マツダ CX-3 「ビリギャルだったCX-3が目指した道」のユーザーレビュー

zato787 zato787さん

マツダ CX-3

グレード:XD Lパッケージ(AT_1.8) 2018年式

乗車形式:試乗

評価

4

走行性能
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乗り心地
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燃費
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デザイン
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積載性
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価格
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ビリギャルだったCX-3が目指した道

2018.9.14

総評
「デミオと差別できていないのに100万円高くするのはおかしい」と言われていたCX-3だが、マツダの元々の企画は、「小さなデザインコンシャスなSUVを造ろう」ということだった。ヴェゼルが、FITと同じグローバルスモールプラットフォームを使っているのに、60万円も高い値段で売られているのを見て、ふらふらっとCX-3にあの値段をつけたことで、国内販売では、月販平均で1250台程度と目標の4割も売れない悲惨な結果を生んだ。ライバルはハイブリッドでも250万円以下に価格を抑えているホンダヴェゼルと、市場をしっかり分析して、プリウスと同じハイブリッドを積んだ燃費も実用性も(デザイン・・も多分。私にはスターウオーズの帝国軍のヘルメットに見えるけど)、TNGAをしっかりチューニングして走りも磨いたC-HRが同等価格帯にあるわけで、この状態になったのは全く不思議ではない。 マツダの販売店からの評判も決してよくはなかったから、積極的に売っていくこともなかったのだろう。。


 ホンダヴェゼル



 トヨタC-HR


それでも、マツダがCX-3を更新しようと思ったのは、欧州・北米・アジア市場では一定の支持を得ていて、欧州市場で累計で5万7000台も売れているからだ。マーケット分析をするまでもなく、「デミオの車高アップ版」から離脱せねば、CX-3に未来はない。幸い、全長4.3m程度のSUVにマーケットがあることは、C-HRやQ2などのライバル車が証明している。ディーゼルとガソリンを併売している欧州では、ディーゼルエンジン自体は一般的であるにも関わらず、CX-3の販売量の60%がガソリンになったのは、高速性能の不足からだ。わずか105馬力の1.5Lディーゼルターボでは、欧州の高速道路ではコンパクトカーと差別化ができなかったからだ。 しかし、ようやく自らのマーケッティングの誤りを認め、2017年からデミオとの差別化に踏み切り始めた。 だからと言ってCX-3の差別化がすぐにできるわけはなく、2017年のマイナーチェンジで2.0を投入してから1年もたたず、4度目の大幅改良を行ったわけだ。


 CX-3

質感を向上させ、CX-5に近づけるのが、現在のCX-3が目指す位置だ。だから、マツダは理詰めでネガを潰していった。シートの材質、布や革の張り方、縫製の細やかさなど、部品メーカーの努力の結果が大きいけれど、こうした一つ一つの積み立てが、他車との差別化を生んでいく。アテンザのように商品改良レベルでダッシュボードを全面的に作り変える方が普通ではないわけで、基本的な造形は変えられないものの、センターコンソールは、EPB(電動パーキングブレーキ)を装備したことで、コンソールボックス周辺全面的に作り変え、その後ろにはアームレストも備えたことで、CX-5のレベルに近い所に持ってきた。EPBは、走りの高級車化に効果的で、MRCCの全車速対応と合わせて、乗ってみて、使ってみてわかりやすい差別化ができたと言えるだろう。 高品質な内装の車内に座り、ドアを閉めてエンジンをかけても今までよりずっと静かで、滑らかに加速し、減速する。 乗り心地は柔らかくはないが、固いわけでもなく、多くの場合でいやな振動も突き上げもない。 室内は外から見るより広く使いやすく、4人でも、2人でも快適に走ることができる。 少なくとも、試乗した人を楽しませることはあっても、がっかりさせる要素はもうない。エンジニアリングをしっかりやったことは、CX-3に乗ってみればよくわかる。それは決して悪い印象を人に与えることはない。



 EPB(電動パーキングブレーキ)

CX-3は、全長4.3mくらいのコンパクトなオシャレなクルマで、SUVながらも、女性に好まれるデザインである。デミオとは大いに差別化ができた。 今度はディーラーで比較されても、見栄えにも、乗り心地にも明確な差があり、価格の差に納得できるところは大きいだろう。 CX-5と試乗して比較しても、がっかり感が小さくなって購入後の満足感が高くなった。 乗ってみれば、思ったよりも室内も広く、それなりの荷物も積めるから街中でのお買い物などに、ちょっと小さくていいクルマに乗りたい人に、ガソリンモデルはぴったり合っている。 2名で長距離にも出かけれるけれど、CX-5ほどの積載性は不要だという人には、1.8ディーゼルが向いている。 コンパクトだけどいいクルマが欲しいという需要はずっとある。最近の軽自動車が装備を充実させて乗り出し価格が200万円を超えるケースがよくあるのも、その表れの一つだ。

コンパクトカーと差別化するために、まず「内外装のデザイン」が重要であることは十分にわかっている。 しかし、恰好だけで中身がコンパクトカーのままだと、市場でどういう扱いを受けるのかは、これまでのCX-3が証明してしまった。 ネガを潰す作業を地道に続けたCX-3の販売台数は、世界的にこれまでよりは好転するだろう。しかし、本当にCX-3が評価されるのは次のモデルだ。今回のCX-3へのアプローチのように、ちゃんと目標に向けて詰めていくエンジニアリングを続けられれば、外装、内装、走りの上質さをマツダらしくまとめたクルマができるだろうと期待している。



 CX-3
満足している点
元がデミオベースだから、リアシートが狭いというイメージがあるが、そのイメージほど狭くはない。過去にデミオに大人4人乗ってドライブ旅行が可能かどうか検証したことがあるが、キャビンの上下幅、左右幅共にデミオより快適である。シート位置とサイドシルの高さが適切で、フロント、リアとも乗降がしやすく、リアシートへのアクセスもやりやすいのは、CX-5、CX-8と共通したマツダのSUVのいいところだと言えるだろう。 今までCX-3の上質さを奪っていたリアセクションで発生していたドラミングによる騒音を、リアのドア板の厚みを0.05mm厚くすることで解決してきた。この問題の原因を見つけ、解決することはなかなか困難なのだが、高いコストを払って生産設備ごと改善した効果はとても大きい。


 CX-3リアシート

今回、質感を大きく向上させた理由には、天井の吸音材やガラスの板厚の増加といった基本的な遮音対策だけでなく、走行中の騒音の一部にもなっている、エンジン振動の低減を図ったことで、在来型で気になっていた、加速時にステアリングに伝わる微振動の振動波の高さを小さくする事ができた。 また、手のひらに感じていた気になる振動と、マットを通して床から伝わる振動が大きく減ったことで、キャビン全体の上質感を生んでいる。ここにもガソリンエンジン、ディーゼル共に燃焼をより細かく制御したことでこの微振動を減らすことに貢献していると思う。


 CX-3フロントシート


素材や構成を見直してきた内装も、赤いリングなどの、「変なビビッドさ」をやめて、もう少しシックにまとめた。縫製、内装やシートに使う材質も、CX-5で使っているものと同等のものを使い、デミオや他社の同等クラスより快適で上質な空間を作ろうと努力していることは、乗ればすぐに感じられるだろう。 新しいシートは、お尻の下のウレタンが骨盤を支えるように備えられており、アテンザで述べたとおり、骨盤と床板の方向を合わせ、正しく座ると快適に座れる。 さすがに、アテンザのシートほど他にはちょっとないくらいのぴったり感は得られないが、ちゃんと、マツダの提唱するポジションをとれば、その良さがわかる。

その代り、腕を伸ばし、体を斜めにだらーんと座って気楽に運転したい人には向かない。 そういう人は、最初から「人馬一体」とか言う選民思想をもつマツダのクルマなど選ばず、もう少し安楽に乗れるメーカーのクルマに乗る方がずっと幸せなカーライフが送れるだろう。


新しい1.8Lのターボディーゼルエンジンは、CX-5などに積まれる2.2Lターボディーゼルに比べると、アイドリング時に外に聞こえる音は少し大きく感じるが、これはエンジンルームの遮音の差異の影響が大きい。排気量を1.5から1.8に切り替えた大きな理由は、燃料噴射を細やかにして、燃焼を素早く一定にして、全負荷領域EGRを採用すると、燃費は向上し排ガスはクリーンになるけれど、出力は低下するからだ。 排気量を変えるか、ターボを多段過給にするかしないと、出力が維持できないので、シングルターボの1.5L版は排気量を1.8にスープアップした。 だから、エンジンのスペック表の上では、1.8は大した数値の向上はないが、低回転域から中回転域までのレスポンスの良さ、振動の低減、変速への応答速度の向上など、CX-3がずっと手に入れたかった、上質なエンジンフィールを手に入れた。ムービングパーツが軽くなった効果を感じるのが、アイドリングストップからの回復の時だ。ここは2.2Lの再始動よりもショックが小さい。 1.8はシングルターボではあるが、この立ち上がりの良さは、新型の可変ジオメトリー式タービンによって、過給特性が低速でも最適化された効果が大きい。5600回転のレッドゾーン近辺までトルクが垂れることはないが、シングルターボのため、各回転域で供給できる空気量に制限があるので、最高出力は116馬力に留まる。 CX-3の利用用途を考えれば、2.2のように高回転までパワーを伸ばすためのツインターボ化は必要あるまい。


 1.8Lディーゼルターボエンジン

ガソリンエンジンも燃焼方式の見直しにより、低速から出力を発生する特性になった。CX-5のガソリンとディーゼルに似た傾向になっていて面白いが、ミッションの設定がディーゼルの特性寄りになっていて、ガソリンエンジンと組み合わせると変速タイミングが少し速いことが気になる。 それでも鼻先は軽いし、1.8のディーゼルの回転フィールに比べるとやはりガソリンらしい回転の滑らかさがあるので、長距離走行が多くないならば、同じ装備で比較して40万円安い2.0ガソリンモデルは悪い選択ではない。ガソリンエンジンは、最高出力が150馬力とディーゼルより高いので、高回転まで回した時は、当然ながらガソリンモデルの方が速い。



 2.0Lガソリンエンジン


安全性がさらに強化されたことを評価したい。使用するプロセッサの置き換え(高速化)により、「アドバンスト SCBS」は、夜間における歩行者を検知する演算ができるようになった。レーダー制御クルーズコントロール(MRCC)はEPBを搭載したことで、全車速対応となり、停止所状態を含む速度域で使用できる。 ほぼマツダの電子装備全部載せと言ってよく、あとCX-5にあってCX-3にないのは、LAS(レーンキープアシストシステム)くらいだ。 その他、地味ながら便利な電子式防眩ミラーが装備される。 ようやく車両価格に見合った、満足のいく装備が与えられたと言えるだろう。



 A-SCBS
不満な点
あまりネガティブなことを書くのは好きではないが、「クルマを買おう」と思って試乗する時は、何でもバラ色に見えてしまって、細かなことには気づきづらいから、第三者的な視点で書いておくことも必要だと思って書いておく。CX-3のデザイン上の問題として、Aピラーの幅が大きいことによる前方左右の死角が大きいこと、リアウインドウ、リアクオーターウインドウが小さく狭いことによる後方の視界の悪さがあげられる。デザインを重要視したクルマだから、仕方ないところはあるのだが、試乗の際は視界の良しあしにつて、自分が納得できるかどうかを注意して確認してほしい。


 Aピラー

何もかも一緒では、CX-5の立つ瀬がないが、マツダの車両クラスの差は、ステアリングフィールの真円度と抵抗感に現れる。上のクラスになるほど、混ざりものが少ない純粋な感触になる。ヴェゼルとCX-3を比べれば、CX-3の方が良いけれど、同じマツダのCX-5やアクセラと乗り比べるとフィールの雑味はCX-3の方が多い。 しかし、このくらいの差は受け入れられるだろう。

次世代車両構造技術「SKYACTIV ビークル・アーキテクチャー」は、まだ未完成だと思う。もしくは、「一部採用」せいなのかもしれないが、アテンザと全く同じ傾向がみられるので、設計思想の問題だと思う。「SKYACTIV ビークル・アーキテクチャー」は、人間の脚部の構造をイメージして作られているが、「まっすぐ歩くこと」については効果があるだろう。 バネとタイヤのサイドウオールを柔らかく(トーヨーが「プロクセスR52A」を供給)、ダンパーの衰滅力を高め、タイヤの接地面を固くするアイデアは悪くないと思う。 しかしながら、「リアの突き上げ」を指摘されることを恐れすぎて、直線道路における上下動の山のピークを如何に柔らかく抑えるか、という方向にリアサスの設定が向きすぎているように思う。 CX-3は、アテンザ程ボディ強化に力を入れられなかったので、一般路面における振動の吸収力がそれには及ばないが、ダンパーの容量をアテンザクラスにしたことが効いていて、直進中は、デミオクラスの乗り心地とは段違いのいなしを見せる。CX-3、アテンザ、ロードスターRFのリアの設定の方向性は似ていて、エンジン出力に対してリアバネレートが低すぎると思うけれど、高速道路や一般道の80%くらいは、在来モデルよりも快適に走れると思う。


 ビークル・アーキテクチャー
 マツダが考える、理想のバネの動き


しかし、深いRが続くコーナーでは、アテンザで気になったことと同じことがもう少し低い次元で発生してしまう。 マツダは、クルマを斜めにロールさせるチューニングをするのだが、フロントのスタビを細くして、リアのバネ定数を下げているので、コーナリング速度の増大に伴い、ロール量は増えていく。それは当然の動きだが、発生したロールをダンパーが止めきれず、さっとロールが始まる。そのままコーナーに入ると、ダンパーが効きだすのだが、その時に路面の少し荒れたところを旋回すると、急に細かな安っぽい上下動が発生することが残念だ。念のために書いておくが、いきなりステアリングを切り込むような操作はしていない。

この問題は、ダブルウイッシュボーンでも、TBAでも起きるので、「SKYACTIV ビークル・アーキテクチャー」の設定において、旋回中に発生する何らかの不整合があると思っている。 同じ速度で同じ道路を走っても、CX-5ではこの問題は発生しないから、脚の設定の問題だと思われる。 メディア向けの試乗会は、直線中心の都市部でやってるので、本件について指摘している試乗記はみかけないが、試乗の際に自分が気になるれべるかどうか是非確認してほしい。



  ボディ進化の考え方
  「突き上げ」を避けるために、理論からかい離していないか?


なお、時折、リアの突き上げが強い的なことを書いている評論も見かけるが、多分それはタイヤの空気圧が高いのだと思う。マツダは指定空気圧より高い空気圧を入れることが好きなので、マツダのクルマを試乗するならば、空気圧を調整してから乗るのが基本だ。空気圧ゲージは1000円程度で通販でも買えるから、試乗に行くときはちゃんと持っていきたい。
デザイン

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走行性能

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乗り心地

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積載性

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燃費

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価格

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故障経験

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