BMW Z4 M ロードスター 「最後のM」のユーザーレビュー

最後のM

2020.8.30

総評

工業製品として「最新の製品が最良の○○です」とはドイツのスポーツカーメーカーのフレーズですが、それだけで総括出来ないのが趣味のクルマ選びですね。
Z4Mは、E46の車体にM3のエンジンを搭載したジャジャ馬モデルです。決して軽量でもなく、前後バランスが良い訳でもなく、操作感も荒削りな前世代モデル。
ただ、今後Z4Mに並ぶMモデルが登場する可能性が極めて小さいことを考えると、最後にして最高の選択肢の一つと言えるクルマです。

満足している点

搭載されたS54エンジンのトルク感、上まで回した際の爽快感ですね。過給機のないNAエンジンで340ps以上を絞り出しグイグイと車体を前進させるドライブフィールは脳内麻薬を溢れさせます。また、ノーマルモデルと比較し、油圧パワステ、６MTの採用など、Mモデルとして旧来の技術の熟成に拘った点など、Zシリーズ最後のMモデル所有の満足感は最高ですね。

不満な点

満足しているポイントと裏返しになりますが、S54エンジンの重量でしょうか。後期Z4に搭載された軽量アルミブロックエンジンは、前後の重量バランス良く設計されており、ワインディングに出るとMモデルとはまた違った爽快感を感じることが出来ます。あと、車体のノイズなどは、ひと世代前のクルマに分類出来るでしょう。これらを含めて不満な点としましたが、そのワイルド感も魅力の一つであるのは間違いありません。

デザイン

5

走行性能

5

NAエンジン信者にとってS54エンジンは究極の直列６気筒の一つであり、厚い低速トルクと昂ぶる回転上昇感は最高です。
現在の視点で車体剛性に特筆すべき箇所はありませんが、車体サイズは日本の道路を自在に走行できるギリギリ許容範囲です。小さなことですが、ノーマルモデルのリアロアアームは意図的に剛性を落としてノーズの旋回感を演出している点を好意的に感じていましたが、Mモデルでは役不足ですね。アップグレードされておられる方も多いようです。
総体的に最新のクルマと比較するのは適切ではありませんが荒削りな走行性能もまた魅力的な一台です。

乗り心地

3

乗り心地は硬く、静粛性には乏しく、振動もあるとした方が間違いないでしょう。
ただし、これらは全て最新のZ4と比較した際の印象であり、１２年前には快適に感じていたことを書き添えておきます。

積載性

5

E85のトランク積載容量はたいへん優秀です。
他のオープンモデルと違い、天地が深いことから、キャリーバッグにボストンバッグを組み合わせて、２人分ので荷物満載で連泊旅行に出かけられます。
また、積載状態に関わらずオープンにすることが可能ですので、極めてユーティリティに富む実用性の高いオープンカーと言えます。
因みに灯油のポリタンクが余裕で運搬出来るのは驚きです。

燃費

3

高速道路を省燃費運転に徹すれば10kmを超えてきますが、エンジンのカーボン付着を考えると、ついつい下のギアを選択してしまいます。
燃費を優先するエンジンではないのでしょうね。永く良好な、エンジンコンディションを維持していきたいですね。

価格

5

故障経験

一台目のZ4MではDSCの交換がありましたが、現所有の車体ではトランクの浸水以外メカニカルなトラブルはありません。
３年間しか生産されなかったZ4Mですが、コンピュータを含めて、生産年によって目に見えない細かいところがブラッシュアップされていることが感じ取れます。