ばして穴埋めをすべきだが、前述のとおり商品力が追い付かない。

そこでデイズとデイズルークスを積極的に販売して、日産の軽自動車比率が高まった。

ただしそうなると、ますます軽自動車の販売比率が拡大する。

ホンダも軽自動車比率が50%を上まわり、今では日本で新車として売られるクルマの40%近くが軽自動車になった。

この傾向が加速すると、軽自動車のさらなる増税を招き、古い軽自動車を日常的な移動のために使う高齢者などの生活を圧迫する。

税負担のことも考えると、もう少し小型車の販売に力を入れるべきだ。

日産の場合、マーチのフルモデルチェンジが難しいなら、ノートやキックスにノーマルエンジンを追加することも考えたい。

これから電動化の時代に入り、eパワーを重視する事情も理解できるが、コンパクトな車種にとって、割安な価格で商品を提供することも大切な使命だ。

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みんなのコメント

16件
  • タイ製のクルマには共通点があり、
    それは複雑なグレードが作れない。

    これはキックスに限らずハイラックスや
    アコードにも言える。

    そうすると内燃機関とシリーズハイブリッドの
    どちらかを日本向けに作れとなれば、
    結果としてこうなったというだけ。

    だから日本向けにノーマルエンジン車は
    絶対に出ないし、むしろこれから心配することは
    またマーチみたいに放置プレーにならないかってこと。
  • だから日産は利益が出せない企業体質なのだなと思える記事である。様々な顧客ニーズは無視して、開発コストをカットしたいからと、敢えてエンジン車のラインナップや廉価グレードの開発をしなかった訳だ。その結果、グレード展開としては少なくなる。販売側の思惑通りにタイ生産のマーチや三菱自動車製のデイズやルークスには流れず、商品力の高いトヨタのヤリスやホンダのフィットに流れることになる。とにかくグレード展開を増やし、販売台数を稼げなければ工場固定費をペイすることができず損益分岐点を下げられないということだな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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