■現行GT-Rの進化を振り返る!
2019年は、日産の「GT-R」ブランドが登場して50周年という節目の年です。現行モデルは、2007年に登場した「第3世代」と呼ばれるR35型になります。
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R35型は、それ以前まで「スカイラインGT-R」という車名から一転して、「GT-R」として生まれ変わった従来のGT-Rとは一線を引くモデルです。
登場から12年経っても色褪せない現行GT-Rとは、どんなクルマなのでしょうか。
現行GT-Rは、「いつでも、どこでも、誰でも」そのパフォーマンスを体感できる「マルチパフォーマンススーパーカー」をコンセプトを持っています。
2007年登場したGT-Rは、3.8リッターV型6気筒ツインターボ(最高出力480馬力/最大トルク588Nm)、6速DCT、独立型トランスアクスル4WD、マルチマテリアルボディ、エアロダイナミクス、サスペンション、ブレーキ、ランフラットタイヤなど、全てが専用開発されました。
その性能は登場時から世界トップクラスを誇りましたが、開発責任者(当時)の水野和敏さんは「アスリートが毎年進化していくように、GT-Rも毎年進化させる」とイヤーモデル制を取りました。
デビューモデルの次に登場したのが2008モデル(2008年7月頃)です。北米導入に合わせたアップデートになりますが、スペックの変更はありません。
しかし、スプリングレート/マウント類/ブレーキパッドの変更とボディ精度向上(生産側の努力)により、サスペンションのしなやかさと動きのスムーズさがアップされ、同年9月にはサーキットなどの走行性能をさらに高めるオプションパッケージ「NISMOクラブスポーツパッケージ」も設定されています。
2009モデル(2008年12月)は、欧州導入に合わせたアップデートになります。エンジン出力は本体/電子制御の精度向上で485馬力(+5馬力)、燃費は8.3km/L(+0.1km/L)を実現。
サスペンションは、新構造ショックアブシーバーの採用とバネレートの変更(フロント)、燃料タンク容量拡大(71L→74L)、フロントナンバープレート枠廃止(空力に影響するため)で全長短縮(4655mm→4650mm)などがおこなわれました。
これらの変更で全体的に身軽な印象になっています。さらに同年1月に登場した「スペックV」は走りに特化した仕様で、重量低減(60kg)のために2シーター化やカーボンブレーキ、専用鍛造アルミ、チタンマフラーなどを装着。エンジンは変更ありませんが、スイッチを押すと80秒間トルクが588Nm→608Nmまでアップするハイギアードブーストが追加されています。
2010モデル(2009年10月)では、基準車へスペックV用冷却ダクト付リアディフューザーの水平展開や通気抵抗の少ない触媒採用で中低速域のレスポンスアップ、更に地デジ内蔵HDDナビ採用などがおこなわれました。
2011モデル(2010年10月)は、R35初のビックマイナーチェンジになります。エンジンは530馬力/612Nmと大きく向上しながら燃費性能も引き上げています。
出力アップに合わせてボディにはアルミハニカム入りカーボンコンポジット性ストラットサポートバーを追加。サスペンションセットアップ(ダンパー内部のフリーピストン変更)、タイヤ、アルミホイール(3kg/台の軽量化)、ブレーキ(フロントローター拡大)など、車両全体に手が入っています。さらにテーラーメイド仕様の「エゴイスト」、ナンバー無しのサーキット専用車「クラブトラックエディション」といったスペシャルバージョンも追加されました。
2012モデル(2011年11月)は、年次改良ながらも大きく手が入っており、インテークマニホールドとシリンダーヘッドの合わせの高精度化、インタークーラーインテークダクト樹脂化&断面積拡大、ナトリウム注入エキゾーストバルブの採用と初めてエンジンに手が入っています。
コンパクト化された触媒も相まって、550馬力/632Nmに向上。ボディはエンジン後部、ダッシュボード周りを重点的に剛性アップ。さらに右ハンドル車は四輪の接地荷重バランスを修正するために、左右非対称セッティングサスペンションを採用しています。スペックVがカタログ落ちしましたが、その代わりにスペックVの要素をパッケージオプションした「Forトラックパック」が新たに設定されました。
2013モデル(2012年11月)では、エンジンスペックに変更はありませんが、高出力インジェクター採用やターボの過給バイパスに専用開発のオリフィスを追加、オイルパン内の回転フリクション低減などより高回転域での伸びの良さや力強さが増しています。サスペンションはフロントのロールセンターを下げると共にセットアップを変更。それに合わせてボディにメンバーが追加されています。
変更は中身だけでなくインテリアに「ファッショナブルインテリア」がオプション設定されました。ちなみに、2013モデルを最後に水野和敏さんは日産自動車を退社。開発を引き継いだのは田村宏志さんです。
じつは、次世代GT-Rの基本構想を提案したのは田村さんで、2001年東京モーターショーに出展された「GT-Rコンセプト」は彼の提案ですが、このときすでにスカイラインから独立したモデル、左ハンドル(=グローバルモデル)、2ペダル(=運転に集中できる)を表現していました。
■開発責任者が変わり…現行GT-Rはどうなる?
2014モデル(2013年11月)は、見た目の変更はわずかですが、基準車のシャシセットアップはGT-Rの「GT性能」を引き上げるために方向性を変更。しなやかな足の動きやフラットライドな乗り味で洗練された速さを追求した「大人が楽しめるGT-R」を目指しました。
一方、GT-Rの「R性能」は新たにモータースポーツ直系チューニングを施した「GT-R NISMO」をラインナップ。つまり、GT-Rの「GT」と「R」の性能の比率を分けた2つのキャラクターに切り分けました。これは、スカイラインGT-R(R34型)時代のMスペック/Vスペックと同じ考え方です。
GT-R NISMOはレーシングカー(GT3)に採用の専用ターボを装着し、600馬力/652Nmを発揮。構造用接着剤使用のボンディングボディ、専用チューニングのサスペンョン/高剛性ハブ/タイヤ、専用エアロパーツ(ダウンフォースは300km/hで+100kg)などにより、圧倒的なパフォーマンスを誇る。このGT-R NISMOに用意されるパッケージオプション「Nアタックパッケージ」装着車両がニュルブルクリンク北コースで量産車最速(当時)となる7分8秒679を記録しています。
2015モデル(2014年11月)は、ショックアブソーバー特性変更やタイヤの変更により、操安性と快適性をより高レベルで両立。エンジン/トランスミッション/ブレーキ/ステアリングなど全ての見直し/作り込みにより、音や振動も低減させています。
GT-R NISMOに採用されるアイテムを基準車にフィードバックさせた新グレード「トラックエディション・エンジニアードby NISMO」も設定。また、スカイラインGT-R(R34型)と同じシリカブレスのボディカラーを採用した特別仕様車「45th Anniversary」は限定45台発売されました。
2017モデル(2016年5月)は、2回目となるビックマイナーチェンジとなります。ちなみにこの大きな変更のために、2016モデルは用意されずスキップされたといいます。
エンジンは、ブーストアップや気筒別点火時期制御の採用などにより570馬力/637Nmにアップ。6速DCTは静粛性や制御の緻密化によりATのようなシフトアップ/ダウンを実現。
外観はフロントバンパー、ボンネット、サイドシル、リアバンパーのデザイン変更やR35型の特徴の一つであるCピラーのキャラクターラインを無くした形状と大きく変わっていますが、これらは単純な意匠変更ではなく、冷却性能アップと空力性能の両立のため、つまり機能部品としての変更になります。
インテリアは、インパネ形状を刷新。8インチに変更されたモニターやスイッチ類は操作性を意識したレイアウトで、パドルシフトはコラム固定式からステアリング一体型へと変更されました。
車体は「タイヤをいかに接地させるか」という原点に立ち返り、キャビンのフロントウィンドウ周りの重点的な剛性アップを実施。前後バランスを整えられ、スラローム車速はアップ、修正舵頻度が下がったそうだ。このボディに合わせて、ショックアブソーバー/バネ/スタビライザーは再セットアップがおこなわれています。
2018モデル(2017年11月)では、国土交通省認定サッチャム欧州カテゴリーII準拠 車両盗難防止システムの全グレード標準化とApple CarPlay対応と、小規模な変更のみです。また、特別塗装色・ミッドナイトオパールを含めた3色のボディカラーと3色の専用インテリアを組み合わせた「大坂なおみ選手 日産ブランドアンバサダー就任記念モデル」が限定50台で発売されました。
■50周年のGT-R、最新モデルはどこが変わった?
そして、最新の2020モデル(2019年4月)で、GT-R NISMOが大きく変更されています。2018モデルがスキップされたのは、2017モデルのときと同じ理由だそうです。
エンジンスペック(600馬力/652Nm)に変更はありませんが、よりリニア/よりレスンポンシブな特性を目指し新型ターボに変更。それに合わせてエンジンとのマッチングや6速DCTの制御も見直されています。
シャシは、コーナリング性能の引き上げのために、グリップと接地面積を向上させた新タイヤ、軽量高剛性のアルミホイール、強力な制動力を生むカーボンセラミックブレーキ、サスペンションの見直しはもちろん、車体は軽量化と剛性アップのためにルーフ/ボンネット/フロントフェンダーをカーボン製に変更。シートも同じレカロ製ですが全面刷新と、車両全体に大きく手が入っています。
通常モデルは、アブレダブルシール採用のタービンやトラックエディションにカーボンブレーキのオプション、サスペンションの最適化、軽量化しながら剛性を上げた新デザインのアルミホイールなど、NISMOで培った技術を水平展開しています。また、新色「ワンガンブルー」は、スカイラインGT-R(R34型)で採用した「ベイサイドブルー」のオマージュになります。
この2020モデルの標準モデルをベースに50周年を記念した特別なモデル(2020年3月までの期間限定)が「GT-R 50th Anniversary」です。エクステリアは3つのカラーコーディネイトが用意されていますが、これは過去に日本グランプリで活躍した通称ハコスカのスカイラインGT-R(C10型)のレーシングカーに採用されていた「日産ワークスカラー」のオマージュになります。
インテリアは専用内装色「ミディアムグレー」や専用ステッチ入りアルカンターラルーフトリム、50周年記念ロゴ(センターコンソール/メーター/キッキングプレート)と特別なモデルの証が随所に配置されています。
このように「最新のGT-Rは最良のGT-R」であることは間違いありませんが、なぜアップデートを続けることができるのでしょうか?
現行モデルのR35型は、開発時に水野さんは自前主義にこだわらず、有能なパートナーやサプライヤーとの協業で効率的な開発をおこなったことで、従来想定される開発予算よりも大幅に押さえて生まれたといわれています。ちなみに、未来(=アップデート)の開発計画もその予算内でおこなっていたというウワサもあるようです。
また、現在も年間3000台レベルを維持している安定した販売実績も進化・熟成の後ろ盾になっているはずです。確かに絶対的な販売台数だけ見ると主力モデルとは比べ物にならないレベルですが、1台あたりの価格を考えるとビジネス的には重要なモデルであるといえるかもしれません。
販売台数では日本、アメリカ、イギリスの順だといい、2020モデルのGT-R NISMOはオーダーが殺到しており、今注文を入れても2019年度中の納車は難しいそうです。
このようなことを踏まえると、「日産の象徴だから採算度外視で開発」ということは決してないでしょう。それならば、GT-Rと同じブランドバリューを持つフェアレディZも同様の進化をしていないとおかしいです。
しかし、デビューから12年、時期的にはいつフルモデルチェンジしてもおかしくないタイミングですが、次期モデルの情報は噂レベルでも聞こえてきません。
ただ、ひとついえるのは、R35とは全く異なるアプローチのスーパースポーツになるはずです。そもそも、第1世代、第2世代、そして第3世代は同じGT-Rと名乗っているものの、「目的」も「手段」も異なります。
現在、日産は「電動化」と「電脳化」が経営の柱となっていますが、それが次期GT-Rを紐解くヒントなのかもしれません。
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