この記事をまとめると
■伊藤かずえさんが愛車のシーマをレストアしたことが話題となった
「気むずかしい」「エンジン始動すら大変」 旧車乗りだけが味わえる「それでも愛すべき」キャブレターの魅力6つ
■実際クルマのフルレストアを行うのは簡単なことではない
■かかる費用や時間について解説する
フルレストアは決して簡単なことではない
伊藤かずえさんの日産シーマがレストアされた記事が大量にネットにアップされたのは、記憶に新しいところ。それまではクルマ好きのなかでも旧車好きにしか馴染みがなかったレストアという言葉が、広く認知されたのは喜ばしいことだ。ただ、シーマは特別というのが本音で、正真正銘のフルレストアながら8カ月で仕上げられているのは驚異的。聞けば専任の作業者がかかりっきりだったうえに、意外にもバックアップするスタッフがいたというので、さもありなん。これは例外中の例外で実際は膨大な手間と費用がかかる。
フルレストアを前提として、まずは手間から見ていくと、エンジンなどの大物は下ろすだけでなく、すべての付属物を取り外してドンガラ化。完璧に行うなら、足まわりも外して、台車の上に据え付ける。内装ももちろんすべて取り外す。そのうえで腐ったところを切ったり貼ったり。新品のボディパネルというのはないので、貼るのは型取りして叩いて形作ったパーツだ。これを溶接などで付けていく。もちろん交換しない部分でも凹んでいるところは叩き出す。そのうえで下まわりも含めて、全塗装だ。
内装もシートや内張り、ダッシュボードの割れ補修、メーターのオーバーホールなど。もちろんエンジン、ミッション、デフ、足まわりはすべてオーバーホールする。電装についても、大物だとオルタネーター、ヒーター、ヒューズまわり。さらに配線を作り変えるところまでやる。
ザッとだが、作業的には多岐に渡るというか、メカ、板金塗装、内装となると、分業する部分も出てくるのが大変。1年ぐらいはかかるのは当たり前で、3年かかったというのはザラ。さらにはあまりの面倒さに業者も放置していつできるのやら、という例まであったりする。
莫大な費用がかかることも!
そのやる気の源泉となるのが費用だ。厳しい言い方をさせてもらえれば、この点にユーザー側の甘さがある。自動車関係の整備費用は時間工賃で算出するのが通例で、簡単に言ってしまえば時間工賃に作業した時間をかけて請求額を出す。新車ディーラーでは、予め指数というのがあって、それを時間工賃にかけて出しているが、古いクルマの場合、やってみないとわからない部分があって、膨大な時間がかかることも。フルレストアならなおさらだ。
かかりっきりで1日8時間作業して、時間工賃が8000円だとすると、6万4000円。1カ月25日稼働だとすると160万円となる。さらに3カ月かかると480万円、半年で960万円。ちなみに8000円という時間工賃は、人手不足の昨今、かなり安い部類に入るので、実際はもっとかかる。しかもこれは工賃だけで、部品代、加工代、材料代などを考えると、雪だるま式に増えていくことになる。消費税だけでも莫大だ。
通常、パック料金ではないがグロスで安くすることもあるし、ほかの作業の合間にやることで安く抑えてはくれるのだが、この合間というのがクセモノで、結局放置につながってしまうのが定番パターンだったりする。もちろんそうなると、完成までの時間はドンドンと伸びていく。
と、手間と時間をザッと紹介してきた。そう考えると、フルレストアしたクルマを仕入れたという場合を除いて、百万円代前半の金額でのフルレストア車などというのは基本的にありえないことがわかるだろう。また安くやってもらえたという例もあるかもしれないが、ボランティアではなく、あくまでも商売なので、どこかで手抜きをしている可能性もある。こういったことがレストアのトラブルの背景にあるわけで、いずれにしても気軽にフルレストアを行ってはダメということがわかってもらえるだろう。
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みんなのコメント
誰でも知ってる事だ。
ランボやフェラーリもメーカーでやればそのくらい。
だから歴史的名車以外をフルレストアするって、採算合うよう行為じゃないんだよね。