400Rがいざなう地平線の先へ。
スカイラインが日本のスポーツセダンを再定義する

400Rの実力をロングドライブで測る

13代目となる日産「スカイライン」のマイナーチェンジ後の滑り出しが好調だ。黄金期には年間16万台という恐ろしい販売実績を誇る同車だが、それを今持ち出すのはフェアじゃない。何しろそれは“ケンとメリー”時代の話であり、ここ20年はミニバンが日本におけるセダンの役割を奪い取った。

また近年はコンパクトからフルサイズまで充実したサイズバリエーションを持つSUVが、“脱ミニバン”の一手としてファッショナブルなファミリーカーの役割を果たしている。

そんな中にあって、純粋なスポーツセダンであるスカイラインは、夏に発表してから約4か月で3,000台超を受注し、わずかな期間で昨年度販売実績の1.5倍以上を既に達成したという。さらに言えば、約半数はハイブリッドながら、もっともハイパフォーマンスな「400R」が、全体の32%を占めたというではないか。

そこで今回、その400Rで待望のロングドライブを敢行。東京から諏訪経由で日本屈指の名道であるビーナスラインへと、片道200km強、往復400km以上を走りその真価を確かめた。

あえてセダンを選ぶ理由がこのクルマにはある

まず新型スカイライン400Rで誰もが注目するのは、スカイライン史上もっとも高出力なエンジンを搭載したことだろう。その名は同車初の400馬力超え(正確には405ps)に由来している。

もっとも、熱烈なファンの間では、これがニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(NISMO)が「R33 GT-R」時代に作り上げた50台のコンプリートカー「NISMO 400R」と同じ名前であることに軽い物議を醸している。

しかしこうした“軽い炎上”はファンの思いが強いからこそ起こることであり、あれから20年以上が経過してようやくスカイラインもGT-Rの馬力まで追いついたのだ、と考えるのはどうだろうか。そうでなければ、日産だってこの名前を現行スカイラインには与えないだろうし、こうして賑やかになるのも、ある意味日産が元気な証ではないかと思う。

ともかく、大切なのはここからだ。なぜ筆者がこうして”400R騒動”に冷静なのかといえば、それは新型スカイライン400Rが、極めて大人びたスポーツセダンに仕上がっていたからだ。ミニバンとSUVが闊歩するこの時代に、あえてセダンを選ぶ理由が、そこにあったのである。

走り始めてまず感じるのは、すっきりとしたステアリングフィール。ご存じの通り現行スカイラインは、先代から受け継いだ「ダイレクトアダプティブステアリング(DAS)」を搭載している。ステアリングからの入力は、信号としてステアリングラックに取り付けられたピニオンモーターへと伝えられ、実際はこのモーターがラックを通してタイヤを動かしている。

もちろん400Rも、DASが作用していることは感じ取れるものの、操舵初期からクルマがきちんと応答し接地感を高めてくれているのだ。この理由こそ、400Rだけに標準装備される可変ダンパー「インテリジェントダイナミックサスペンション(IDS)」の減衰力だと推測できる。

ノーマルモードではモーターのアシストが強めなのか、舵が効き過ぎるくらいの感触すらある。街中、特に低速域でステアリングを切ったときの手応えは軽く、ノーズは予想以上にスッと切れ込んでいく。ただしこうした所作を味付けだと判断し、体がキャリブレーションできると途端に違和感がなくなる。

シャシーとエンジン、快適性のバランスが生み出す高いGT性能

都内の渋滞を抜け、中央自動車道へと合流する。適度なカーブを伴う山梨県側の道程では、400Rの動きがさらに明確になった。誤解を恐れずこのクルマのハンドリングを表現すれば、フロントタイヤはきっかけであり、リアタイヤの押し出しで進んでいく感がある、と言える。欧州勢のようにどっしり、まったりとフロントタイヤが路面をつかむのではない。スッと切っていくだけでノーズが素早くインを捕らえるのだ。

そしてこれこそが、DASの威力なのだ。スカイラインの伝統である見晴らしのいいフロントウィンドウと圧迫感のないサイドのグラスエリア。この広々とした空間に、軽やかな応答性を見せるハンドリングと、蹴り出しの良いリアタイヤの連携が加わると、ほんのりとR32時代の「GTS-t タイプM」を思い出さずにはいられない。

ようやくの言及で恐縮だが、高速道路では400R専用にチューニングされた3.0リットルV6直噴ツインターボも実にいい働きをしてくれる。常用域でのサウンドはとても静かであり、直6時代にも劣らないスムーズな回転フィール。そしてアクセルをじわりと踏み込んでいくと、V6エンジンらしいビートの立体感が立ち上がってくる。

こうしたフィーリングは小径タービンの採用や、「電動VTC(可変動弁機構)」のバランスが効いているのだろうか。一般的な鋳鉄ライナーを挿入する代わりに、ミラーボアコーティングで鏡面加工したシリンダーブロックの効果を直接感じ取ることは不可能だが、このエンジンが非常に洗練されたもので高性能であることは、クルマ全体の動きとアクセルの踏み込みから感じ取ることができる。

400Rの卓越したシャシーとエンジンの連携、硬さとしなやかさのど真ん中を見事に射貫くサスペンションの乗り心地と快適性、リアタイヤの蹴り出しの良さから、ビーナスラインまで一気に走破してしまった。ふんわりしたラグジュアリー感などなくともロングドライブは成立すると、400Rは証明してくれたのだ。これはまさに”4ドア・スカイライン派”にとって嬉しいグランドツーリング性能だと思う。

ちなみに帰路ではリアシートにも座ってみたが、これも予想以上に好印象。座面は過不足なく大腿部の裏側を支え、つま先もうまく前席下に潜り込む。膝からシートバックまでは握り拳ひとつ分以上。前席ショルダー部の張り出しが少ないため視界も良好だ。グラスエリアは広く圧迫感もない。低速域ではランフラットタイヤ特有のコツコツとした入力を感じるシーンもあったが、高速巡航ではダンパーがそのバウンスをうまく吸収してくれた。

ニッポンにはスカイラインがある

400Rの実力の片鱗は、ワインディングでも垣間見ることができた。ハイウェイで伸びやかな加速を見せたVR30DDTT型V6直噴ツインターボは、アクセル開度が深まるほどに“ズーン”と重たい響きでパワーを増幅する。しかし、そのアウトプットには無責任にトルクを吐き出すような野蛮さはない。

インタークーラー装着による圧力損失は僅かにあるはずだが、これをタービンレスポンスが補っているのか、そのブースト上昇感はリニア。安っぽい跳ね上がりなど微塵もなく、アクセル全開から急に閉じても、再びこれを踏み込んでもきっちりと追従してくれるから、コーナーでリズミカルに姿勢を変えていくことができる。

スポーツモードを選んだ効果だろう、高速コーナーではステアリングがドシッと座る。タイトコーナーではそのままアクセルを踏みきれば、弱オーバーステアを維持したまま立ち上がっていける雰囲気だ。リアのトラクションは歴代スカイラインの中でもピカイチ。400Rは明らかな粘り強さを感じることができた。先代から踏襲するプラットフォームが、まったく古さを感じさせなかったのは素直に凄いと思う。

400Rを単なる400馬力のスカイラインだと考えると、その大人びた性能にきっと驚くだろう。そのハンドリングにはジャーマン・スポーツセダンにはない軽やかさがある一方、英国製サルーンのようにアグレッシブさを全面に押し出すこともない。エクステリアでは400Rのバッジや19インチアルミホイール、インテリアではダイヤキルティングとレッドステッチが施された本革シートを採用するなど、極めてまっとうなFRスポーツセダンに仕上げられている。

これは個人的な見解だが、400Rはスカイラインを現代に受け継ぐための最適解だと思う。ニッポンにはスカイラインがある、と私は言いたい。

レポート:山田弘樹 / 写真:篠原晃一

スペック

【 スカイライン 400R 】
全長×全幅×全高=4810×1820×1440mm
ホイールベース=2850mm
トレッド 前/後=1530/1560mm
最小回転半径=5.6m
車両重量=1760kg
乗車定員=5名
駆動方式=FR
エンジン=3.0L DOHC・筒内直接燃料噴射V型6気筒
最高出力=298kW(405ps)/6400rpm
最大トルク=475Nm/1600-5200rpm
燃料消費量=10.0km/L(WLTCモード)
使用燃料=無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション=7速AT
サスペンション=前:ダブルウィッシュボーン式、後:マルチリンク式
タイヤサイズ=245/40RF19(前後共通)
価格=562万5400円~(税込)

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