もし、高度成長期時代に高級車ブランドを立ち上げたら？

Question

その昔の高度成長期のころ、センチュリーやプレジデントと言った、本格的な
ショーファードリブンの高級サルーンが登場しましたが、もしこの時代にトヨタ
日産が高級車ブランドを立ち上げて、ビッグ3や欧州車の高級サルーン市場に
「成長著しい、日本から挑戦」というスタイルで参入していたら、どうなっていたん
でしょうか？

Answer 1

大量生産と安価な大衆車販売に血道を上げていた
当時のトヨタや日産から
世界市場に打って出る高級車づくりは難しかったと思います。

実際、80年代までの海外における日本車のイメージは
「値段の割には品質がよく、アクセサリーが充実している」
といった程度のものです。
さらには70年代の2度に渡る石油危機から
小型で低燃費・・・という評価が
北米市場を中心に付け加えられます。

つまり、ちょっと前の韓国車、
現在の中国車のようなポジションです。
たとえば、そうした国のメーカーが
何の実績も持たないのに
いきなり高級車を市場に送り出したとしても
私は成功するとは思えません。
仮に高級車としての品質や機能、性能が
高かったとしてもです。

そもそも高級車は
大衆車に比べてそもそもの市場が小さいのですから
圧倒的なブランドバリューが必要です。

さらに言えば、
そんな歴史ある欧米の高級車ブランドでも
景気に左右されて販売が減少し
会社を傾かせてしまったり、
１つのモデルの失敗で会社が倒産したりと、
高級車ビジネスはなかなか難しいものがあります。

現在、高級車市場で人気を集めている
ロールスロイスやベントレー、フェラーリ、
アストンマーチン、ポルシェなどのメイクスも
背後にはパトロンとなる大メーカーがおり、
経営や新車開発をサポートしているわけです。

“高度成長期時代に高級車ブランドを立ち上げたら？ ”
とのご質問ですが
可能性がわずかにでもあったとするのなら
それはトヨタや日産などの巨大メーカーではなく、
プリンスやいすゞなどの下位メーカー
ではなかったかと私は考えます。
（いすゞはトラックでは大手ですが
乗用車販売はトヨタ・日産に
大きく水を開けられていました）

プリンスは和製BMWとでもいうべきメイクスで
国産車黎明期に独立懸架サスの
スポーティーサルーンを市場に投入するなど
ユニークなメーカーでした。
また、いすゞは国産車が米国志向だった
高度経済成長期の頃から欧州志向のクルマを作りを
しておりまして
少量生産の高級パーソナルカーの117クーペや
和製アルファロメオと呼ばれた
スポーツクーペのベレットなどを送り出していました。

ただ、これらのメーカーは販売力が弱く
国内市場が手一杯で輸出に力を注ぐほどの体力もなく、
さらには薄利多売で数の論理がモノを言う
国内市場ではシェアを次第に落として行き、
プリンスは日産に吸収合併
いすゞは乗用車市場からの撤退と
あいなってしまいました。

結局、バブル期までの日本車は
大量生産こそが正義であり、
ユーザーもそれに迎合していたことから
少量生産の高級車が作られ、
生き残る余地はなかったものと思われます。

現在でこそトヨタがレクサスブランドを
国内でも展開していますが
こちらも日本市場では
メルセデスなどの海外メイクスの前に
苦戦を強いられております。

結局、日本車は日本人に受け入れるような
高級車を作り出すことができなかったのかもしれません。