BMW X5 MとX6 M。双子の野獣をサーキットに解き放つ。
その走りは”M”を名乗るに相応しいのか?

”世界の荒”も舌を巻くパフォーマンス

スポーティなプレミアムカーを提供するBMWのなかでも、“M”の称号が与えられたモデルは特別だ。Mがスペシャルな存在である理由を、いま一度、歴史からおさらいをしておきたい。

1972年、BMWはモータースポーツで勝つために、BMW モータースポーツ社を立ち上げた。これが現在のBMW M社の前身で、1970年代にはヨーロッパ・ツーリングカー選手権で6度もの優勝を飾った。

80年代にはF1に進出。BMWエンジンを搭載したブラバムBMWを駆ったネルソン・ピケがワールドチャンピオンに輝くなど、その技術力の高さを世界に証明した。その後もDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)などを戦うことで、極限のバトルで磨いたテクノロジーやノウハウを蓄積してきた。

近年はMのバリエーションが増え、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)やSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)に分類されるXシリーズにもMのエンブレムが輝くモデルが設定されている。

現在のMには、「公道も走れる究極のレーシング・スポーツカー」という位置づけの「Mモデル」と、「サーキットも走れる高性能スポーツカー」にカテゴライズされる「Mパフォーマンスモデル」の2種類がある。興味深いのは、Mパフォーマンスモデルだけでなく、Mの最高峰に君臨するMモデルの中にXシリーズが含まれていることであり、現在は「X3 M」、「X4 M」、「X5 M」、「X6 M」の計4モデルがラインナップされる。

はたして、”究極のレーシング・スポーツカー”を標ぼうするXシリーズのMも、サーキットを走るのにふさわしい仕上がりなのだろうか。これを検証するのが今回のテーマで、かつてル・マン24時間レースで総合優勝を遂げた経歴を持ち、2020年は国内最高峰のスーパーGTにBMWを駆って参戦する荒聖治選手に、X5 MとX6 Mをクローズドコースで思う存分に振り回してもらった。

助手席と後部座席には、私サトーと、2019年からモデル兼モータージャーナリスト(研修中)として活躍するクルマ好き女子、深山幸代さんが乗り込み、その驚愕のパフォーマンスを体感。なお、事前にWEBを通じて読者のみなさんからの質問を受け付けており、“世界の荒”がその質問に動画内で答えてくれた。

自身もBMW「X3」と「5シリーズ ツーリング」を愛用する荒選手が、最高出力625psの4.4リットルV8ツインターボに火を入れた。X5 MとX6 Mは、どんな走りを見せてくれるのだろうか。荒選手のドライビングに加え、深山さんのリアクションからも、パフォーマンスの高さがお分かりいただけるだろう。

撮影協力:つくるまサーキット那須

右から順に、SAVである「X3 M」、「X5 M」、SACである「X6 M」、「X4 M」
ル・マン24時間レース総合優勝の経歴を持つ”世界の荒”こと荒聖治選手が今回のメインテスター
「公道も走れる究極のレーシング・スポーツカー」を意味するMモデルをサーキットで振り回す
最高出力625ps、最大トルク750Nm、0-100km/h加速3.8秒の性能をサーキットで解放する

0-100km/h加速3.8秒。官能のジャーマン・ロケット

最高出力625psを誇る4.4リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、0-100km/h加速が3.8秒という圧倒的な動力性能もさることながら、俊敏なレスポンスや繊細な回転フィール、官能的なサウンドでドライバーの心を震わせる。つまり、速さと感動を両立するパワートレインなのだ。

感動的に速いというのは、シャシーにも通じる。Mモデル専用のデフを備えた4駆システム、「M xDrive」は走行モードに応じて、FRに近い旋回フィールからどっしりと安定した走りまで、千変万化の表情を見せてくれた。

【BMW X5 M コンペティション】
全長×全幅×全高=4955×2015×1770mm
ホイールベース=2970mm
トランクルーム容量=650~1670L
乗車定員=5名
エンジン=V型8気筒DOHCガソリン
総排気量=4394cc
最高出力=460kW(625ps)/6000rpm
最大トルク=750Nm/1800-5860rpm
燃料消費量=7.4km/L(WLTCモード)
駆動方式=4WD
トランスミッション=電子油圧制御式8速AT
タイヤサイズ=前:295/35ZR21、後:315/30ZR22
価格=1859万円~(消費税込)

圧倒的な動力性能だけでなく、俊敏なレスポンスや繊細な回転フィール、官能的なサウンドでドライバーの心を震わせるパワーユニット
エキゾースト・バルブ機構により、走行モードに応じて、控えめなサウンドや、力強くダイナミックなサウンドにエンジン・サウンドを調整可能な「M スポーツ・エキゾースト・システム」を搭載
アクティブ M ディファレンシャルを搭載した4輪駆動システム「M xDrive」を搭載し、FRの俊敏性とトラクションや安定性といった4輪駆動の長所を融合させている
スポーティな走りから、快適性や燃費性能を重視したドライビングまで、走行スタイルに応じて3つのシフト・プログラムから選択が可能な8速 M ステップトロニックを搭載

見目麗しいスタイルに宿すレース直系の遺伝子

現在のBMWのラインナップを男性ファッションにたとえれば、奇数モデルがオーセンティックなフォーマルスタイル、偶数モデルがエレガントなモードスタイルということになる。したがってX5に対するX6の特徴は、クーペライクな優雅なスタイリングということである。

パワートレインやシャシーの基本的な構成はX6とX5は共通。ただし、クローズドコースという環境で極限まで攻め込んだ荒聖治選手は、ふたつのモデルの間には外観と同様、走りにも明らかな違いを見つけたという。

【BMW X6 M コンペティション】
全長×全幅×全高=4955×2020×1695mm
ホイールベース=2970mm
トランクルーム容量=580~1530L
乗車定員=5名
エンジン=V型8気筒DOHCガソリン
総排気量=4394cc
最高出力=460kW(625ps)/6000rpm
最大トルク=750Nm/1800-5860rpm
燃料消費量=7.4km/L(WLTCモード)
駆動方式=4WD
トランスミッション=電子油圧制御式8速AT
タイヤサイズ=前:295/35ZR21、後:315/30ZR22
価格=1899万円~(消費税込)

「M」のロゴがあしらわれたダークブルーのブレーキ・キャリパーを装備した「M スポーツ・ブレーキ」は、一般道での扱いやすさだけでなく、サーキットでも安定した制動力を発揮
低い着座位置と高いサイド・サポートを備えた「M マルチファンクション・シート」を装備。スポーツ性とラグジュアリーの融合を演出する
最長500mまでの距離を照射し、夜間の視認性を高め安全性を向上させる「BMWレーザー・ライト」。ブルーのXデザイン・アクセントを配しデザイン性も高い
サーキットで一級の戦闘力を発揮しながら、一般道での扱いやすさや乗り心地、実用性の高さも兼ね備える懐の深さも魅力

内燃機関の完成形と言うべき伝統のシルキーシックス

かねてからBMWの6気筒エンジンは「シルキーシックス」と称され、絹のように滑らかな回転フィールが讃えられてきた。そのシルキーシックスの最新版で、なおかつ最も高いチューンが施されているのがX3 Mに積まれる3リットル直列6気筒ツインターボエンジンだ。

あらゆる回転域から力強く加速するのはもちろん、加速の伸び、レスポンス、乾いた快音など、内燃機関の完成形とも言うべき仕上がりになっている。加えて、ハイレベルなシャシーによって自由自在にクルマを操る感覚を堪能できた。

【BMW X3 M コンペティション】
全長×全幅×全高=4730×1895×1675mm
ホイールベース=2865mm
トランクルーム容量=550~1600L
乗車定員=5名
エンジン=直列6気筒DOHCガソリン
総排気量=2992cc
最高出力=375kW(510ps)/6250rpm
最大トルク=600Nm/2600-5950rpm
燃料消費量=9.1km/L(WLTCモード)
駆動方式=4WD
トランスミッション=電子油圧制御式8速AT
タイヤサイズ=前:255/40ZR21、後:265/40ZR21
価格=1394万円~(消費税込)

ダブル・キドニー・グリルの内には、最高出力510psを発揮する 3リットの高回転型Mツインパワー・ターボ・エンジンが搭載される
ステアリングに備え付けられた深紅の「M Drive」ボタン。エンジン・レスポンスやダンパーの減衰力、パワステのアシスト量などを自分の好みにセッティングできる
8速 M ステップトロニック・トランスミッションを搭載。X5 M/X6 M同様、好みの走行スタイルに応じて3つのシフト・プログラムが選択可能
X3 M/X4 Mに搭載される「M スポーツ・シート」は、サイド・サポート、バックレスト幅の調節機能、ランバー・サポートにより、サーキット走行でもドライバーの体をしっかりとホールドする

サーキットの魂を宿す二枚目ファイター

X5とX6の関係と同じく、ボクシーなX3に対してX4はスタイリッシュな衣装をまとう。基本的なコンポーネンツはX3 Mと共通で、直6ツインターボと思いのままのハンドリングに胸が熱くなる。

4駆システム、M xDriveはBMWらしく駆動力を後輪寄りに配分、「スポーツ+」モードを選べばテールアウトの姿勢を取る。このファイティングポーズを経験すると、サーキット走行を想定したセッティングが施されていることがわかる。X3 Mとともに、SAV/SACの形をしたリアルスポーツカーなのだ。

【BMW X4 M コンペティション】
全長×全幅×全高=4760×1925×1620mm
ホイールベース=2865mm
トランクルーム容量=525~1430L
乗車定員=5名
エンジン=直列6気筒DOHCガソリン
総排気量=2992cc
最高出力=375kW(510ps)/6250rpm
最大トルク=600Nm/2600-5950rpm
燃料消費量=9.1km/L(WLTCモード)
駆動方式=4WD
トランスミッション=電子油圧制御式8速AT
タイヤサイズ=前:255/40ZR21、後:265/40ZR21
価格=1426万円~(消費税込)

レポート:サトータケシ / 写真:市健治

スポーツカーのようなワイド&ローのスタンス、クーペを彷彿とさせる流麗なシルエットが、このクルマのパフォーマンスの高さをより強く印象付づけている
最高出力510ps、最大トルク600Nm、0-100km/h加速4.1秒を誇る3リットル高回転型M ツインパワー・ターボ・エンジン
リア・スポイラーなど、随所にこのクルマの本気度を表すディティールが散りばめられている
X4 Mのポテンシャルを最大限に引き出す「M サスペンション」を搭載。ドライビング・モードに加えて、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の設定により、最適なセッティングを選ぶことができる

フォトギャラリー

右から順に、SAVである「X3 M」、「X5 M」、SACである「X6 M」、「X4 M」 ル・マン24時間レース総合優勝の経歴を持つ”世界の荒”こと荒聖治選手が今回のメインテスター 「公道も走れる究極のレーシング・スポーツカー」を意味するMモデルをサーキットで振り回す 最高出力625ps、最大トルク750Nm、0-100km/h加速3.8秒の性能をサーキットで解放する 圧倒的な動力性能だけでなく、俊敏なレスポンスや繊細な回転フィール、官能的なサウンドでドライバーの心を震わせるパワーユニット エキゾースト・バルブ機構により、走行モードに応じて、控えめなサウンドや、力強くダイナミックなサウンドにエンジン・サウンドを調整可能な「M スポーツ・エキゾースト・システム」を搭載 アクティブ M ディファレンシャルを搭載した4輪駆動システム「M xDrive」を搭載し、FRの俊敏性とトラクションや安定性といった4輪駆動の長所を融合させている スポーティな走りから、快適性や燃費性能を重視したドライビングまで、走行スタイルに応じて3つのシフト・プログラムから選択が可能な8速 M ステップトロニックを搭載 「M」のロゴがあしらわれたダークブルーのブレーキ・キャリパーを装備した「M スポーツ・ブレーキ」は、一般道での扱いやすさだけでなく、サーキットでも安定した制動力を発揮 低い着座位置と高いサイド・サポートを備えた「M マルチファンクション・シート」を装備。スポーツ性とラグジュアリーの融合を演出する 最長500mまでの距離を照射し、夜間の視認性を高め安全性を向上させる「BMWレーザー・ライト」。ブルーのXデザイン・アクセントを配しデザイン性も高い サーキットで一級の戦闘力を発揮しながら、一般道での扱いやすさや乗り心地、実用性の高さも兼ね備える懐の深さも魅力 ダブル・キドニー・グリルの内には、最高出力510psを発揮する 3リットの高回転型Mツインパワー・ターボ・エンジンが搭載される ステアリングに備え付けられた深紅の「M Drive」ボタン。エンジン・レスポンスやダンパーの減衰力、パワステのアシスト量などを自分の好みにセッティングできる 8速 M ステップトロニック・トランスミッションを搭載。X5 M/X6 M同様、好みの走行スタイルに応じて3つのシフト・プログラムが選択可能 X3 M/X4 Mに搭載される「M スポーツ・シート」は、サイド・サポート、バックレスト幅の調節機能、ランバー・サポートにより、サーキット走行でもドライバーの体をしっかりとホールドする スポーツカーのようなワイド&ローのスタンス、クーペを彷彿とさせる流麗なシルエットが、このクルマのパフォーマンスの高さをより強く印象付づけている 最高出力510ps、最大トルク600Nm、0-100km/h加速4.1秒を誇る3リットル高回転型M ツインパワー・ターボ・エンジン リア・スポイラーなど、随所にこのクルマの本気度を表すディティールが散りばめられている X4 Mのポテンシャルを最大限に引き出す「M サスペンション」搭載。ドライビング・モードに加えて、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の設定により、最適なセッティングを選ぶことができる