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東京オートサロン2019

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ニューモデル
2019.1.27

回顧録 Dセグ高速クーペ対決 C63 AMG vs BMW M3

もくじ

ー アウトバーンを長距離ドライブ
ー 快音を奏でるV8NA
ー クーペが登場したCクラス
ー 魅力的なインテリア
ー ハンドリングはM3優位
ー M3の方が楽しめる
ー 毎日乗るならC63だが

アウトバーンを長距離ドライブ

(AUTOCAR JAPAN誌99号の再録)

交通量が少なく流れの良い昼下がりのアウトバーンとはいえ、目的地はまだ300kmも先だ。こんなとき進路を防ぐ無粋な輩は御免こうむりたいものだが、400psオーバーのパワーを路面に叩きつけて走れば、さすがにディーゼルエンジン搭載の高級セダンオーナーたちも次々に道を譲ってくれる。彼らの目に映るのは、猛烈なスピードで遠ざかっていく4本出しのテールパイプだ。

A61号線を南下し、マンハイム、さらにホッケンハイムを通過。速すぎるペースにナビゲーションの地図表示が忙しく動く。信じられないほど滑らかに回り、情熱的なラプソディを奏でるM3の4.0ℓV8エンジンを堪能していたわたしの脳裏に、ひとつの思いがよぎったのはそのときだ。「もしかしたらこれはM社が作る最後の自然吸気エンジンになるかもしれない……」

思えば、4月に上海で発表された新型M5のエンジンは、X6 MやX5 Mと同じツインターボのV8だった。おそらく次世代M6もそれを使うだろう。一方で1シリーズのMクーペはN54型直6ツインターボの発展型を積んでいる。

となれば、2014年の末には登場するはずの次世代M3も、CO2排出規制に応えて過給エンジンになると予想せねばならない。世界に冠たるM社の高性能NAエンジンの歴史は、ここで途絶えようとしているのである。

快音を奏でるV8NA

M3のサウンドは今も最高水準だ。左手でパドルを軽く何度か引くと、ギアは瞬時に7速から3速まで落ち、タコメーターの針は3500rpmから7000rpmへと跳ね上がる。そこですかさずスロットルを開けてやれば、8300rpmでリミッターが作動するまで、マライア・キャリーの歌声もかくやのシャープで澄み切った高音が鼓膜を揺する。

低回転域の骨太なサウンドも心を惹くものだし、180km/hで5速から6速にシフトアップして加速を続けると、中回転域の繊細で甘美なテノールがインテリアを満たしてくれる。自然吸気ならではの贅沢な愉しみである。

シュトゥットガルトを目指す今回のロングドライブで、ランデブーの相手に選んだのは最新のメルセデスC63 AMGクーペだ。いうまでもなく、これはDセグスポーツクーペの世界基準ともいえる、BMW M3をジャブで注意深く牽制するために造られたクルマである。

穿った見方をすれば、ライバルの成功のいくばくかを奪うために、ミュンヘンのレシピを使い、シュトゥットガルドの素材で仕立てられたコピーキャットであるともいえる。

クーペが登場したCクラス

メルセデスの重役連は長年、BMWの3シリーズ・クーペにジェラシーを抱いてきた。3シリーズの強さは、スタイリッシュなクーペモデルがユーザーの憧れを集約し、セダンやワゴンのイメージをも牽引するところにある。しかしメルセデスの場合、それに該当するCLKクラスのイメージがCクラスからあまりにもかけ離れていた。

そこでサイズ的にもスタイリング的にも現行セダンにより近いCクラス・クーペを新たに開発し、これがセダンに光を当ててくれることを期待しているのである。その戦略の延長線上の最右翼に位置するのが、C63 AMGクーペだ。190Eの2.5-16エボリューションの時代から、M3クーペの対抗馬を擁していなかったメルセデスが、ついに直接対決へと乗り出したわけだ。

同じ「63」でもE63やS63が新世代の5.5ℓ直噴ツインターボを採用している一方で、C63はもともとAMGがDTMマシーン用に開発した6.2ℓの自然吸気V8を搭載する(量産V8のブロックを使う5.5ℓはCクラスに積むには大きすぎるのだ)。

457ps/61.2kg-mを発揮するこの6.2ℓユニットに7段自動MTを組み合わせるC63クーペの0-100km/h加速は4.4秒。M3も420ps/40.8kg-mとスペック上では若干見劣りするものの、7段DCTを採用し、0-100km/h加速4.6秒と僅差で食い下がる。

魅力的なインテリア

「どちらもエンジニアがふざけて2サイズは大きなエンジンを積んで、そのうえからボンネットを叩き付けたように見える」とはカメラマンのスタンの意見だが、この2台のルックスは思いのほか異なっている。C63はSLS譲りのシャープなエッジや豊かな曲面で構成されており、デザイナーの努力の跡が見受けられるものの、M3の隣におくと贅肉が付きすぎていて時代遅れな印象だ。

M3はくびれた腰からヒップへと心地良いカーブを描き、ずっとスリムに見える。けれどC63のインテリアは魅力的だ。どっしりと立体的なシートは、見た目と同様に座り心地も素晴らしい。

ダッシュボードにはアルミ加飾、ステアリングホイールにはアルカンターラ張りのグリップ、そしてドライブコンピューターにはAMG専用モードのディスプレイが採用され、M3であれば5500rpmオーバーで疾走しているときでなければ感じられないような高揚感がそこにはある。止まっている状態では、平凡なBMWのインテリアよりメルセデスを選びたい。

シュトゥットガルトの南東40kmほどのところでアウトバーンを降り、森に囲まれた丘陵地帯を目指す。C63がM3に負けず劣らず速いことは、これまでの道程で確認済みだ。いや、M3がパワーバンドに乗ったときと比べてもC63のほうが僅かに速いし、低回転域ではC63の太いトルクがものをいってその差がさらに顕著になる。

ハンドリングはM3優位

そうしたC63のアドバンテージは、田舎道のワインディングではどう発揮されるのか? M3からC63に乗り換え、それを探っていく。代わりにM3を操り、露払いを務めるのはドイツ在住エディターのグレッグ・ケーブルだ。こちらのペースなどお構いなしに、走り慣れたコーナーを滑らかにトレースしていく。

次第に離され、やがてM3の後ろ姿が見えなくなるが、タイトコーナーにアプローチするシフトダウンの雄叫びは聞こえる。C63の自動変速MTは市街地やアウトバーンではスムーズで不満はないのだが、ワインディングでブレーキングしながらのシフトダウンとなると、BMWのツインクラッチ式に比べて変速が遅い。しかしハンドリングは良好だ。操舵応答感がしっかりしているので、自信を持って操れる。

短い直線でM3に追い付いた。その後に待ち受けていたのは、3速で駆け抜ける緩いS字コーナーだ。路面がうねっており、コーナリング性能をテストするには最適な道である。前を行くM3がほとんどロールせずにクリアしていくのに対し、こちらは右に左に揺さぶられる。

C63ではシフトスケジュールのモードは切り換えられるが、ダンパーは走行状況に応じて減衰力を変えるだけなのだ。BMWのようにダイヤルで足まわりを締め上げ、ピッチングやローリングを抑えることはできない。速いM3に付いていくのがやっとだ。

M3の方が楽しめる

タイヤやシャシーの差もある。C63のコンチネンタルはM3のミシュランより明らかにグリップが低い。限界を極めようとする手前までは、シャシーは素晴らしくバランスしており、驚くほどしなやかで頼りになるのだが、最終的な局面でとたんにコントロールが難しくなる。

M3に負けない速さでコーナーを抜けようとトライすれば、C63はひたすらアンダーステアになってしまうのだ。「グレッグも必死に飛ばしているはずだが、彼はわたしより運転を楽しんでいるのではないか?」そんな思いにとらわれながらC63を降り、クルマを交換してすぐに、それがただの思いすごしではなかったことを確信した。

操舵応答感はM3のほうが僅かに曖昧かもしれない。しかし速いスピードでコーナーに飛び込んでも狙ったラインを正確にトレースできるのは、C63にはない美点だ。前輪のグリップも後輪もトラクションも、最高と評するに相応しい。いつでもどんな状況でも、ダイナミックなレスポンスを楽しむことができる。

パワートレインが醸し出す誘惑については前述したが、それに加えてDCTもドライバーを活気づけてくれる。クルマをコントロールしているという充実感、そして湧き出るパフォーマンスと正確なロードホールディング性能。言い換えれば、主観的な魅力と客観的な性能を兼ね備えたのがM3だ。25年前の初代M3もそうだっただろうが、2011年の今も向かうところ敵なしに思える。

毎日乗るならC63だが

しかしグレッグはどう考えているだろうか? 意見交換のために、クルマを道端に停めると彼はこう述べた。「M3のブレーキはベストではないし、4000rpm以下ではC63より遅い。それにわたしはメルセデスの快適さや実用性が気に入った。毎日クルマに乗る身としてはC63を選びたいね」

公正なコメントだ。過去の記事でも、メルセデスのAMGモデルがBMWのMカーより優れている点として、同様の主張がなされてきた。快適さや実用性を備えたパフォーマンスカーという意味では、わたしの知る限りAMGに迫る競合車はいない。しかし、説得力のあるクルマだと思いながら運転を続けていても、心の奥底では何かが燻りつづけているのである。

両者の差は小さい。きわめて小さいが、C63に軍配を上げることはできない。M3に乗ってロンドンへと戻る900kmは、勝利を祝う道程であった。

BMWが守ってきたパフォーマンスクーペの王座は、今もM3のものだ。そして、エンジンのダウンサイジングという、個人的には喜ばしくないトレンドが広がりつつあるとはいえ、M3の王位は今後も長く続くことになるだろう。

(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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