メルセデス・ベンツ Vクラス 「メルセデス・ベンツ流のおもてなしミニバン」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

大音 安弘
大音 安弘(著者の記事一覧)
自動車ジャーナリスト
評価

3

デザイン
5
走行性能
3
乗り心地
4
積載性
3
燃費
3
価格
4

メルセデス・ベンツ流のおもてなしミニバン

2025.10.1

年式
2024年10月〜モデル
総評
輸入車で唯一の高級ミニバンとなるVクラスは、その積載能力の高さと高級感あふれるデザインから、ハイヤーやタクシーとしても広く活用されている。最新仕様となるフェイスリフトモデルでは、そのニーズに応えるべく、よりプレミアムなデザインと乗り心地を改善するエアサスペンションの採用がトピックだ。用途に応じて選べるボディタイプは超ロングボディまでそろい、ファミリーカーやトランスポーターとしても魅力的である。一方で、同価格帯のメルセデス・ベンツと比べると快適性では劣る部分もある。その点を許容できるかどうかで、Vクラスに対する満足度は大きく変わるだろう。つまりメルセデス・ベンツの中でも特殊な存在であり、フィットすれば最高の一台だが、すべてのメルセデスモデルと同等の完成度を求めると不満も見えてくる。それが総合評価が高得点とならなかった理由であり、乗り手を選ぶ存在といえる。例えばインフォテイメントシステムもアップデートされてはいるが、一世代前のものがベースとなっている。ロングセラーモデルだけに、機能面で許容すべき点があることを理解しておく必要がある。
満足している点
欧州車で唯一の高級ミニバンである点。高級感と重厚さが増したスタイリング。仕様に応じて異なるフロントマスク。デジタルコクピットへのアップグレード。用途に合わせて選べる3タイプのボディ。すべての後席が着脱可能。テールゲートはガラス部のみ開閉可能。しっかりとした作りの後席。輸入車ミニバン唯一のFRレイアウト。パワーテールゲートを採用。エアサスペンションの採用。インフォテイメントモニターのタッチスクリーン化。
不満な点
フロアが高いため、国産ミニバンと比べると乗降性が劣る点。デジタル機能が最新仕様ではない点。後席は着脱可能だが、かなり重量があり取り外しが大変な点。巨大なボディのため、駐車場を選ぶ必要がある。
デザイン

5

今回のマイナーチェンジのポイントのひとつはデザインだ。周囲にメルセデス・ベンツらしい高級感を印象づけるべく、フェイスリフトを実施した。改良型のフロントマスクは2種類あり、オーナーカーを意識したスポーティなタイプに加え、Sクラスを彷彿とさせるボンネットマスコット付きのエクスクルーシブ専用タイプを用意する。コクピットデザインも刷新され、メーターはアナログ2眼式からフルデジタルに変更され、デザインと機能の両面で新しさが向上している。シートデザインはシンプルで、もう少しメルセデス・ベンツらしいゴージャスさがあれば望ましいが、シートの完成度そのものは素晴らしい。
走行性能

3

コクピットデザインは他のメルセデスに近いが、ドライビングポジションはワゴン的なものだ。SUVなど他のメルセデスと比べると、運転する楽しさはやや薄い。それでも「走る・曲がる・止まる」の基本がしっかりと作り込まれており、国産ミニバンのような柔らかさはなく、さすが欧州車と感心させられる出来となっている。標準ボディ以外はエアサスペンションを採用し、乗り心地が改善されているのも朗報だ。大きなボディでありながらも、優れた2.0Lディーゼルターボエンジンのおかげでパワフルな走りを実感できる。もちろんボディの長さに応じた運転への注意は必要となる。
乗り心地

4

Vクラスは、欧州ワゴンらしい骨太な作りが頼りがいと安心感を与える一方で、乗り味の硬さが気になることもあった。新型ではエントリーモデルとなる標準ボディを除き、全車でエアサスペンションを採用し、改善が図られている。後席でのロングドライブも快適であることが期待でき、シートの仕上がりも良好で、3列すべてで疲れにくいはずだ。また、シートアレンジで対面シートにできる点は、国産ミニバンでは失われた機能であり、企業などで送迎車として使われるニーズをしっかりと意識していることに感心させられる。
積載性

3

スクエア形状の室内とロングボディ構造により、積載能力は高い。その一方で、日本車のようにシートをコンパクトに折りたたむことはできない。後席の着脱は可能だが重量があるため、取り外し作業は大変だ。基本的にはシートアレンジで対応することになるだろう。重い荷物を積む場合には工夫が求められる。便利なのは、パワーテールゲートとガラスハッチが装備されている点。特にガラスハッチは、駐車場などスペースが限られる場所で重宝する。
燃費

3

エンジンは高効率なクリーンディーゼルに限られる。メインとなるロングボディとエクストラロングの燃費はWLTCモードで12.6km/L。車両重量が2.5トン前後あることを考えれば妥当といえる。近年の改良でエンジンは新しい2.0Lユニットとなり、ATも9速化され、効率の向上が図られている。
価格

4

価格帯は約1000万〜1400万円と高額で、国産高級ミニバンのアルファード/ヴェルファイアとレクサスLMに挟まれた領域であり、戦略的な設定といえる。レクサスLMよりも安く室内も広いうえ、世界屈指の高級車であるメルセデス・ベンツのミニバンが手に入ると考えれば、割安感がある。高級車らしい装いは、さすがメルセデス・ベンツと思わせる印象を与える。ただし、国産高級ミニバンとVクラスでは目指す方向性が異なるため、その点を理解して選ぶことが重要だ。Vクラスの魅力と価値を理解できる人にこそ乗ってほしい。
大音 安弘
大音 安弘
自動車ジャーナリスト
1980年生まれ、埼玉県出身。幼少からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う。原稿でのモットーは、自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がけること。愛車はスバル「WRX STI(VAB)」やポルシェ「911(996)」など。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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