ダイハツ タント 「ライバルに対する優位性は…」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

ライバルに対する優位性は…

2025.8.5

年式

2024年10月〜モデル

総評

2024年10月の一部改良により、スマートアシストが最新世代にアップデートされ、衝突被害軽減ブレーキの作動範囲が拡大されたことは、多くのユーザーにとってうれしいことだろう。また価格改定についても、物価高騰の影響を考えるとやむを得ない範囲であろう。むしろ、ライバルに対しては競争力のある価格と言えそうだ。とはいえ、全体的に古さを感じるのも事実。そのため、ライバルであるホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」に対する優位点は「ミラクルオープンドア」と価格面に集約されるかもしれない。

満足している点

考え抜かれた機能性はタントの魅力だ。代名詞の「ミラクルオープンドア」はもちろん、それ以外にもさまざまな部分で使い勝手の良さが感じられる。価格面での優位性も含めて、日常の道具としては必要十分以上の相棒となってくれるだろう。

不満な点

改良点は着実であるが、根本的なパッケージングや走行性能に大きな刷新はなく、ライバルであるホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」の後塵を拝している感は否めない。また、インパネデザインやメーター類に関しては先代からのキャリーオーバーが目立ち、新鮮味に欠ける。機能重視の割り切りと見ることもできるが、ライバルの進化と比較すると、物足りないというのが正直なところだ。

デザイン

2

全体的にはスクエアなシルエットを踏襲し、乗降性や視界確保といった実用面を優先した設計となっている。どちらかと言えば控えめな印象だが、日常の道具としてはそれがむしろポジティブに働いているように思う。とはいえ、古さを感じる部分もあるため、モデルチェンジによる刷新が待たれるところだ。

走行性能

3

NAエンジン車は発進から中速域まではスムーズで扱いやすいが、登坂や高速域ではやや非力さを感じる。ターボモデルでは十分な余力があり、交通の流れに乗る場面でもストレスは少ない。操舵感は軽めで、女性や高齢者にも扱いやすい設定となっている。サスペンションはしっかりと路面を捉えつつ、段差での突き上げも最小限に抑えられており、軽自動車としての基本性能は十分に確保されている。街乗り中心の用途なら不満のない走行性能といえるだろう。

乗り心地

2

室内空間は広く、特に頭上・足元スペースの余裕が大きな安心感を生んでいる。前後シートともに着座位置が高めで、見晴らしのよいパッケージングが継続されている。乗り心地は柔らかめのセッティングで、路面の細かな凹凸をしなやかにいなす印象がある。ただし、舗装の荒れた路面ではロードノイズがやや気になりやすく、車体の遮音性には一定の限界も感じられる。

積載性

4

後席のスライド量が大きく、荷室とのバランスを自在に調整できる点はタントの大きな強みである。荷室の開口部は広く、低床フロアのため積み降ろしの動作も負担が少ない。助手席側の「ミラクルオープンドア」による大開口は健在で、大型荷物の積み込みだけでなく、子どもの乗せ降ろしや高齢者の介助にも効果的である。荷室周辺の小物収納やユーティリティフックなども実用的であり、軽自動車の中でも高い積載力を持つモデルとして地位を保っている。

燃費

4

アイドリングストップ機能やエネルギーマネジメントの制御は熟成されており、街乗り中心の使用であれば十分な燃費性能と言える。加えて、エンジン制御やCVTのチューニングに無理がないため、燃費のために走りを犠牲にしたような印象が少ない点も好ましい。

価格

3

改定後の価格帯は、エントリーモデルで約140万円台から、ターボ付きの上位モデルで180万円台後半となっており、装備内容を考慮すれば妥当な範囲に収まっている。一部グレードではメーカーオプションの自由度が高く、購入者が自分に必要な装備を取捨選択しやすい構成となっている点も好印象。ただし、ターボモデルや先進装備を選択すると200万円に迫る価格帯となるため、そうなるとより新しいライバルのほうが魅力的に見えてしまうかもしれない。