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新型Aクラスは乗り心地でゴルフに並んだ。高度な先進技術にも注目

300万台売れた先代はオーナー層を10歳若返らせた

1997年、今から20年前に登場したAクラス(W168)は長さ3.58メートル、幅1.71メートル、高さ1.6メートルのコンパクトカーであった。全長が軽自動車並みに短いのは、メルセデス・ベンツが80年代に実用化を目指していた近距離専用乗用車「NAFA」に由来するからだ。「欧州の歴史ある古い街並みは文化遺産故に自動車交通用に壊すわけにはいかない。それならばクルマをドラスティックに変えるしかない」という思想の下に、占有面積の少ない車を目指したわけである。

その結果誕生したのが、スマート(1994年)とAクラスであった。このメルセデス・ベンツ特有の「プロダクト・アウト」的考えで誕生したAクラスは、サンドイッチフロアと呼ばれた二重構造の床下に電池や水素燃料電池などの代替エネルギーを搭載する可能性まで秘めた画期的なクルマだった。ところが、重心の高さとリアのリジット・サスペンションなどの影響でダブルレーンチェンジ、いわゆるエルク・テスト(急に路上に出てきたシカを避けるという意味でそう呼ばれた)で転倒することが分かりESPの全車標準装備が終わるまで出荷停止という事態に陥ってしまった。

ちなみに社会的にも非常に良いアイデアを持った画期的な小さなクルマというものは、これまで成功した例がない。トヨタiQも鳴かず飛ばずのまま生産が中止になってしまった。クルマという道具は右脳に訴える要因がなければ受け入れられないのかも知れない。

さて、背の高いAクラスは2004年のビッグ・フェイスリフト(W169)を経て2012年に消滅、その後継モデルとして全長4.3メートル、全幅1.78メートル、全高1.42メートルと、72センチも長く、18センチも低いAクラス(W176)が完成したのである。この3世代目は若きチーフデザイナー、ゴーデン・ワゲナーの手になるスタイリッシュでスポーティなデザインも与えられ、若者に大いに受けて、ヨーロッパにおけるメルセデス・ベンツオーナーの平均年齢を10歳も若返らせた。また中国でのAクラスオーナーの平均年齢は30代である。結局、Aクラスは全世代で2017年までに300万台が世界各国の市場に送り込まれた。

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