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パリモーターショー2014

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ニューモデル
2019.8.23

メカニズムで読み解くスーパースポーツ「3モーターハイブリッドの時代到来か?」【コラム】

3 Motor Hybrid

3モーターハイブリッド

ハイパーカーの新定番“3モーターハイブリッド”とは?

リヤに1基、フロントに2基のモーターを搭載した3モーターハイブリッド4WDとし、システム総合出力は1000ps。これが最新スーパーカー/ハイパーカーのお約束スペックとなりつつある。1000psあるだけでは不十分で、フロントに左右独立制御のモーターを搭載し、トルクベクタリングができて初めて「どうだ!」と胸を張れるというわけだ。

先駆はホンダNSXの“SPORT HYBRID SH-AWD”

先鞭を付けたのは2017年に発売されたホンダNSXである。車両ミッドに搭載するエンジンは専用開発した3.5リッターV6ターボで、373kW(507ps)の最高出力を発生する。リヤに搭載するモーターの最高出力は35kW(48ps)で、やはりNSX専用に開発した9速DCTとエンジンの間に搭載する。リヤモーターはエンジンのアシストと回生が主な役割だ。

NSXはフロント左右にそれぞれ、最高出力27kW(37ps)のモーターを積む。ツインモーターユニット(TMU)と呼ぶケーシングに2基のモーターを収めて一体化し、前車軸上に配置している。システム総合出力は427kW(582ps)で、前述した最新スーパーカー/ハイパーカーの基準には届いていない。しかしそれでパフォーマンスが物足りないかというとそんなことは決してないし、後で別の車両のスペックを引き合いに出せば判明するが、モーター出力が控え目なのが1000psクラブ入りを逃した主な要因だ。

ところで、トルクベクタリングは駆動力の配分を意味する。前後で配分してもトルクベクタリングには違いないが、一般的には、左右で駆動力配分を行うことを指す。前輪左右に独立制御のモーターを配置することで、トルクベクタリングが可能になる。それで何がしたいかといえば、ヨーモーメントの制御だ。

例えば、ターンインの際に外側の前輪に内側より大きな駆動力を与えると、内向きのヨーモーメントが発生し、車両を内側に向けようとする力が働く。その結果、ライントレース性が向上することになる。するとドライバーは、「思うように曲がって気持ちいい」と感じるわけだ。

実際には外側前輪に大きな駆動力(プラスのトルク)を与える一方で、内側前輪はブレーキ力(マイナスのトルク)を発生させ、より積極的に内向きのヨーモーメントを発生させたりする。さらに、内側後輪に軽くブレーキを掛け、内向きヨーモーメントの発生をアシストする制御も入れる。ターンイン時のきっかけづくりだけなら比較的小さな出力のモーターでも十分だ。NSXはきっかけづくりに特化したシステムともいえる。

「公道を走るF1」メルセデスAMG ONEの4モーター

フロントに搭載する2基のモーター出力がもっと大きいと、コーナーを脱出する際の加速力が格段に強力になる。2017年のフランクフルト・モーターショー(IAA)で世界初公開されたメルセデスAMG ONE(発表時はプロジェクト・ワン)は、フロント左右にそれぞれ最高出力120kW(163ps)のモーターを搭載する。

このハイパーカーのコンセプトは、「公道を走るF1」だ。だから、パワーユニットはF1のスペックに準じている。2014年以降のF1のパワーユニットは、1.6リッターV6直噴シングルターボに2種類のエネルギー回生システムを組み合わせた構成となっている。ひとつめのエネルギー回生システムは運動エネルギー回生システムで、減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換するシステムだ。

言ってみれば、NSXをはじめ、いわゆるハイブリッド車が搭載するシステムと同種だ。運動エネルギーを回生するモーター/ジェネレーターユニットを“MGU-K”と呼んでおり、規則で最高出力は120kWに規制されている。メルセデスAMGのF1マシンはこの“MGU-K”をVバンク左側に配置しており、ONEも同じレイアウトだ。

もうひとつのエネルギー回生システムは熱エネルギー回生システムで、“MGU-H”と呼ぶモーター/ジェネレーターユニットを用いて排気の持つエネルギーを電気エネルギーに変換する。“MGU-H”は規則でターボチャージャーと同軸に配置することが定められており、メルセデスAMGの場合はVバンクの前端に置いたコンプレッサーの背後に“MGU-H”を置き、Vバンクの後端にタービンを配置するレイアウトだ。規則による出力制限はなく、ONEは90kWの“MGU-H”を搭載する。

“MGU-H”の役割は熱エネルギーを電気エネルギーに変換するだけでなく、ターボラグの解消にも使う。スロットルがオフの状態では排気のエネルギーが極端に減るのでタービンの回転が落ちてしまう。そのため、加速時にスロットルを開けても過給圧が高まるのに時間がかかって反応が鈍くなる。いわゆるターボラグだ。ONEは“MGU-H”であらかじめタービン回転を最高10万rpmまで高めておくことで、俊敏なレスポンスを実現するというわけだ。「V8自然吸気エンジンよりも反応が早い」と、メルセデスは説明している。

ONEはフロント左右にも、最高出力120kWの“MGU-K”を搭載する(駆動力を発生するモーターは3基だが、“MGU-H”を含め厳密には4モーターだ)。F1は“MGU-K”を1基しか搭載しないので、“MGU-K×3”の構成はONEオリジナル。NSXのように2基のモーターを一体化せず、独立した配置としている。

フロントにモーターを搭載したのはもちろん、トルクベクタリングを行うためだ。モーターを2基追加すると重くなるし、冷却も考えなければいけないし、フロントサスペンションとの整合性をとらなければならないし、パッケージングも難しくなる。クリアすべき課題は山積みのはずだが、それを覚悟してフロントモーターの採用に踏み切ったのは、トルクベクタリングに大きな価値を認めているからだろう。

ONEは車両ミッドに搭載するエンジン+“MGU-K”の最高出力を500kW以上(680ps以上)と発表。これに、それぞれ120kW(163ps)を発生するフロント2基の“MGU-K”の出力を合わせ、システム総合出力は740kW以上(1000ps以上)と発表している。

最新3モーターはフェラーリSF90ストラダーレが採用

3モーターハイブリッド4WDの最新事例が、フェラーリが2019年5月に発表したSF90ストラダーレだ。メルセデスAMG ONEほどダイレクトにF1のパワーユニットを意識してはいないが、無縁とも言い切れない。このクルマはNSXに似たシステム構成を持ち、格段にパワフルだ。

車両ミッドに搭載するエンジンは、4.0リッターV8ツインターボだ。最高出力は574kW(780ps)に達する。そして、最高出力150kW(204ps)のリヤモーター(フェラーリは“MGU-K”と呼んでいる)を、新たに設計した8速DCTとエンジンの間にレイアウトする。この搭載方法はNSXと同じだ。前車軸上に搭載する2基のモーターは、合わせて85kW(115.6ps)の最高出力を発生。システム総合出力は1000psだ(エンジンとモーターの出力を単純に足した数値にはなっていない)。

フェラーリSF90ストラダーレの3モーターハイブリッドシステムが、トルクベクタリングを実現して旋回性を高めているのは、ホンダNSXやメルセデスAMG ONEと同じだ。フロントタイヤが持つキャパシティを加速時にも使うことで驚異的なダッシュを披露するのは、NSXよりもむしろONEに近い。0-100km/h加速は2.6秒、0-200km/h加速は6.7秒と記せば、モーターの恩恵が理解できるだろうか。

後退時はエンジンの動力を使わず、フロントモーターで駆動することでリバースギヤをなくし、トランスミッションの小型軽量化に結びつけた。これは、3モーターハイブリッドを選択した結果手に入れた、クレバーなソリューションである。

9月のフランクフルトモーターショーで発表予定のランボルギーニ・ウニコも、3モーターハイブリッドを選択したと噂される。真偽はともかく、噂されるということは、このカテゴリーにとって「3モーターは定番」と世間に認識されているということだろう。

TEXT/世良耕太(Kota SERA)

(GENROQ Web 世良耕太)

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