【クルマのメカニズム進化論 Vol.1】トランスミッション編(3)~CVT(無段変速機)~ ベルトによる伝達という一見プリミティブな方式ながら、無断変速が可能なCVTは、常にエンジン効率が高い領域の回転数を選択できるという特徴がある。軽自動車や小型車のトランスミッションの主流となっている。 ※この記事は、オートメカニック2016年当時の記事を再編集したものです。
【画像】→「へぇ~、知らなかった…」CVT採用に歴史があるスバル。初搭載はジャスティだった。
●文:オートメカニック編集部
初期のCVTは、駆動プーリーのみで変速比幅は狭かった
ベルトやチェーンで動力を伝達する方法は古くから行われていた。この方式で変速までも行おうと考案されたのがCVTだ。
オランダのDAF社は1959年、コンパクトなファミリーカーDAF600にCVTを搭載した。ドライブシャフトの末端のベベルギヤの両端にプーリーを設け、それと左右に分割されたドライブシャフトにセットされた被駆動プーリーをゴムのVベルトで繋いだ。
油圧によってプーリー間の幅を制御する変速機構を持つのはベベルギヤ両端に設けられた駆動プーリーのみで、変速比幅は狭いものだった。
DAFの技術者だったファンドーネ(Josephus Hubert van Doorne)はVベルトに代えてスチールベルトを用いる方法を考案し、スバルジャスティが市販量産車として世界で初めてそれを取り入れた。
―― CVTの金属ベルトの構造。2列のスチールリングにエレメントと呼ばれるコマが組み合わされる。動力の伝達はチェーンと異なり、押すことで伝える。
―― 発進や低速時は入力プーリーの間隔を開き、出力プーリーの間隔を狭めて変速比を低くする。高速走行ではその反対の制御を行い、変速比を高くする。プーリーの間隔は油圧によって制御する。
CVTの変速メカニズム段数のない変速が大きな特徴
プーリーを2個、向かい合わせ、それを金属ベルトで繋いだのがCVTの基本メカニズムだ。複雑な油圧回路やプラネタリーギヤユニットを持ったステップATに比べると、きわめてシンプルな構成だ。プライマリープーリー、アウトプットプーリーのいずれも軸方向に移動する油圧ピストンとセットになり、ピストンの移動によってプーリーの間隔を広げたり、狭めたりすることで変速する。
ベルトは2列のスチールリングと金属製の多数のエレメントで構成されている。コグドベルトや補機駆動のサーペンタインベルトは引くことによって力を伝えるのに対し、CVTの金属ベルトは押す方向に力を伝える。
リバース用としてインプットシャフトとプライマリープーリーの間にプラネタリーギヤユニットが挿入される。エンジンとCVT間の断続を行うクラッチも必要だ。初期のジャスティCVTでは電磁クラッチが用いられたが、現在はステップATと同様のトルクコンバーターが用いられている。変速制御にはアクセル開度センサー、スロットルポジションセンサー、エンジン回転数センサー、水温センサーからのデータが用いられ、運転状況に合った油圧制御が行われる。
CVTの大きな特徴はエンジンを効率の高い部分で使えることと、加速時に出力回転数を保持できることだ。ステップATではギヤが選択されるたびにいったん回転が下がり、そこから上昇に入るが、CVTではそのロスがない。
道路状況に合わせた変速プログラムはステップATと同様で、登坂、降坂をコンピューターが判断して、無駄なアップシフト、ダウンを制限している。 無段変速ながら、その範囲で変速比を区切り、シーケンシャルでマニュアル操作ができるものの他、ステアリングの裏にパドルを設け、ドライバーの意思に応じて駆動力を引き出し、ドライビングを楽しめるものもある。
―― ジャトコが開発した副変速機を内蔵したCVT。変速比幅を大きく取れるということの他、プーリーをコンパクトにでき、軽量化が可能になった。
―― ユニットのコンパクト化の他、プーリーが小径になったことによってCVTオイルとプーリーの干渉も避けられる。これによって抵抗が削減される。
―― スバルが採用するのはチェーンによる方式。複数のコンパクトなチェーンを組み合わせている。こちらは引くことで動力を伝達する。高トルクに対応できる。
進化を続けるCVT、変速比幅が大きく向上
一見単純な構造のCVTだが進化を続けている。小・中トルク対応CVTでは小径プーリーと副変速機の組み合わせでコンパクト化と変速比幅を拡大するのが代表的なものだ。高トルク対応型ではプーリーの軸径の縮小、ベルトの改良によってプーリーの外径を変えることなく変速比幅を向上させている。初期のCVTの変速比幅は5程度だったが、今は7を超え、8.7に達しているものもある。
CVTの主流は金属ベルトを使用したものだが、スバルはチェーンを用いたリニアトロニックを使用する。ベルトとチェーンの大きな違いは動力の伝達方向だ。ベルトが押す方向へ力を伝えるのに対し、チェーンは引く方向へ力を伝える。大トルクに対応できるのが一番の特徴で、ハイブリッド用としても用いられている。
大トルク対応として開発、トロイダル式CVT
―― 大トルクに対応できるCVTとしてNSKが開発し、セドリックに搭載されたのがトロイダル式CVT。ローラーの角度を変えることで無段変速を可能とした。同種のものとしてイギリスのトロトラック、NTNなどが開発に参入したが、トロイダル式CVTは今では過去のものとなっている。
金属製ベルトのCVTを世界初搭載した量産車、スバル・ジャスティ
世界で初めて量産車に金属製ベルトを使用したCVTを採用したのが、スバルのジャスティ。1987年のことだった。現在のCVTの隆盛など思いも及ばない時代のことだった。
―― スバル ジャスティ
スバル・ジャスティに搭載されたCVT。オランダのファンドーネ社の特許によるもの。プーリーの間隔を調整することによって無段階の変速が可能になった。
―― スバル・ジャスティに搭載されたCVT。
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みんなのコメント
スバルは長くECVTとしてジャスティから軽自動車までは採用していましたね。少し故障が多いのと燃費が悪い印象を受けました。今のCVTは本当に良くなっていると感じますね。
今は進化してそんなことはないね。