BMW 2シリーズ グランクーペ 「理想と現実の折り合い」のユーザーレビュー

理想と現実の折り合い

2021.2.28

総評

かつてBMWのマーケティング戦略は市場の2％を確保する戦略だと言われていた。しかし、経済のグローバリズムや自動車を巡る環境の変化により、そうしたマーケティング戦略が困難になったのだろう。安価なモデルほど市場の主流に迎合せざるを得なくなったのだろう。1シリーズのFF化はその典型的な流れだし、この車はその象徴的な存在だと感じさせられる。BMWらしさとビジネスの折り合いをどう付けるのか。それは消費者にも同様の選択を迫る。欲しい車と実際に購入する車の折り合いをどう付けるのか。そういう点ではこの車は私にはちょうど良いポジションにあるともいえる。

満足している点

お金に糸目を付けなければ良い車なんてたくさんある。でも、現実的にはどこかで何かを妥協しなきゃいけない。そんな微妙なバランスをうまく取ったクルマが2シリーズグランクーペだと思う。欲望と制約をうまくバランスさせながらBMWらしさを味わうことができる良い車だと思う。

不満な点

なんといってもFFになってしまったこと。前車118ｄから乗り替えると明確にその違いがわかる。BMWはFFのネガであるアンダーステアをハイテクで解消しようと試みているが、かえって不自然なハンドリングになってしまった。
そして、コストのかけ方が間違っている。自動で駐車スペースに駐車してくれたり、たどった進路通りにバックしてくれたり･･･　そんなの不要だからアダプティブヘッドライトを全車標準装備にして欲しい。自動運転の機能をもっと充実させて欲しい。要するに、安全装備についてはまだまだ不十分。ついでに、デジタルメーターは先進的な雰囲気だが、必要な情報がどこに表示されているのか判りづらい。音声認識に至っては「AIが・・・」なんて触れ込みだがそのメリットがわからない。使い物にならない。前述のパーキングアシストを含め、使い物にならない装備が多く本当に必要な安全に関する装備が手抜かりになっていて残念。

デザイン

5

グランクーペを名乗りながら腰高でずんぐりした外観はいかがなものか。そんな気がしなくも無くもないが、それでも1シリーズをベースにこのサイズでうまくバランスさせていると思う。窓枠の無い4ドアクーペのデザインは美しい（見る角度によるが）。
内装はうまく先進的な雰囲気を出していると思う。悪くない。いや、むしろこれまでの「内装デザイン気にする人は他のメーカーへどうぞ」みたいな素っ気なさから大きく進歩して垢抜けたと思う。

走行性能

2

2リッターディーゼルだが、F20の118dに乗っていたからこそ感じるが大きく性格が変わった。
具体的にはかつてのディーゼルは少しだけアクセルを踏み込んだ時のトルクの立ち上がりのスムーズさ、そしてそのレスポンスの良さがとても気持ち良かった。ところが、このエンジンはその良さが無くなっている。それと引き換えに振動や音、特にアイドリングストップからの復帰のスムーズさなどの快適性が大きく向上。さらに燃費性能が向上している。この車にはその方が合っているのかも知れない。
ハンドリングは多くの人がFFのBMWはどうなのか？　と、興味を持つだろう。FFのネガであるアンダーステアはARDでうまく対応している。アンダーステアが発生しそうだと感じた次の瞬間にノーズがコーナーの内側に入って行く感覚は独特。ただし、不自然さもある。これはこれで良いのではないかと思う。ただし、ハンドルから雑味が伝わってくるのも事実。このディーゼルエンジンは1,700回転付近でザラついた感触がある。ハンドルを通じてそのザラつきが感じ取れるのが残念。やはりこの点だけはFRにはかなわない。

乗り心地

4

不思議なことに同じグランクーペでも1.5リッター3気筒エンジンのモデルは如実に路面の凹凸を拾い、不快なほどの堅さだった。しなやかさが無いと言って良いのか。ところが、ディーゼルエンジンの重さが幸いしているのか、この車はちょうど良い加減に仕上がっている。しっかりとしたなかにしなやかさを感じさせるこの脚はBMWの最大の魅力だし、国産車では味わえない。
とは言うものの、F20と比較すると路面が荒れた場所ではフロアがしなるような感じがする。

積載性

5

この車に積載性は求めないでしょ。必要十分。何なら、後席はもっと狭くても構わない。

燃費

5

このディーゼルエンジンはどうやら力強さよりも燃費の良さを重視しているようだ。高速道路ではリッター20㎞/ｌを軽々と超えるし、市街地でも10㎞/ｌをしたまわることはない。燃費は悪くない。そしてECOProモードが案外快適なのだ。アクセルレスポンスは悪くなるけど、ディーゼルエンジンの性格上、レスポンスやふけあがりの良さは求めらレ無いだろう。惰性で走行するセーリング機能を積極的に使う制御になっているが、これが案外快適。

価格

3

テレビCMでは安さを強調していたが、そんな素のモデルは実際には日本には入ってこない。ナビゲーションすら付いていないモデルの価格で安さを強調するのはいただけない。そのくせ、オプション価格はべらぼうに高く普通に乗れる仕様にすると500万円を軽く超えてしまう。消費者をバカにしているとしか思えない。こういうぼったくりバーみたいなCMは著しくブランドイメージを損ねる。

故障経験