“虎の子の4WD”イーフォースを積んだ「セレナ」が家族も注目の“酔いにくいミニバン”化した理由
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:日産自動車 13
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:日産自動車 13
実際に除雪された路面に新しい雪がうっすら積もった状態の一般道を走行したところ、まず加速については、停止状態からわざとラフに発進させようとしてもタイヤの空転を感じさせることなくスムーズに発進できた。
減速についても、e-Pedal(イーペダル)をオンにしておけば、アクセルから足を離すだけで、スリップすることなくしっかりと減速することができた。e-Pedalは回生ブレーキと従来のブレーキを統合制御することで強い減速度を得られるモードだ。
>>イーフォースを搭載したセレナの雪上走行をフォトギャラリーで見る
ドライバーがブレーキペダルを操作していなくても、従来のブレーキシステムも作動させて減速することがある。逆にドライバーがブレーキペダルを使った際、ドライバーが想定しているであろう減速度が得られるケースでは回生ブレーキだけしか作動していない場合もある。
ちなみに日産はセレナe-4ORCEを“酔いにくいクルマ”だと主張するが、これには根拠があって、前後の駆動力配分を加減速の度に最適化することで、加減速によるピッチング方向の動き(加速時には車両前部が持ち上がり、減速時には車両後部が持ち上がる)を抑制している。やはり同種のシステムは他の内燃機関車、電動車にも採用されているが、前後ともに100%モーター駆動のe-4ORCEならではの領域がある。
・・・日産は経営はともかく電動化技術関連のネーミングは素晴らしい。シリーズハイブリッドに「e-POWER(イーパワー)」と名付けることでハイブリッドとして後発にもかかわらずそのイメージを巧みに回避したし、いちメーカーの電気自動車に「サクラ」と名付けることで日本代表みたいなイメージを想起させた。
なかでも「e-4ORCE(イーフォース)」はe-POWERとの関連性もわかり、得られる効果もイメージしやすく、さらにスポーティーな印象もある優れたネーミングだと思う。それでいて実際には前述した酔いにくさのようにファミリーカーとしても貢献度が大きい。予防安全性に寄与するのは言わずもがな。ほんとネーミングだけなら「イーエイチイーヴィー」の100倍うまいと思う。
今後、日産がどういう道筋で再建されるのか、ステイクホルダーのみならず、少しでもクルマに感心がある人なら全員注目しているはずだ。e-4ORCEほどの素晴らしい技術を研究段階ではなく実用化できる力をもったメーカーはそう多くない。e-4ORCEをはじめとするこの技術をどこかのだれかがもっていっちゃうのか、それとも日産がなんとか自分たちのものとしてキープできるのか……。見守るしかない。
(終わり)
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