タカタ批判でエアバッグ問題を終わらせるな。自動運転時代に問われる安全哲学
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫
2014年頃からアメリカでタカタ製エアバッグによる死亡事故が社会問題化しはじめたとき、私は真っ先にオールジャパンで取り組むべきだと指摘した。異常爆発の決定的な原因を特定できないまま、2015年11月にアメリカ政府は硝酸アンモニウムの製造を禁止することを決定したが、硝酸アンモニウムを使ったエアバッグを全数リコールして、二次被害を出さないようにすることが最優先だったはずだ。技術者の立場では事故原因を突き止めることが優先してしまうが、まずはエアバッグを電気的にカットするなどの措置を講じるべきだったと悔やまれる。
部品メーカーと自動車メーカーの関係を考えると、タカタの一存でリコールすることはできない。ユーザーはクルマを買ったのでありタカタのエアバッグを買ったわけではないから、自動車メーカーにもっと責任ある態度をとって欲しいと感じただろう。この点に関しては最終的な製品=クルマの安全性に責任がある自動車メーカーの対応に甘さはなかったのか、気になるところだ。
タカタ製エアバッグでリコールを届けたGMの開発トップであるマーク・ルース上級副社長は当時、「最も迅速で正確な行動ができるようにリコールの実施方法を変更する」とメディアに語っていた。バッドニュースファーストの論理に従って判断を早め、事故が拡大しないようにすることこそ重要なのだ。「われわれは今、過渡期にある」という言葉が印象的だった。これから自動運転カーが普及する時代がやってくるが、「ユーザーの安全性ファースト」をどこまで徹底できるか、タカタ問題から学ぶべきことは少なくない。
最後にタカタが破綻したことで、この問題が終わったわけではない。多くの自動車メーカーがタカタ製エアバッグのリコールを届け出たが、まだ修理に応じていない多くのクルマが世界中で走っている。セカンド、サードオーナーが異常爆発する危険性のあるエアバッグの前でハンドルを握っているのだ。関係者の仕事はまだ続いている。心当たりのある読者は、自分のクルマが該当するかどうかチェックしてほしい。
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