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日産の高度成長期を支えた生産拠点がEV電池の聖地に!【AESCジャパン座間工場訪問記】

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日産の高度成長期を支えた生産拠点がEV電池の聖地に!【AESCジャパン座間工場訪問記】

座間はグローバルEV産業の聖地

「是非、座間(ざま)工場にいらっしゃって下さい」。日産リーフ向け等、車載電池メーカーとして知られるAESCジャパンから、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)向けの勉強会実施の通知が来た。

【画像】EV電池の聖地に!AESCジャパン座間工場 全8枚

電車で行く場合、都心からは東急田園都市線の終点、中央林間駅からタクシーで10分ほど。また、横浜市街地方面からは相鉄線大和駅で小田急江の島線に乗り換えて南林間駅へ。そこからバスで10分ほどの位置にある。

到着したのは、日産自動車・座間事業所。もともと、1965年に車両の最終組立工場として立ち上がり、サニーやダットサントラック等の商用車を累計1124万台生産し、1995年3月に車両生産を中止したという、日産の高度成長期を支えた生産拠点だった。

現在は座間事業所として、新型車の量産試作、プレス金型、車体組立設備、樹脂整形金型の製作・設置、そしてEVやeパワー等のモーターやインバーターの開発拠点になっている。

ここでリーフに対応した電池の開発と製造設備が始まったのが、2007年。日産自動車とNECトーキン(当時)の合弁企業として、旧AESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ社)が設立された。

EVは1900年代初頭から、アメリカでタクシーとして登場するなど歴史は古いものの、電池技術の革新的な進化が起きる1990年代まで、小規模事業者が少量生産する『特殊なクルマ』という位置付けだった。

それが、日産リーフと、三菱i-MiEVの登場により、乗用車市場の道を切り開いた。つまり、ここ座間事業所の敷地内にある、AESCジャパン座間工場は、『グローバルEV産業の聖地』だと言える。

製造現場を視察

その後、2019年に日産から中国の再生可能エネルギー関連企業のエンビジョングループにバッテリー事業がすべて譲渡されたが、現在はエンビジョングループの他、日産を含む複数のグローバル投資家から投資を受けており、2023年にAESCジャパンに社名を変更した。

今回施設した座間工場の生産能力は3Gwhで、同社がGEN4(第四世代)と呼ぶNMC(3元系リチウムイオンバッテリー)を、日産リーフの他、軽EVの日産サクラと三菱eK X EV、そして三菱アウトランダーPHEV向けに供給している。NMCとは、正極の主成分である『ニッケル・マンガン・コバルト』を指す。エネルギー密度が高く、航続距離が長いことが特徴だ。

製造工程は、正極と負極の構成部材を混合するスラリーミキシングから始まる。これをコーティング、コンプレッション(圧縮)してロール状にする。ここまでの工程は、AESCジャパンの神奈川県相模原工場で行う。

座間工場では、このロールから電極を切り出し、正極・セパレータ・負極を積層する。それから電極となる部分を溶接して、全体をラミネート素材で包む。ここに、液体の電解質を注入して、セルの形となる。

その後、充放電を行い、さらにエージングと呼ぶ電池内の化学反応が安定化するまで約2週間、専用機器によって保管する。そしてセル自体を積層し、モジュールとして組み立てる。

こうしたセルの積層やモジュールの方式を改善したことで、例えばリーフの場合、車体下部のスペースにより多くの電気容量の電池を搭載することが可能になった。

今後のEV市場の行方

一連の工程は、細かくデータ管理しており、化学反応に影響を及ぼす湿度・温度の変化への対応について、同社の知見が集積していることが分かった。

AESCジャパンでは、NMC(3元系リチウムイオンバッテリー)の他、近年需要が急拡大している定置型電源向けにLFP(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)の生産も強化しているという。現状で、同社のグローバル生産において、NMCとLFPはほぼ半分ずつだ。今後は、LFPはエネルギー密度の引さも技術的に解消されて、EV市場の主要トレンドにあると、AESCジャパンでは予想している。

今回の視察では、同社幹部による各種のプレゼンテーションがあった。その中で、EV市場動向についても詳しく触れた。

それによると、中長期的にはEV市場は拡大することが確実視されているものの、主要な国や地域でのEV販売台数はここへきて若干の減少傾向に触れている状況をグラフで示した。

これは、欧州では、欧州グリーンディール政策の政策パッケージ『Fit for 55』の実効性に対する各国の課題認識や、ドイツがEV購入補助金を停止等が影響している。また、アメリカではトランプ第二次政権により、バイデン政権が実施したIRA(インフレ抑制法)動向の不確かさなど、様々な政治的な要因が背景にあることが分かる。

また、経済安全保障の観点では、材料の採掘や精錬などバッテリーサプライチェーンの中国依存度が大きいことも分かる。そのため、日本を含めて国や地域で地産地消型のバッテリーサプライチェーンの構築を強化していると、AESCジャパンでは分析している。そのほか、PHEV(プラグインハイブリッド車)については、中国市場で謙虚な成長が見られるなど、当面は成長率が高まると見る。

今回は、貴重な体験としてGEN4の電池製造工程の一部を見たが、次回は最新設備を有する茨城工場でGEN5の製造工程を拝見したいものだ。

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