世界が注目する革命的エンジン「スカイアクティブX」の凄みはどこにある?
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:マツダ
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:マツダ
試乗終了後に手渡されたのが上のデータ画像(AT仕様)だ。燃費や最高速度、使用回転数、エンジン負荷などが記されている。アウトバーンでは170km/hオーバーまで出したし、フルスロットルでの加速も試したが、燃費は市街地で7.3L/100km(13.7km/L)、トータルで7.5L/100km(13.3km/L)という優秀な値をマーク。同条件でスカイアクティブG 2.0を走らせた際の燃費は8.7L/100km(11.5km/L)だから、15~20%の燃費改善を果たしていることになる。さらに開発が進めば、20~30%まで改善幅は上がってくるかもしれない。わずか1%の燃費改善に向け気の遠くなるような努力を積み重ねているのがエンジン開発現場の実態であることを考えると、スカイアクティブXがいかに革新的かがおわかりいただけるだろう。
とはいえ僕は、燃費だけではなく、気持ちのいい走りと低燃費の両立こそがこのエンジンの最大のメリットなのだと強調しておきたい。効率の高い領域が広いため、極端なエコ運転をせずに優秀な燃費が出るのも、そんな特性に華を添える。
もう一点、このデータで注目なのが右下の棒グラフだ。青い部分が圧縮着火、グレーの部分が火花着火だが、全走行のうちおよそ95%を圧縮着火が占めている。他社も圧縮着火を研究しているが、その領域が狭く、かつ切り替えがうまくいかないのが実用化を阻んでいる最大の要因。その点、SPCCIは幅広い範囲で効率の高い圧縮着火を実現しつつ、切り換えも体感できないほどスムースなものだった。HCCIを研究しているエンジニアがこのグラフを見たら、まるで手品を見せられているような気分になるに違いない。
なぜそんなことができたのか? この点こそがHCCIとSPCCIの違いであり、また技術的なブレークスルーだった。HCCIは、空気を圧縮すると熱が発生するという原理を利用し、スパークプラグを使わずに全体を一気に「圧縮着火」させる。ガソリンエンジンのようにスパークプラグでの部分点火がきっかけではないから、およそ1:30という非常に薄い混合気(超リーンバーン)でも全体がちゃんと燃え、燃費が向上する。逆に言うと、1:30という極めて薄い混合気でもきちんと完全燃焼させるために存在する技術がHCCIである。ただしこれはあくまで原理。実用化するとなると、圧縮着火のタイミングを正確にコントロールすることが必要になってくる。同じ圧縮着火でも、ディーゼルは燃料噴射=圧縮着火開始だからコントロールしやすいが、HCCIはエンジンの温度や気温や気圧や燃料噴射量によって圧縮着火のタイミングがコロコロ変わる。それをコントロールするのは至難の業なのだ。
そこでマツダが着目したのがスパークプラグだった。薄い混合気を圧縮着火直前まで圧縮した状態でスパークプラグを点火(この際、点火しやすい環境にするため圧縮行程でスパークプラグ周辺部のみに燃料をわずかに追加噴射する)。スパークプラグ周りで生じた火炎球をもうひとつの「仮想ピストン」として利用することでシリンダー内の圧力を一気に増し、それをきっかけに全体で圧縮着火を起こす。こうすることで圧縮着火タイミングを完全な制御下に置いたというわけだ。
また、リーンバーンだと三元触媒が使えないため問題になるNOx(窒素酸化物)についても、1:30を超える薄い空燃比や大量EGRによって燃焼温度が高くならないため、発生量そのものを小さく抑えることができる。基本的には事前に燃料と空気を混ぜた予混合だから、ディーゼルのようにPM(粒子状物質)が出ることもない。こうして出来上がったのが、燃費がよくてトルクがあってレスポンスに優れ高回転まで気持ちよく回り排ガスもクリーンという、ガソリンとディーゼルのいいとこ取りをしたスカイアクティブXである。
ログインしてコメントを書く
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
現行型が今も販売好調な「フォレスター」だが、日本のユーザーが選ぶべきは…やはり新型である理由
800万円は高いか安いか!? レトロ風で最新の安全装備充実!ミツオカ創業55周年記念車「M55」発表
【3分でわかるモデル解説】なんとなくMINIがほしいけど、どれを買えばいいか迷ってしまう初心者へ
【クセ強だけど懐かしい】光岡、55周年記念車「M55ゼロ・エディション」発売。100台限定…ベースはあの車
「売れる車がない」なんて言わせない! 北米日産の大型SUV「アルマダ PRO-4X」が魅力的…価格も発表
新型「ティグアン」正式発売で注目集まる豪華装備とお値打ち度。世代遅れの兄弟「Q3」よりお買い得
メルセデスAMG「A45」に“最後の限定車”登場。2.0Lターボは421馬力も…価格は1000万円超え!!
ホンダの高級ブランドが新型SUV「ADX」を発表。クセ強め“アメリカン顔”の衝撃や背景とは?
北米レクサスが販売する3列SUV「TX」は何モノ!? “LBX顔”で実質650万円~…25年モデルに進化
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!