新型ノア/ヴォクシーのおススメが断然ハイブリッドな理由。日本一の売れ筋ミニバンに死角はあるのか?
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 102
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 102
日本一の売れ筋ミニバン、トヨタ「ノア」「ヴォクシー」がモデルチェンジした。日本一と書いたが、ホンダ「ステップワゴン」や日産「セレナ」のほうが強かった時代もある。だがいつの間にかトヨタが抜かして一番になるいつものパターンだ。
新型は4代目。トヨタは販売チャンネルをなくしたため、兄弟車の必要性はなくなったが、純粋にバリエーションとしてノアとヴォクシーを残した。ノアにはおとなしいノーマルモデルとデコラティブなエアロモデル、ヴォクシーにはめちゃくちゃデコラティブなエアロモデルのみが設定される。以前はそれぞれにノーマルとエアロが存在したが、販売チャンネルが廃止されたタイミングで3バリエーションになった。途中で加わったエスクァイアはひと世代限りで廃止された。
ノア/ヴォクシーが採用するGA-Cという車台(プラットフォーム)は、「プリウス)、「CH-R」、それに一連の「カローラ」にも用いられるエンジン横置き用のもの。この車台の開発コンセプトがおなじみのTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)だ。TNGAは低重心なのが一番の特徴で、トヨタ車の走りを劇的によい方向に変えたとされる。
なので開発責任者の水澗英紀さんへのインタビューの最初に「GA-Cを使って開発できてよかったですね」と話しかけた。「そうなんですよ。走りの違い、感じていただけましたか?」という言葉が返ってきて会話が大いに盛り上がるはずだったのだが、そうはならず「そうですねぇ……」と曖昧な言葉が返ってくるのみ。あれ、僕なんかまずいこと言った?
水澗さんは続けて「GA-Cを使えば走行性能は向上します。ただ低重心という特徴は、乗員を低く、後ろ(車両の中央寄り)に座らせることで実現しているので、少しでも車内スペースを確保したいミニバンにはやっかいでもありました」と教えてくれた。
水澗さんは先々代、先代の開発にも携わった。長年にわたって前席をできるだけ前へ、そして上へ寄せることで車内スペース確保に努めてきた。走行性能の面では不利だが、このクルマの購入層から走りに関する不満は上がっていなかった。ミニバンは高い走行性能に必要性を感じないか、もっと重要なことを優先する人が選ぶクルマだから、もっともな話だ。
だから今回も開発初期には従来の車台を継続使用することも検討したという。しかしTNGAは走行性能向上のみならず複数モデルが車台を共有して生産効率を上げることが目的。ノア/ヴォクシーだけ古い車台を使い続けるのは効率が悪い。それに新しい車台のほうが軽く、安全性が高く、さまざまな将来技術に対する拡張性も高い。そうしたことを天秤にかけ、刷新を決めた。
とはいえ前のモデルよりも車内を狭くすることは許されないため、細かな工夫の積み重ねによって前モデル同様の広さを確保した。一番大きな効果を生み出したのはシートの背もたれ部分を薄くして2列目、3列目の実質的な広さを確保したことだという。ミニバンは走らせても別に面白くないが、開発ストーリーはスポーツカーよりも面白いことがある。
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