新型ロードスターには作り手の強いメッセージがある・岡崎五朗
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:菊池 貴之
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ベースグレードのSは、リアのスタビと、ボディ補強用パーツ(トンネルブレースバー)の一部を外している。と聞くと、ああコストダウンしたのか・・・と思うかもしれないが、断じてそうではない。スペシャルパッケージとレザーパッケージのMT車が、サーキットを含めた限界走行時の操縦安定性やトラクションを考慮した仕様であるのに対し、Sが重視しているのはあくまで一般道路走行。そのためリアのスタビライザーを外して積極的にロールをさせるセッティングを施した。ボディ補強パーツを取り外したのも、コストダウンのためではなく、サスペンションセッティングとのバランスをとるためだという。
事実、Sで走るワインディングロードはゴキゲンだった。限界の7~8割といった「気持ちよく飛ばす」程度の走りでは、むしろ上位グレードよりも動きは素直だし、荒れた路面ではスタビがない分、接地感も高まる。ステアリングを切り込むたびにスーッと自然なロールが起こるから、横Gのレベルを感じやすいのも運転している実感を高めている理由のひとつだ。
たしかにコンマ1秒のタイムを削り取っていこうと思ったら上位グレードのほうが有利だ。しかし、スポーツカーはレーシングカーではない。「速く走ること」ではなく「楽しく走ること」を重視するのであれば、Sを選択する意味は大いにある。もちろん、人によって楽しさの定義は違うから、どちらを楽しく感じるかも人それぞれだが、少なくとも僕は良好な乗り心地を含めSの味付けが大いに気に入った。売れ筋はスペシャルパッケージのようだが、もし試乗するチャンスがあれば、ぜひ一度Sに乗ってみることをオススメする。そうすれば「手抜き」グレードではないことを理解できるに違いない。
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