▲1985年9月、流れるような曲線をもつ低全高スタイルを採用し、ゆとりある居住スペースを確保した斬新なスタイルの軽商用車『トゥデイ』が発売された
1985年9月にホンダトゥデイが発表された。これは実に11年ぶりのホンダの軽自動車で、センセーショナルに取り上げられたものだった。
ホンダ独自の「M・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum:人間-最大限、機械-最小限)」に基づいて開発されたという。エンジンの置き方、タイヤの位置、サスペンションのあり方など新しい手法で追求したパッケージングとなっている。
エンジンはほぼ水平横置きにして、エンジンの下にデフを配置していた。これによりエンジンルームはコンパクトに仕上げることができ、独特な勾配のついたショートノーズデザインを可能にした。
タイヤは可能な限り4隅に配置して、大きな居住空間と低く流れるロングルーフを実現させた。ゆるやかにカーブしたこのクラス最大のサイズをもつフロントウインドウを採用し、新機構のダブルリンク式1本ワイパーが奢られていた。
当時、軽自動車は全高1400mmオーバーとすることで広さの演出をしていたものだが、トゥデイはあえて1315mmと低くしていた。全高は低かったもののフロント1225mm、リア1230mmと当時の軽自動車としてはワイドトレッドで、ホイールベースは2330mmであった。
ちなみにこのホイールベース、同時期の初代CR-Xよりも長く、3代目シビック(3ドア)よりも若干短い、というレベルだった。これにより室内の広さを確保しながら低重心を実現させ、走りの良さも際立っていた。
なお、サスペンションは最大限の居住スペースを確保するためにシンプルな構造で、コンパクトなストラット式をフロントに、トーションビーム式をリアに採用していた。
1990年にマイナーチェンジし全長は100mm延長、フロントマスクの丸目ヘッドランプが横長のものになった。1993年にはフルモデルチェンジし、2代目へとバトンタッチするも商用トゥデイは1998年まで継続販売された。
昔はたくさんのトゥデイが街中をキビキビと走り回っていたが、今となっては丸目の前期型もマイナーチェンジ後の後期型もとにかく流通台数が少ない。
とてもかわいらしく、M・M思想というホンダの歴史を感じられるネオクラシックカーとして、今乗ってみるのも面白いだろう。
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text/古賀貴司(自動車王国)
photo/ホンダ