昨季2023年にERCヨーロッパ・ラリー選手権へのフル参戦を開始し、開幕戦勝利から2位4回、3位1回の安定した戦績で見事にシリーズチャンピオンを獲得したヘイデン・パッドンが、タイトル防衛に向けERCへの継続参戦を表明。引き続きイタリアのBRCレーシングチームとの共闘で、ピレリを装着したヒョンデi20 Nラリー2をドライブする。
一方、その対抗馬と期待されるWRC世界ラリー選手権経験者のマッズ・オストベルグも、一時は「引退も考えた」という深刻なスランプからの復活勝利を契機に、同じくミシュランを履くシトロエンC3ラリー2でのシリーズ復帰を宣言した。
トヨタGRヤリス・ラリー2×MRFタイヤが実現。昨季総合2位のマルティン・セスクが王座挑戦へ/ERC
ニュージーランド出身の“Kiwi”であり、国内ラリー選手権はもとよりWRCへのチャレンジでも実績を重ねてきたパッドンは、昨季より本格的に欧州最高峰シリーズへの挑戦を決断。カレンダーに組み込まれた各イベントの経験不足というハンデも跳ね返し、最終戦を残してERCタイトルを獲得するという輝かしい戦績を収めた。
「僕たちはニュージーランドの夏の間、ERCヨーロッパ・ラリー選手権への復帰を確認するため懸命に取り組んできた。BRCやヒョンデ・モータースポーツ、地元法人のヒョンデ・ニュージーランド、そしてピレリのサポートを得て、こうして継続参戦できることを本当にうれしく思っている。タイトル防衛に挑むべく、今季もヨーロッパに向かうつもりだ」と、欧州域外出身者として初のERCチャンピオンに輝いたパッドン。
「ヨーロッパ選手権は僕にとってラリーそのものだ。ERCは僕のキャリアにもっとも適していると言える。僕らは昨シーズン8戦のうち半数以上のイベントには参戦したから、少なくとも12カ月前よりは多くの経験を積んでいる。でも今季はグラベル(未舗装路)よりターマック(舗装路)のイベントが多く、僕らにとって初めてのラリーになる」と懸念する点も挙げたパッドン。
「でも、過去数年間でターマックでのパフォーマンスは大幅に向上したし、僕たちはその挑戦にも前向きに取り組んでいる。ターマックでもグラベルと同じくらい競争力を発揮できるよう全力を尽くしていくよ」
ペアを組んで実に19年目のシーズンを迎えるというコドライバーのジョン・ケナードに関しても「ジョンがふたたびクルマに戻ってくるのは素晴らしいこと」だと、そのパートナーシップの強固さを地元の“名産品”にも例える。
「一緒に仕事をして19年目になるが、それはまるで高級ワインが年月を重ねるごとに良くなっていくようなものだね(笑)。僕らはふたりともあの舞台に戻って、昨年の経験を有効活用できることに興奮しているんだ。今年もいくつかのラリー、競争力が必要な場面、そしてチームとの仕事で何が期待できるかを学びながら全力で取り組んでいくつもりさ」
昨季のERCチャンピオン獲得に貢献したBRCには自身が運営するPRG(パッドン・レーシング・グループ)の一部クルーも合流し、加えてヒョンデ・モータースポーツ・カスタマーレーシングやピレリの貢献が大きかったことも指摘する。
「昨年、65歳のジョン(・ケナード)と僕がヨーロッパ各地のさまざまなERCイベントに初めて出場した際、BRCの全員と一緒に仕事をするのは素晴らしい経験だった」と続ける36歳のパッドン。
「BRCとヒョンデ・モータースポーツ、そして地元ニュージーランドのPRGの協力体制により、ヒョンデi20 Nラリー2の開発を進めることができた。そして2010年以来、ピレリが僕のキャリアにおいて大きな役割を果たしてくれたことを誇りに思っている。昨季はピレリがチャンピオンシップ全体で最高のオールラウンドタイヤであることを証明できたし、今季もピレリが成功への最高のチャンスを与えてくれると感じているよ」
■オストベルグのシトロエンはミシュランタイヤを装着
そんなパッドンとは同級生の36歳でもあるオストベルグは、タイトル候補の一角として2023年をスタートさせたが、初のERCフルシーズンでは厳しい戦いを耐え抜く時間が続いた。しかしハンガリーでの最終戦でキャリア2勝目を飾った瞬間、そのフラストレーションは「すぐに消え去った」と安堵の言葉を漏らしていた。
そんなノルウェー出身のオストベルグは、今季シトロエン・ハンガリーの支援も得て同国に拠点を置くタガイ・レーシング・テクノロジー(TRT)が用意したシトロエンC3ラリー2でフル参戦する。
「参戦体制をまとめるのに多大な努力が必要だったが、シトロエン・ハンガリー、シトロエン・レーシング、ミシュラン、TRTのサポートが今季をスタートさせる鍵になった」と語ったオストベルグ。
「スポンサーの継続的なサポートとパトリック(・バース/コドライバー)との関係はすべて、ERCシーズン全体をまとめるレシピの一部さ。僕らがERCを始めて今年で2年目になる。僕らのパッケージは強力であり、ラリーでの勝利だけでなくチャンピオンシップタイトルを目指して戦うことに疑問の余地はないね」
昨季はチームMRFタイヤの一員としてインド製コンパウンドの開発にも貢献したが、今季のシトロエンにはWRC時代にも馴染みのあるミシュラン製ラリータイヤが装着される。
「ミシュランとしても、この2024年のERCキャンペーンにフル参戦できることを誇りに思う。ERCの誇る各種の路面条件に挑戦し、ミシュランのカスタマー向けレーシング/ラリータイヤの守備範囲を証明できるからね」と語るのは、同社モータースポーツ部門のERCマネージャーを務めるティム・ホア。
「これは競技者が自由にタイヤを選択できる世界最高レベルのラリー選手権であり、我々は勝つためにここにいる」
また、昨季のERC3チャンピオンでこれまでMスポーツ製のフォード・フィエスタ・ラリー4(FF)と同ラリー3(4WD)をドライブしてきた29歳のジョン・アームストロングが、今季より同社のサポートを得て「夢の」ステップアップの機会を与えられることに。新たにMスポーツ・ポーランド製のフォード・フィエスタ・ラリー2で全8戦にエントリーする。
「こうしてラリー2マシンのステアリングを握って丸1年を戦える機会を得ることができ、夢が叶ったような気分だ。この機会を与えてくれたMスポーツやすべての親しいパートナーのサポートにとても感謝している。国内のラリーコミュニティを代表できることを本当に誇りに思うよ」と北アイルランド出身で同国ラリーアカデミーのプログラム生でもあるアームストロング。
長年にわたり多くの若手ドライバーのキャリアを指導してきた本国MスポーツUK会長のマルコム・ウィルソンも「昨季のジョンの功績は、我々がM-Sportでサポートしようと努めている才能と可能性を体現していた」と期待を寄せる。
「我々の哲学はつねに若いドライバーを発掘して育成し、最高レベルのラリーで活躍するためのプラットフォームを提供することに重点を置いている。ジョンのこれまでの進歩と2024年のERCに向けた新たな章は、このスポーツにおける才能と野心を育むという我々の伝統の証だ」
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