トヨタ新ブランド「GR」。ヴィッツGRMNほか注目モデルの走りを一気に試した

左：ヴィッツ GR、右：ヴィッツ GR SPORT

GRが本物のブランドになるために必要なこと

現状ではGRMNは1車種、GRでも2車種に留まるとは言え、GR SPORTまで含めれば、モデル数は尋常ではない。トヨタがどれだけGAZOO Racing Companyのビジネスに、このGRブランドに本気かということは、説明不要だろう。モータースポーツのノウハウも活用して「もっといいクルマ」を生み出し、ユーザーにもっとクルマを楽しんでもらう。もちろん、GRブランドで培った知見は、次の市販車に投入されていく。そんな循環が起こるのだとすれば、GRブランドはある意味で、将来のトヨタ車の行方を左右する力をも持っていると言えるかもしれない。

そんなことを思えたのは、現場で言葉を交わした開発メンバーの皆さんが口々に「本当はノーマルがこれぐらいできていなきゃいけないんですけどね」と言っていたからだ。少なくとも今回紹介したGRブランドのモデルたちは、いずれも数年前までのトヨタのイメージを覆すような、乗っていて楽しい、気持ちいい存在に仕上がっていたから、これがトヨタ車が更に変わっていくきっかけとなるなら…と、期待が大きく膨らんでしまうのである。

但しひとつ注文をつけるならば「そもそもGAZOOって何？」ということについては説明があってもいいのではないだろうか。AMGなら創業者の名と創業地であるAufrecht、Melcher、Grossaspachの略だし、Mにも、クワトロにも、それこそNISMOにも、その名には意味と伝統がある。スポーツモデルを欲する人は、性能だけじゃなく、その歴史やブランドを買いたいという側面、必ずあるのだ。GRが本物のブランドになっていくためには、その名にしっかりストーリーを宿させるべきだと筆者は思う。GRブランドのクルマを多くの人の“愛車”にしてもらうために…。