全14大会、28レースで戦われてきた2024年シーズンのFIA F2も、この第14戦ヤス・マリーナ(アブダビ)が最終ラウンド。TOYOTA GAZOO Racing(TGR)WECチャレンジプログラムのドライバーとしてフル参戦してきた宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ)にとってヤス・マリーナは、昨年の12月に初めてFIA F2のテストした思い出の地だ。
「2023年末のポスト・シーズンテストでコースを知っていたこともあり、予選ではいい感じで8位を獲得することができました」
宮田莉朋、ARTグランプリに移籍。2025年もFIA F2への挑戦が決定
ただし、さまざまなメニューをこなさなければならないテストではショートランが中心で、レースのようなロングランを行うことはほとんどない。
「ライバルたちはFIA-F4やフォーミュラ・リージョナルの中東シリーズでこのサーキットを走っているので、レースに向けたクルマのセットアップの煮詰め方だったり、タイヤの使い方に関しては彼らとの差がなかなか縮まらないままレースが終了しました」
それでも宮田は最終戦でフリー走行からフィーチャーレースまでの4つのセッションをすべてトップ10内のスピードを披露した。フリー走行を6番手、予選を8番手と好位置で終えた宮田は、リバースグリッドでスタートを迎えるスプリントレースを3番グリッドから迎えた。
それだけに、スプリントレースでは初表彰台のチャンスも見えたが「練習の段階からスタートがうまくいかず、スプリントレースも出遅れてしまい、ターン1を3ワイドのアウト側で迎えました。イン側にマシンがいるのでステアリングを切っても曲がれない状況でポジションを下げてしまいました」と、宮田は振り返る。
「続くターン6に向けてはガブリエル・ボルトレート(インビクタ・レーシング/マクラーレン育成)やポール・アーロン(ハイテック・パルスエイト)らとポジションを争っていました。ターン6はタイトな左コーナーなので僕としてはイン側を開けたくはありませんでした」
「イン側からターンインを迎えましたが、前にいたビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/アルピーヌ育成)が想像以上に減速していて、僕のノーズとマルタンスのテールランプが当たってしまいました。僕の判断ミスでもあったと思います」
このマルタンスへの追突により、7番手でチェッカーフラッグを受けた宮田は10秒のタイムペナルティで11位に降格。この週末でスプリントレースのみ、トップ10に入ることはできなかった。
続くフィーチャーレースではスタートの位置取りに反省点があったとしつつも「やり切った」末に入賞圏内の10位を守り切り、シーズン8度目の入賞で最終ラウンドを締めくくった。ただし、宮田にとってFIA F2初挑戦の2024年シーズンは、まったく納得のシーズンではなかった。
「正直に言えば、まったくスタートが切れないまま、シーズンが終わった感じです。今回のヤス・マリーナや初入賞したメルボルンのように、ライバルとの経験の差が少ないサーキットではいい戦いができていたことは自信となりました」
F1のアブダビGPのフリー走行1回目には多くのFIA F2ドライバーが参加した。それを宮田はどのような思いで見ていたのだろうか。
「F1に行くには、このFIA F2が最も近いカテゴリーであることは確かです。このFIA F2で光る走りやスピードを見せることができれば、日本でレースしているよりも、FIA F2のほうが明らかにF1へ行くチャンスは大きい。僕は今年、この年齢でそのFIA F2で戦うチャンスを与えてもらいました。F1へ挑戦するという夢を後押ししてくれたモリゾウさんをはじめ、サポートしていただいているTGRの皆さんには感謝しています」
なお、レースウイーク後の12月9日に行われた取材会においては、12月11~13日にヤス・マリーナ・サーキットで行われるFIA F2ポスト・シーズンテストへの参加の有無についての質問が飛んだ。
ただ、宮田は「ドバイで日光浴ですね」と、その時点での回答をはぐらかした。取材会の最後、宮田は「もし、2025年もFIA F2に挑戦できるのであれば」と付け加えてこう語った。
「2024年以上の結果を残すことが僕の仕事です。2024年シーズンを戦って、FIA F2は日本とはレースへの臨み方や走りも含めて、全部が違うことが明確になりました。そこは大きな収穫だと思っていますし、そこを乗り越えた先には素晴らしい未来が待っていると思います」
そう宮田が語った翌日の12月10日、日本時間17時に宮田の2025年ARTグランプリ加入が発表され、宮田のFIA F2参戦継続が明らかになった。
ARTグランプリは2024年、マルタンス、そしてザク・オサリバン(第11モンツァ戦まで)とルーク・ブラウニング(第12戦バクーから)を起用し、チームランキングではロダン・モータースポーツを2点上回る7位でシリーズを終えている。
ARTグランプリ加入が後押しとなり、宮田のFIA F2参戦2年目は飛躍の1年となるのだろうか。2025年シーズンも、FIA F2からは目が離せないに違いない。
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