スバルから再び“美しいクルマ”が生まれる日を夢見て…イタリアの巨匠が描く流麗なクーペ、アルシオーネSVXを振り返る

スバル 360

アメリカ市場にあわせて元のデザインを改良

アルシオーネSVXは、スバル360以来、初めて外部デザイナーにスタイリングを依頼したモデルだった（スバル360は日本でのインダストリアルデザイナーの草分け的存在である佐々木達三氏が担当）。

当初スバルがジウジアーロにオーダーしたテーマは2点であった。

1つ目は、男性をメインターゲットとし、単なるラグジュアリークーペではなく、セダンとスポーツカーの中間に位置するアクティブな性格を与えること。

2つ目は、スバルが航空機メーカーでもあるため、飛行機のキャノピーのフォルムを表現すること。

実際のデザイン作業は、ジウジアーロから届いた数点のイメージスケッチをもとに打ち合わせでコンセプトを煮詰め、実物大にまとめていった。

ジウジアーロ製作のプロトタイプは、キャノピーキャビンを持つスタイル自体は市販モデルそのままだが、サイズは日本の5ナンバー枠に収まるコンパクトさで、ヘッドランプもリトラクタブルヘッドランプだった。

市販モデルへのサイズ拡大は、アメリカ市場をメインマーケットに設定し、その要請を取り入れてスバル社内のデザインチームが行った。

アルシオーネSVXは、デビューと同時に高い評価を獲得した。しかし、スバルの車種としては高価な価格や、バブル景気が崩壊した影響が大きく、残念ながら販売は低調だった。1997年に生産を終了。現在に至るまで後継モデルは登場していない。