掲載期間:2018年9月27日〜2018年10月27日

パリモーターショー2018

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ニューモデル 2018.12.8

試乗 新型トヨタ・スープラ・プロトタイプ(A90) BMW Z4兄弟車、日本で評価

もくじ

ー スープラの伝統 直6+FR
ー 7000rpmまで踏み込む
ー A90型 そのデザイン
ー 敵はBMWか トヨタか
ー 「三河食堂」の腕前
ー GRテスターのひとこと

スープラの伝統 直6+FR

2019年1月のデトロイト・ショーで正式発表されるトヨタ・スープラ・プロトタイプの試乗会が師走の千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開かれた。

試乗したのは3ℓ直6ターボ・エンジンを搭載するモデルで、正確な数値は未発表ながら、兄弟車の新型BMW Z4と同一チューンだとすれば、最高出力340psを発揮する。足まわりはアダプティブ・バリアブル・サスペンション(AVS)、ということは電子制御の可変ダンピング付きだ。

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これまでのトヨタのスタンダードを塗り替えている。

コンパクトな2座、FR(フロントエンジン/リアドライブ)のスポーツ・クーペという成り立ちがまずもってイイ。座ったときからモノが違う、と感じさせる。いや、ドアを開けたときから、そう感じる。走り出した途端、巌のごときボディの剛性感、しっかり感に驚嘆する。

第1コーナーを抜けて、フル加速。若干逆バンク気味のライトハンダーを通過しながら、思わず声に出して言ってみる。スッゲー剛性感だ。

7000rpmまで踏み込む

短いストレートに至り、アクセルを全開にすると、3000rpmあたりから落雷のごとき男性的な咆哮を叫び始める。スピーカーからつくった音を流しているそうだけれど、これぞバイエルン謹製3ℓ直6ターボ・エンジンならではのサウンドで、7000rpmまできっちり歌いあげる。それも、ZFの8速ATが自動変速するにつれ、音階を変えながら、完全バランスの無振動で。

次の直角コーナーの手前でブレーキングすると、自動的にブリッピングしながらダウンシフトする。そこからアクセルを開ければ、ターボラグをほとんど感じさせないまま加速に移る。エンジンのトルクの厚みが違う。声が違う。重みが違う。

当たり前である。新型スープラはパワートレインを含めたシャシー、プラットフォームなど、基本的なハードウェアを、8月のペブルビーチで発表された新型Z4と共有するのだから。

ただし、開発は別個に行われていて、チューニングはトヨタ独自とされる。残念ながら筆者はZ4未経験なので、そこのところの区別がつかない。推測で申し上げれば、BMWが本来持っているソリッドさが後ろに引っ込んで、なんとなく丸みを帯びているような気はする。

ドライビング・モードはノーマルとスポーツの2種類で、スポーツの方がサウンドは大きくなるし、エンジンのレスポンスもくっきりしていて、断然いい。

タイヤは19インチで、前255/35、後ろ275/35という異形サイズのミシュラン・パイロット・スーパースポーツを履いている。サーキットの路面は平滑のため、一般道での乗り心地は不明ながら、おそらくそうとういい。ノーマル・モードだとコーナリング中ロールを許すし、ボディ剛性がLFAより高いときているのだ。

A90型 そのデザイン

会場で目にするスープラの姿は、1993年から2002年までつくられたA80型系ではあるものの、そこにヨーロッパの血が入って、パーソナル・トレーナーが鍛え上げたみたいな雰囲気だった。

フロントのF1ノーズは、シャシーからエンジンまで全部自前でつくってポール・ポジションも獲得したトヨタF1を彷彿させる。正直1回でも優勝していたら……と思っちゃうけれど、お父さん、それは言わない約束でしょ、ということかもしれない。それもまた哀愁を漂わせてる味になっている、と考えるべきだろう。

全体の雰囲気、ノーズ以外はイギリスのバックヤード・スペシャルのマーコスとかTVR T350みたいで、個人的には好みである。面と面が入り組んだキュビスム的な手法もこんにち的でカッコいい。

もっともこの日はあくまでカモフラージュ塗装のプロトタイプ試乗会だから、トヨタからデザインに関するお話は一切出なかった。

試乗前になされた説明によると、開発に当たっては、直6エンジンとFRのふたつをスープラの継承すべきヘリテイジだと考えたという。そして、86と同様、数値よりもフィーリングを重視した。開発責任者は86を手がけた多田哲哉チーフエンジニア(CE)である。

さらにスポーツカーの運動性能を決める基本3要素にこだわった、ということが強調された。ホイールベース、トレッド、重心高のことだ。

敵はBMWか トヨタか

まず、ホイールベースを2+2の86より100mmも短い2470mmとしたのは、ホイールベースと前後トレッドの比率を1.6以下にするためだった。試乗後のグループ取材時に、筆者は質問した。スープラの伝統は4シーター、5シーターということにもあるのではないか、と。

いや、本当はこう訊ねた。スープラは伝統的にリアシート付きで、Z4は2シーターである。新型スープラが2座になったのは、結局のところ、開発を主導しているBMWサイドに寄ったからではないのか、と。

多田CEは色をなして「そうではない」と否定した。あなたは先代Z4と新型Z4の諸元を見ているか、と逆に質問された。筆者は正直に、見ていないと答えた。

多田CEは、86の次はピュアに走りを突き詰めた企画にしたいと思った。86を経験したことで、ホイールベースとトレッドという基本の諸元をよく考えて決めないといけないということが身にしみていたという。

ホイールベース/トレッドの黄金比は、歴代ポルシェをさんざん研究するなかで、1.6あたりにあると考えたのだ。この数値を実現するためには先代Z4に比して新型Z4はホイールベースを26mm縮める一方、前後トレッドをそれぞれ98mm、57mmも広げなければならない(欧州仕様)。ワイドなプロポーションはこうして生まれた。

もちろんトヨタの営業部隊も大反対した。2座スポーツカーはマーケットが一気に小さくなるからだ。それを、売れる、売れないの問題ではないと突っぱねた。BMWサイドにしても大胆な数値だったに違いない。これを決めるのに1年半かかったという。多田哲哉CEは男である。

「三河食堂」の腕前

ちなみにレーシング・カートの数値は1.14で、この数値が小さいほど回頭性がよくなる。ただし、ワイド・トレッドにすると、直進安定性が低下してしまう。そのためにアクティブ・ディファレンシャルを装備する。重心高については、水平対向エンジンの86よりも低くすることにこだわった。そのためにあらゆることをやったという。

前後重量配分はハンドリングの理想とされる50:50を実現しているが、実のところ、直6はフロントがほんのちょっぴり重い。ボディ剛性は86の2倍以上も高く、フルカーボンのレクサスLFAを上回るという。

提携先をBMWに求め、正式契約を結んだ時点で、このプロジェクトの成功は約束されていたのかもしれない。三河の大衆食堂がバイエルンの高級レストランと一緒に料理の大事なところをつくり、それに自前の八丁味噌をのせるようなものなのだから。

もちろん、実際はそう簡単なことではなかっただろう。バイエルンの高級レストランは、スポーツ・セダンづくりには天才的な腕前を発揮するのに、なぜかスポーツカーとなると、あまりうまくできたためしがない。むしろトヨタのほうが上手なのではあるまいか。その代表例は、開発にロータスの手を借りたといわれるMR2である。

多田CEは、おそらくそのことに気づいていた。だからこそ、Z4のホイールベースとトレッドを大きく変更するなんて大胆な提言をした。そうしてポルシェ・ケイマン以上の運動性能を持つスポーツカーづくりに情熱を傾けたのだ。

読者諸兄にこれが参考になるかどうかは別にして、フォレストレースウェイは中速の、半円を描くようなコーナー、いわゆるパラボリカが3カ所もあるテクニカル・コースで、筆者程度の腕前だと、とにかくむずかしい。

GRテスターのひとこと

新型スープラはニュートラルステアにこだわった、ということだけれど、いかに前後重量配分が50:50だろうと、ドライバーは後輪の直前に着座して長いノーズを見ながら運転することになる。

直6をフロントに搭載する2座の後輪駆動車というのは、オーセンティックというかクラシックというか、リア・エンジンやミドシップのモダンなフィーリングとは、当たり前だけれど、根本的に異なる。ようするに、スッと鼻が入っていく感覚が、申し訳ないけれど感じられないのだ。あくまで筆者個人の感想である。

いったいどうやって走ったらいいのだろう? と思った筆者は、GR、トヨタのスポーツカーのテストドライバーのひとに率直に訊ねた。すると彼はこう言った。

「いろいろ景色を見て走ればいいんじゃないですか」

このひとことで霧が晴れた。スポーツカーはサーキットがすべてではない。そのことはスープラの開発陣も当然わかっていて、ヨーロッパ、アメリカで公道テストを繰り広げた。

BMWとトヨタが共同で開発した新型スープラは、バイエルン名物の白ソーセージ、あるいは白アスパラガスに名古屋名物の八丁味噌をつけたようなもので、そういうたとえをするとわたしを含む日本のひとはゲゲッと思うかもしれないけれど、世界は和食ブームである。主舞台はアメリカだけれど、それを待っているひと達がたくさんいることもまた確かなのだ。なにしろBMWクオリティがトヨタの価格で買える。グローバリズムも悪いことばかりではない。

(AUTOCAR JAPAN 今尾直樹)

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