古き良き時代を知る者にとってクルマの魅力は何かといえば、やっぱりパワー! パワー自慢のクルマは一般道で持て余すだけ……なんだけど “前人未踏”や“日本初”といった言葉を耳にするだけでもワクワクしちゃうってもんでしょ? ってことで、ここでは日本の自動車史に名を刻む5台をピックアップしてみた。
文:FK/写真:スズキ、日産、ホンダ、CarsWp.com
【画像ギャラリー】過剰な出力!? を宿したクルマたち(15枚)
国産車に“ターボ時代”の幕開けをもたらした430型セドリック/グロリア
1979年2月のイラン革命を皮切りに国際原油価格が高騰した第二次オイルショックによって、社会全体に省エネが叫ばれていた当時の日本。現在のクルマと同じように小さい排気量でハイパワーと燃費性能を両立させるため、当時の日産が注目したのがターボチャージャーであった。
そんななか、1979年12月に登場した5代目セドリック&6代目グロリアの“430型”は、日本初のターボエンジンを搭載して話題を集める。
ターボエンジン搭載車に先立ち、1979年6月にデビューしていた自然吸気エンジン仕様の430型は日本初のエンジン集中電子制御システム(ECCS)を採用し、点火時期やアイドル制御などをコンピュータで集中管理してパワー・燃費・排気性能を向上するなど時代を先取りしたが、その半年後に登場したのがターボエンジン搭載車というわけだ。
L20ET型と名付けられた直列6気筒2.0リッターSOHCターボエンジンのスペックは、最高出力が145psで最大トルクが21.0kgf・m。
これは1979年6月に登場したモデルの2.8リッター自然吸気エンジン(最高出力145ps、最大トルク23.0kgf・m)とほぼ同等の数値であったが、当時は小排気量エンジンでもファイナルギヤのハイギヤード化によって燃費向上、排出ガス清浄化、騒音の低減を図りながら大排気量エンジンと同等の車両性能を実現した……という、省エネや環境への配慮こそがL20ET型エンジンの最大のセールスポイントであった。
とはいえ、このクルマの登場が日本のターボ時代、さらにはハイパワー戦争のトリガーになったことは間違いないだろう。
280馬力自主規制のきっかけとなったZ32型フェアレディZ
初代フェアレディZのS30型が誕生してから20年目の節目となった1989年。
“1990年代をリードする新世代の本格スポーツカーエンジンをつくる”という基本テーマのもとに開発し、国産車で初めて280psに到達したエンジンを搭載したZ32型のフェアレディZが同年7月にデビューを果たした。
V型エンジンのレイアウトを最大限に活かした左右独立2系統の吸気系・排気系システムで吸排気効率を高めて出力向上を図り、280psの最高出力と39.6kgf・mの最大トルクを実現したフェアレディZのV型3リッター6気筒DOHCツインターボエンジン。
過給器にはギャレット製T25コンプレッサー&T2タービンのハイブリッドタイプを採用し、ターボフィンの慣性質量低減によるターボラグの抑制とシャープなレスポンスを両立した。
また、最大過給圧はウェストゲートアクチュエーターの特性を変えることによってMT車は500mmHgに、AT車は450mmHgに設定。
加えて、トランスミッションの違いによって味付けが異なることも特徴のひとつで、カムタイミングとタービンスクロール形状で高回転域での出力向上を図ったMT車に対して、AT車では発進時の加速が重視されていた。
ちなみに、このフェアレディZのデビューが契機となり、日本自動車工業会がエンジンの高出力化と交通事故の抑制を目的に自主規制を敷いた“280馬力規制”は2004年まで続くことに。
国産乗用車初の280psオーバーでその名を歴史に刻んだ4代目レジェンド
先述のフェアレディZの登場によって、1989年から長らく続いていた“280馬力規制”が撤廃されたのは2004年6月。
そして、同じ年の10月に日本で初めて280psを超えるエンジンを搭載したモデルが登場した。それが4代目のレジェンドだ。
「独自の存在感」、「胸のすく走り」、「高い機動性」をキーワードにあらゆる走行状態において乗る人に「上質」「快適」「安心」を提供し、「New Driving Experience=新次元のドライビング体験」をもたらすことを目指して開発された4代目レジェンド。
そのV型3.5リッター6気筒SOHCエンジンは300psの最高出力と36.0kgf・mの最大トルクを誇り、ホンダ独創のVTEC機構を核に吸・排気効率を徹底して高めるとともに高圧縮比化することで低回転域から高回転域まで全域にわたって強力なトルクを発生した。
また、共鳴過給と慣性過給をそれぞれ効果的に利用できる可変吸気システムや、床下キャタライザーの直後から2本のパイプにわかれるフルデュアルエキゾーストシステムの採用などによって、さらなる出力の向上も図られた。
さらに、補機類の工夫やアルミ材の採用などによる徹底的な軽量・コンパクト化も運動性能のさらなる向上に大きく貢献し、よりホンダらしいエンジンに仕上げられていた。
その一方で、直下型キャタライザーそれぞれにリニアA/Fセンサーや02(オーツー)センサーを配置して空燃比を細かく制御するとともに、高霧化インジェクターを採用したうえできめ細かな制御を行い、より完全に近い燃焼を実現して燃焼ガスそのものをクリーン化。
その結果、国土交通省の「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」認定を取得するクリーン性能も特徴のひとつであった。
最高出力64psに初めて到達した初代アルトワークスは610kgの軽さも大きな武器に!
軽自動車で初めてターボエンジンを搭載したのはミニカ・エコノターボとミニカ・アミLターボで、そのエンジンのスペックは最高出力が39ps、最大トルクは5.5 kgf・mと控えめなものであった。
が、しかし……ここから始まったのが1980年代中頃にスズキ、ダイハツ、三菱自動車の3メーカーで繰り広げられた軽自動車のパワーウォーズだ。
クルマ好きにとってはワクワクが止まらなかった古き良き時代に登場した初代のアルトワークスは、走りに重きを置く男性ユーザーの獲得を目指したシリーズの最高峰モデルとして1987年2月にデビュー。
ボンネットフードにエアスクープを設けてスポーティさを強調した精悍なスタイルも魅力のひとつであったアルトワークス。その走りは、日本の軽自動車で初めて64psに到達した直列3気筒0.55リッター EPI DOHC 12バルブインタークーラーターボエンジンとビスカスカップリング方式のフルタイム4WDシステムの採用などで実に軽快であった。
初代アルトワークスではエンジンだけでなく、他にも特筆すべきポイントがあった。それは車両重量。なんと、610kgという驚異的な軽さを誇っていたのだ。
それゆえに、パワーウエイトレシオは9.531kg/psと歴代の軽自動車ではナンバーワン。
2021年に生産終了となったアルトワークス(2WD 5MT)の最終モデルが10.469kg/ps、コペン(5MT)が13.281kg/ps、N-ONE RS(6MT)が13.125kg/psであることを考えると、軽さを大きな武器にして抜群の運動性能を誇った初代アルトワークスのパワーウエイトレシオがいかに突出しているかが理解できるだろう。
【番外】これぞ日本の至宝! 国産乗用車初の600ps到達に度肝を抜かれたNISSAN GT-R
230psの最高出力と34.0kgf・mの最大トルクを発生したVG30ET型、先述したZ32型フェアレディZが搭載したVG30DETT型、280psの最高出力と41.5kgf・m最大トルクを発生したVQ25DET型など、1980年代から2000年代にかけてハイパワーのV型3リッター6気筒ターボエンジンを登場させてきた日産。
そのフラッグシップスポーツカーとして、2007年12月の発売から2025年8月の生産終了まで君臨し続けてきたNISSAN GT-Rこそ、歴史に名を刻む“やりすぎパワーなクルマ”であることに異議を唱える人はいないだろう。
フロントミッドシップパッケージを進化させたプレミアムミッドシップパッケージを新たに開発し、新次元のマルチパフォーマンススーパーカーとしてデビューしたNISSAN GT-R。
また、世界で初めてクラッチ・トランスミッション・トランスファーを車両後方に移動させ、リアファイナルドライブと一体化した独立型トランスアクスル4WDを採用し、あらゆる走行状態でも4輪のグリップ荷重が最適化できるようなパッケージを実現。
その他にも枚挙にいとまがない特徴をもつNISSAN GT-Rだが、そのパワーユニットとして採用された新開発(当時)のV型6気筒3.8リッターのツインターボエンジン・VR38DETT型は、プラズマコーティングボアシリンダやエキゾーストマニホールド一体型ツインターボなどによって480psの最高出力と3200~5200rpmの広いレンジで60.0kgf・mの最大トルクを発生した。
その後、NISSAN GT-Rの進化は留まるところを知らず、毎年のように行われる改良によってエンジンの出力がアップ。
2010年10月に発表された2011年モデルでは500psを超える530psに、2013年11月に発表された2014年モデルのNISMOバージョンでは600psに到達するなど、まさに世界に誇る日本のスーパースポーツたるスペックを有していた。
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みんなのコメント
それは日産が当時の運輸省に乗用車のターボ搭載を説得する口上ですね。
日産が最初にターボ搭載車種をセドグロにしたのもスポーツモデルでは運輸省の心証が悪いだろうと考えてのことですから。