現行ボルボ唯一のセダン、新型S60はドイツ御三家と比べて実際どうなのか?
掲載 更新 carview! 文:山田 弘樹/写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:山田 弘樹/写真:菊池 貴之
ところでこのS60、ドイツ御三家と比べて競争力はあるのか? たとえばBMWの3シリーズと比べたとしよう。今回試乗したT5に限って言えば、その価格は2リッターターボを搭載する「330i Mスポーツ」より30万円安い。これは非常に魅力的なプライス設定だが、ディーゼルエンジンで4WDの「320d」より25万円高いのは悩ましいところだ。
Dセグメントの絶対王者であるCクラスだと4WDの「C200」、「C220d」とほぼ同等。同じFWDのラインナップを持つアウディでは、2リッターターボの「40TFSI」(190PS/320Nm)より少しS60 T5の方が高めだが、断然ハイパワー。しかしあと40万円ほど予算があれば、クワトロ4WDを持つ「45TFSI」(252PS/370Nm)が手に入る。
価格的にT5は実に拮抗したポジションにいて、走りもデザインも、悪くない。ただ御三家の長い伝統やネームバリューの高さに対して、もう少しだけ割安感やお買い得感が欲しいのは事実だ。その当たりはボルボ・カー・ジャパンも心得ているようで、S60は今後の買い取りも積極的に行い、リセールバリューを保つ努力をするという。また5年間保証プログラムの導入や、ローン制度の見直しを行って、購入意欲を高めるという。
クルマ好きの視点から見ると、ふたつの考え方に別れると思う。ひとつはこのDセグメントにおいて、「高級車といえばやはりフロントエンジン・リアドライブであるべき」という考え方だ。これは何も、ドリフトをしようということではない。操舵と駆動輪を分けることによって醸しだされる、自然なハンドリング。そして後から押し出される優雅な乗り味をセダンに求めるということである。またBMW 3シリーズなどは、やはり走らせた際の味わいに、その切れ味と奥深さが同居する、うっとりするようなハンドリングを持っている。
しかしこうした味わいを、誰もが感じているわけではないと思う。それは料理で言えば“出汁”のようなものであり、いまやFWDでも包容力のある走りができることは、まさにこのS60が証明している。それよりも外観やインテリアの独特さや、優しい乗り味に価値を置くなら、ボルボは十分御三家のライバルたり得る。何よりボルボはACCを中心とした16の先進安全機能がオプションではなく標準装備である。
決してメインストリームではなくても、シンプルで良いものが欲しい。声は大きくないけれど、スピリッツのあるものが欲しい。人と違う個性を選びたい。私はこうした考え方が極めてスウェーデン的だと思うのだが、もはやエステートが“ベタな選択”である今、セダンであるS60を選ぶことで、そうした個性をたっぷりと味わうことができると感じた。年齢に限らず、若い感性を持つ人々にとって、このS60は面白い選択になると思う。
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