プロ・サク待望 ハイブリッド登場
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
【画像】トヨタの商用車 サクシード/ハイラックス/ハイエース【画像】 全102枚
photo:Hidenori Hanamura(花村秀典)
クルマを趣味的に捉えている人にはあまり縁のない車種かも知れないが、仕事で使用しているという人はけっこういるはず。プロボックスとその兄弟車であるサクシード。
慣れ親しんだ人は“プロ・サク”なんて呼んでひとくくりにしている、いわゆる商用車、ライトバンである。2002年登場の初代では、プロボックスとサクシードに多少の形状的な違いがあったが、現在はほぼ同一になっており、販売店などの関係によって車名が使い分けられている。
初代は商用車らしく2002年から2014年まで実に12年間も作り続けられ、一方初代のビッグ・マイナーチェンジ的な成り立ちを持った現行は2014年に登場し、まだモデルライフの半ばと言ったところだろう。
そんなプロ・サクをなぜこのタイミングで紹介するのかと言えば、今年初めに待望のハイブリッド・モデルが登場したからである。
ちなみにプラットフォームはヴィッツ用に手を加えたもので、駆動方式はFFだが4WDモデルも存在する。以前は1.3Lガソリン+MTというライトな仕様のモデルもあったが、現在は1.5Lのガソリン・エンジン+CVTトランスミッションが標準となっている。
今回追加になったハイブリッド・モデルはトヨタ・アクアのパワートレイン(THSII)を組み合わせたもの。リアのシート下にバッテリーとアクアのものより大型のガソリンタンクが配置されることもあり、ハイブリッドは2WDのみとなる。
社用車 性能以上に“価格”が重要
大トヨタが作る商用車であり、その省燃費性能がこのクルマを営業車としている会社の収支のみならず日本の経済全般に影響を与えるような1台でありながら、今までハイブリッドがなかったことは意外といえる。
燃費のデータはJC08で比べると、プロ・サク・ハイブリッドの燃費は27.8km/Lで、1.5Lガソリン・モデルの19.6km/Lと比べればその差は歴然としている。WLTCモードでは22.6km/Lを記録する。
営業車と言えばエンジン掛けっぱなしで昼寝みたいなシチュエーションも当たり前なので、両者の実燃費にはさらなる開きが生まれる可能性もあるわけだ。
それでもプロ・サク・ハイブリッド登場が遅れてきた背景には、コスト的な難しさが大いに関係している。すでにこのクルマを社用車として使用している会社の身になってみれば、どんなに省燃費性能が優れていても、新車価格が高かったらなかなか省燃費の恩恵を受けることができないのだから。
ちなみに最も廉価なモデルは、1.3Lガソリン、2WDで139万9200円。
1.5Lガソリン、2WDは、157万8500円だが、そのハイブリッド・モデルは+27万円ほどに抑えられている。
シエンタを例にとればハイブリッドとノン・ハイブリッドの価格差は36万円ほどなので、軽く皮算用しただけでも「プロ・サクのハイブリッドはお買い得!」という見方ができるわけだ。
恩恵は走りの高級感
果たして、プロ・サクは乗ってどうなのか? と問われると答えに困ってしまうのだが、他のあらゆる乗用車との比較で言うのであれば「どこに面白さを感じれば良いのだろう」というのが正直なところだ。
そもそも、徹底したコストダウンの旗手であるトヨタ自動車の中でも特にシンプルを追求したクルマに味を見出すのは無理がある。プロ・サクは食品でいえば小麦粉とかサラダ油のような原材料的な存在なのかもしれない。
とはいえ、MT車両でワンメイクのレースが開催されているクルマなので、タフネスやクセのないドライバビリティ、軽い車重といった素材としての良さは豊富であり、今回はそこにハイブリッド・システムがプラスされている。
1.5Lガソリン・モデルの最高出力は109ps。だが、対するハイブリッドはエンジンが74ps、モーターが61psなので、システム総計ではかなりパワフルな計算になる。
だが実際に市街地を走ってみると、数値では表現できないハイブリッドならではの上質さが印象に残った。
“今さら”ではあるが、モーターでスゥーっと静かに走り出し、そこに滑らかに立ち上がったガソリン・エンジンのパワーがプラスされる所作は、洒落っ気の一切ないプロ・サクの見た目とドライバビリティに、これまでにない高級感を与えているのである。
サクシード 内装は?
おそらく営業車はストップ&ゴーが続く街中を走る機会も多いだろうし、帰り道はお積まれモードのドライブになることだって珍しくないだろう。そんな時ハイブリッドの賢い立ち振る舞いはストレスを取り除いてくれるに違いない。
前述のようにシンプルに徹したクルマなのだが、それは“余計な加飾が一切ない”というだけで、“こんな装備があったらいいのに”といったモノは実はてんこ盛りになっている。
その代表といえるのがダッシュ中央付近に仕込まれているインパネテーブルだろう。A4サイズのパソコンを置ける引き出し式のテーブルは、車内で過ごすお昼の時間にも大変重宝するはずだ。
またスマホなどを収納するマルチホルダーやドリンクホルダー、大型ドアポケット、買い物フック、小物入れ、スマホ充電用のUSB端子といった使えるギミックが少しの無駄もないように散りばめられている。
先ほどは“小麦粉やサラダ油”と表現したが、この日本的機能追及のスタンスは、昭和の時代に流行った多機能の筆箱を彷彿とさせる。
前席/後席を検証
もちろんレバー操作1つで完全にリクライニングして“ひと眠り”できるフロント・シートの座り心地も悪くないし、ハイブリッドには運転席シートヒーターもオプション設定されている。
一方リアシートは足元スペースこそしっかりと確保されているが、かなり味気ない雰囲気と座り心地であることは否定できない。だがクルマの性格を考えれば前席2人乗りでリアシートバックは倒して荷室として使うというパターンが主流だと思われるので、これは問題にはならないだろう。
ラゲッジスペースは広さと使い勝手ともに申し分ない。テールゲートも大きく開くしホイールハウスの出っ張りも小さめ、フロアもフラットなので見た目以上に積めそうな気がする。
営業車じゃ、もったいない?
徹底的にビジネス・ユースを考えて作られたプロ・サクだが、毎日使うクルマだからこそ安全装備は欠かせない。
ハイブリッドのみならず全てのグレードでトヨタ・セーフティ・センスが標準で備わっている。オートマティックハイビームや車線のはみだしを警告するレーンディパーチャーアラート、そしてレーザーレーダーと単眼カメラ式センサーによる歩行者検知機能付きのプリクラッシュセーフティがそれである。
こういった一連の充実した装備と使い勝手、そしてリーズナブルな価格を考えると、ただ単に営業車として片づけてしまうのはもったいないという考え方もあるだろう。余計なものは一切いらない、無印良品のようなクルマを求める人ならば、これを自家用車とする選択肢も充分にアリだと思うからだ。
ボディカラーはライトグリーンメタリックとボルドーマイカメタリックに営業車らしからぬ色気があるだけで、あとの4色はいつもの生真面目な感じ。ホイールも全て鉄チンという味気なさだが、性能とクルマの雰囲気という点では問題ないはずだ。
純正オプションは色々と揃っているが、それらを付けてしまうとプロ・サクのシンプルな良さが削がれてしまう気がする。とはいえルーフラックだけはクルマのコンセプトに符合しつつ、SUV的な雰囲気をプラスできると思うのだが……。
「買い」か?
実際に触れてみると「なるほどよく出来ている!」となること必至のプロ・サクだが、営業車ではなく自家用車として「買いか?」と言われると、どうだろう。
言い方は悪いが、このクルマは多くの営業車と同じようにただ便利なだけなのだ。これはカプセルホテルや駅近マンション、コンビニ、ユニクロや無印と一緒で便利ではあるが、日常生活をとりたてて豊かにしてくれるものではない。
同じような出自でありながら「豊か」なクルマの代表例がルノー・カングーである。カングーも彼の地では立派な営業車として活躍しているが、我が国ではお洒落なSUVとして日常を華やかに彩ってくれる1台としても人気だ。1.2Lターボ+MTのカングーは走らせても実にスポーティなだけでなく、ちゃんとフランスというお国柄を感じさせてくれる。
という点では確かにプロ・サクも勤勉実直な日本人サラリーマンをそのままクルマにしたような感じかも。日本人がカングー好きであるように、和装好き、日本家屋好きの日本在住ガイコク人には受ける存在に違いない。
買って損はないクルマだし、今回のハイブリッド・モデル追加で「お得感」がさらに高まったことは確か。敢えてプロ・サクを選ぶというのも個性の1つだと思う。
トヨタ・サクシードTXのスペック
価格:196万5600円:
全長×全幅×全高:4245×1690×1525mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTCモード):22.6km/L
CO2排出量(WLTCモード):103g/km
車両重量:1160kg
エンジン:1496cc直4
最高出力(エンジン):74ps/4800rpm
最大トルク(エンジン):11.3kg-m/3600-4400rpm
最高出力(モーター):61ps
最大トルク(モーター):17.2kg-m
ギアボックス:電気式無段変速機
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みんなのコメント
噂では60km走った個体があったとも
マイチェンでMTとディーゼル無くしたのはちょい残念の気もします。
でって かけっぱなしだと あまりHVのメリットは無いんだけど?
(多少は違うだろうけども)