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東京オートサロン2019

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ニューモデル
2019.1.24

回顧録 1000万円で手に入る高性能車対決 GT-R vs ガヤルド

もくじ

ー 対照的なルックスの2台
ー 走りに焦点を当てて比較
ー 時を経ても衰えない鮮烈さ
ー 落ち着きのないシャシー
ー 乗りやすいGT-R
ー 全く異なる性格

対照的なルックスの2台

(AUTOCAR JAPAN誌97号の再録)

世の中には、万人を納得させうる答えを導き出せない二者択一というものが確かに存在する。夏場のバケーションをモルディブで過ごすか、はたまたセント・トロペで過ごすのか。

虎の子を投資するならボルドーのワイナリーにすべきか、もしくはアジアの新興建設会社にすべきなのか。1000万円の予算があるなら、狙うべきは5年落ちのランボルギーニ・ガヤルドなのか、それとも2011年モデルの日産GT-Rなのか。いずれの二択にも選ぶべき正解は用意されていない。

現実には、本当に1000万円を持っていたとしても、この二台を比較して悩むひとは少ないかもしれない。一見したところこれ以上はないほど、かけ離れた素性のスポーツカー同士だからだ。けれどその実、両者のパフォーマンスは――出力と挙動という意味において――非常に似通っており、お互い格好の比較対象なのである。

外見上、筋肉質で厳ついスタイリングのGT-Rと、シャープでドラマティックなルックスのガヤルドは好対照であるが、出力に関してはGT-Rが530psでガヤルドが520ps、駆動方式は両者とも4WD、最高速度は等しく315km/hとスペック面では共通項が多いのである。

価格設定もGT-Rの新車(プレミアムエディションでは945.0万円)とガヤルドの中古車では、それぞれおよそ1000万円。真っ向からぶつかり合うかたちとなる。

走りに焦点を当てて比較

英国サセックスのビーチーヘッドを対決の舞台に選んだわれわれが、目的地に定めていた現地の駐車場に到着したとき、そこには留学生を満載した観光バスが数台停まっていた。

そしてその誰もが、グラナイトグレーのガヤルドを後に従えて、唸りを上げながら現れたブルーパールのGT-Rに目を奪われ、まるで眼前の光景が信じられないというような驚きに満ちた表情を浮かべていた。

こうした瞬間のためにこの手のクルマを所有しているひとは少なくはないだろうし、彼らを非難するつもりも毛頭ない。羨望の眼差しを浴びたいがために、自ら稼いだお金を高級スポーツカーにつぎ込む。まったく結構な話ではないか。だがやはり、GT-Rやガヤルドから享受できる最高の悦びとは、根性を据えてステアリングを握り、アクセルを全開で踏み込んでいるときにこそ味わえるものである。

だからわれわれは両者の維持費や燃費などの経済性や今後予想される値落ち幅よりも、実際に運転してどうなのかという点を重視して比較を進めた。いったいどちらが速いのか? どちらが洗練性で勝っているのか? どちらが迫力のある咆哮を聞かせてくれるのか?

時を経ても衰えない鮮烈さ

わたしがまず乗り込んだのはガヤルドだ。というのも、ここしばらくこのクルマには触れておらず、最後に試乗したのはマイナーチェンジ後のLP560-4だったからである。試乗に供されたこの個体は走行距離5万8000km弱を数えていたが、乗ってみるとわたしがかつて試した新車のフィールを残していた。

低く設えられたホールド性の高いシートに腰を下ろしキャビンを見回すと、ディテールにはアウディからの流用部品が散見されるものの、やはり全体としてはドラマティックな雰囲気を醸し出しており、スーパーカーに乗り込んだのだと一瞬にして実感させてくれる。エンジンに火を入れれば、アイドリングから強烈なエグゾーストノートを響かせ、その印象はさらに強くなる。

オーディエンスだけでなく乗り手にも威圧感を与えるガヤルドであるが、運転してみると意外にボディが大きく感じられないのも特徴だ。フロントウインドウ越しに見えるフェンダーの隆起から数cm先にノーズの先端があるのが手に取るようにわかるし、5.0ℓV10が前後アクスルの間に位置しているため意のままに操れる感覚が強いのである。

試乗車は5年落ちの個体だが、アクセルを床まで踏み込み、地平線に向けて猛加速したときもエンジンが劣化しているとは感じられなかった。V10の排気音と8000rpm直前にバルブが発する動作音が奏でるサウンドには一分の曇りもなく、鮮烈さは新車当時のままであった。

落ち着きのないシャシー

ギアが2速に入っているときの加速は、車体をグンッと前に押し出すような強烈なもののため、狭くバンプの多い道では(ビーチーヘッド周辺の道がそうだったのだが)不安感を覚えるかもしれない。4速であっても4000rpm以上のときの加速はただごとではなく、慎重なペダル操作が要求される。

シャシーに関しては残念ながら、この個体ではエンジンに付いていけていない印象があった。特にテスト地付近の悪路では、コーナーはもとより直線であってもV10が生み出すスピードに対処しきれていなかったのである。またフロントエンドは大きめのバンプで容易く跳ね上がり、進路を乱すこともしばしばだった。

このクルマを快適に走らせる方法はひとつ、スロットルペダルの踏み込みは床までの上半分に留め、回転数を2500rpmから4500rpmの間にキープすべくこまめなギアチェンジを心がけるしかない。それでも乗り心地は硬く、ステアリングは右に左にエネルギッシュに動き回る。

さらにドライバーは、フロントスプリッターを路面で擦ってしまわないよう常に気を張っていなければならないのだ。10分ほどガヤルドの躁状態のステアリングを握った後、早々にGT-Rに乗り換えたのだが、そのときホッとしたというのが嘘偽らない心境だ。

乗りやすいGT-R

けれど、GT-Rのほうが比較的サスペンションがしなやかで、乗り心地が遥かにスムーズで、ステアリングのキックバックに悩まされることが少ないとしても、やはりビーチーヘッドのような道にピクニック気分で繰り出せるクルマでないことは間違いない。

というのもガヤルド同様、GT-Rも道幅の十分とられていない英国の悪路ではあまりに速すぎるのである。むしろ3.8ℓV6ツインターボが3500rpm以上で本領を発揮したときなどは、ガヤルドよりも狂気じみているほどだ。ターボとはいえラグはまったくないので、エンジンのポテンシャルを余すところなく容易に解き放つことができる。

これにはDCTも大きく貢献しており、GT-Rのそれはガヤルドのオープンゲート式6段MTと比べると、あたかも1世紀以上先の未来からきたデバイスのように感じられる。

シートのヒップポイントが高いこともありGT-Rはガヤルドと比べ路面から離れている感覚が強いため、それだけドライバーは――特にコーナーリングにおいて――速く走らせるためにはクルマを信頼することが必要となってくる。

全く異なる性格

ガヤルドを操縦しているときに感じられるフィールとレスポンスは、これまでのドライビング経験に照らし合わせて咀嚼できるもので、減速してコーナーに進入したとき、四輪それぞれがグリップしていればアクセルを踏めばいいし、どこか1輪でもグリップが抜けそうであればいま一瞬待つべきだと判断できる。まことにシンプルで分かりやすいドライビングメソッドだ。

かたやGT-Rだと、前を走るガヤルドと同じスピードでコーナーに進入した場合に、難なく曲がり切れるものなのか、それともコースアウトしてしまうのかが始めのうちはまったく分からない。

けれどしばらくしてクルマに対する信頼が芽生えてくると、ガヤルドでは危険すぎて試す気にもならないスピードでコーナーに突っ込んで、平然と減速し、ステアリングを切って、アクセルを踏んでコーナーを抜けている自分に気付かされるのだ。

ガヤルドとGT-R、カタログ上似通った数値を持つこの二台をそれぞれかけ離れた存在たらしめているのは、この点なのである。人車一体感か物理的スピードか、どちらに重きをおくのかは選者がどんな運転を好むかに完全に委ねられている。

それゆえこれほど頭を悩ませる二択はないのであるが、いえることはどちらも1000万円を費やして所有するに値する素晴らしいクルマであるということだ。ただその理由がまったく異なるのが問題なのである。

(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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