スペシャリティカーの先駆、それがセリカだった
1970年代、日本車は個性化の時代に突入する。その先駆けは1970年12月に誕生した初代セリカだった。日本初のスペシャリティカーであるセリカは、セダン主体だった日本車に新風を吹き込む。コンセプトは、1964年に登場した米国フォードのマスタングを参考にしており、スポーツカーに匹敵するスタイリングと走りを、手ごろな価格で実現したのがポイントだった。価格設定のカギは、メカニカルコンポーネントの合理化。セリカのシャシーとパワートレーンは、同時登場のセダン、カリーナと共通化が図られ、さらにカローラとの共用パーツを増やす手法が採用された。
【20世紀名車】初代セリカ、国内登録累計38万5000台を記念したメモリアルモデル「1977年ブラックセリカLB2000GT」の肖像
初代セリカは1973年4月、大型リアゲートを持つリフトバック(LB)をラインアップに加え、人気に拍車がかかる。中でもLBに新たに設定された2000GTは、パワフルな18R-G型2リッター直4DOHCユニット(145ps)を搭載。最高速度205km/hを誇り、トヨタのスポーツフラッグシップの座を確立した。
1975年11月には、ホイールベースを70mm延長し、前後トレッドを拡大したのびやかなフォルムに改良。インパネ形状を刷新し、パワーユニットを排出ガス規制に適合させたクリーンエンジンに一新する。2000GTの最高出力は130psにデチューンされた。それでも、2リッタークラス最速を誇り、国産スポーツ代表車の座を堅持していた。
初代セリカは、国内をはじめ、海外市場でも大好評を博しベストセラーカーに成長する。1977年3月には生産累計100万台を突破。同年6月、国内登録累計38万5000台を達成した。その記念で誕生した限定車がブラックセリカだった。ブラックセリカはリフトバックの2000GTをベースに、ボディカラーを専用色のブラックで仕上げ、内装は明るいアイボリーで統一。輸出仕様のシート地と、大型衝撃吸収式バンパー、電動フェンダーミラーを特別装備していた。販売台数は385台限定。ボディサイドに製造シリアルナンバーが入り、コンソール部にはオーナーのネーム入りプレートが装着された。
初代セリカは1977年8月に2代目に移行する。したがってブラックセリカは、初代の最後を飾るメモリアルモデルでもあった。
写真のブラックセリカは、385台のうち48番目に製造された車両。ボディの状態は良好である。塗装は、いまなお十分なツヤをキープしている。ボンネットや右ドア部などに小さなエクボ傷はあるものの、大きなへこみはなくサビは未発生。ウィンドウ回りのゴム類とドア部のシーリングもコンディション良好だった。ブラックセリカの専用アイテム(ボディ下部のGTストライプ、輸出仕様サイドプロテクションモール、製造ナンバーステッカー)はすべて健在。ホイールは、標準の13インチから14インチにアップした社外アルミを装着していた。
アイボリー色の室内はラグジュアリーな印象。ニットテープヤーンと呼ばれる素材で仕上げられたシートのクッション性はいい。ステアリングは本革巻き。すべてのメーター類と、AM&FMラジオは正常に作動。ブラックセリカ特別装備の電動リモコンミラーも正確に機能していた。ダッシュボードに割れ、そして気になる汚れはない。
走りは現在の水準でもしっかりとしている。公害対策が施されたエンジンは、吹き上がりこそややマイルドだが、2000rpm前後から豊かなトルクを生み、交通の流れをリードする。足回りはロードホールディング能力に優れ、ブレーキは信頼性が高かった。ビルトイン式ACをはじめ快適装備は最新モデルとほぼ同等。視界は広く運転姿勢が自然にとれる。しかもなかなか速い。
実際に触れ、初代セリカ躍進の原動力が、スタイリッシュな造形と走りの高い完成度だったことをあらためて実感した。オリジナル状態を維持したクルマは近年、評価が高い。中でも、限定モデルのブラックセリカは別格である。(真正面)
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